私は現在、ダブルチェッカーとして関与しているものを含めて、
- 上場企業:1社
- 非公開の大会社:1社
- 非公開・非大会社:4社
の株主総会、取締役会、経営会議といった重要会議の議事録を作成しています。複雑な議案があるときは、さらに2〜3社相談が入ります。
上場企業には信頼できるお手本が結構あるし、議案が複雑になれば(たいていお金が絡むので)金融機関がサポートしてくれますが、そうでない会社は、お手本がなくて困るときがあります。
上場企業の議事録類のお手本
社会人になって以来、ずっと議事録をつくる仕事をしてきました。若い頃によく参照していたのは、このあたりです(当然、前の版ですけどね…)。
MHMの『会社議事録の作り方』は今も座右の書で、「どんな感じで書こうかな」と思うときは、とりあえず見てみます。
株主総会関連の書類は各部・証券代行・プロネクサスにお任せで、最近はほとんど見ていませんが、チェックするときは、次の書籍やサイトを参考にしながら各書類を作成・確認します。順序は参照する順=原則、信頼度の高さです。
- 全株懇モデル
- 日本監査役協会の監査報告のひな型
- プロネクサスがくれる株主総会招集通知作成の手引き
- 証券代行がくれる資料
- 他社の招集通知
- 資料版商事法務(見たいところを探すのが面倒なので後回しです)
非公開会社の議事録類のお手本
上場企業の場合は、(無料で)参照できる資料が多いのですが、非公開会社はなかなかなくて、上場企業のものをベースに適宜アレンジしていることが多いと思います。私も基本はそうですが、何か参照するとすれば、次のようなものです。
- 日本監査役協会の監査報告のひな型(非公開会社用のサンプルがあります)
- 法務局の商業登記申請の添付書類サンプル
書籍のほうは、非公開会社向けの議事録サンプル集でこれというものを見つけられていませんが、その他の書式集だと以下の2冊は一応備えています。
若いメンバーは、コーポレートの仕事をするときはよく見ているようです。
上場企業のサンプルが使えないケース
そもそも、どんな場合に上場企業のサンプルが使えず困るのか。よく遭遇する例を2つ。
監査範囲が会計監査に限定されている場合の株主総会議事録
事実上は親会社の一部門のような会社の場合、機関や役員の責任をできるだけ軽くするため(あるいは会社法施行前の小会社のまま)、監査役の監査範囲を会計に限定することがあります。
そういう会社は、取締役も「名ばかり」の人が混じっていることが多いので、だったら取締役会を廃止して、取締役だけの会社にすればいいのでは…と思うのですが、上の人たちにその頭はないらしい。
通常の監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案等を調査し、法令・定款違反や著しく不当な事項があるときは株主総会に報告しなければなりません(会社法384条)。逆にいえば、問題がなければ報告は不要です。
他方、監査範囲が限定された監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議案等を調査し、その結果を株主総会に報告しなければなりません(会社法389条3項)。調査対象が異なりますし、問題の有無にかかわらず報告が必要です。
このような両者の違いを認識していない人も社内には多く、監査範囲が限定されているのに監査報告の記載が議事録になかったり、会計に関するものに限らず議案全体について「問題ない」と報告している事例も見られます。
かといって、適切なサンプルも見つけられていません。みなさんどうしているんでしょうか。。
親会社の制度の適用を受ける場合の取締役会議事録
たとえば社内規程や、最近だと役員報酬制度などで親会社のものを適用(流用)することがあります。社内規程くらいだとまだいいのですが、役員報酬の場合は間違って決議してしまうと大変です。かといって、親会社のものをそのまま引き写すこともできません。
信託を利用したものやRS、RSUなど最近の複雑な非金銭報酬の導入にあたっては、信託銀行や証券会社が議案作成等で色々と協力してくれますが、子会社へのサポートはおまけのよう。一応、「どうぞ」と提供してくれるけど、ちゃんと見てくれていないな…と思うことがよくあります(たとえば、相当性の説明が漏れていたり、子会社のほうが先に開催するのに親会社株主総会の承認を条件としていなかったり)。
株式譲渡関連書類や増資関連書類も
議事録ではありませんが、非公開会社だと株式譲渡や増資も自社で行うので、譲渡承認請求書や名義書換請求書、申込証や割当通知といった書面も作成が必要です。
登記に関するものであれば、司法書士さんの力を借りることもできますが、そうでないものを確認させたり作らせたりすることはできませんし、かといって弁護士等に頼むほどでもありません(頼む企業もたくさんありましたが)。
当社では、上記でご紹介した書式集を参考にしながら作成していますが、もっと非公開会社に特化した書籍があってもよさそうな…
非公開会社に特化した良書があればいいのに
法律事務所に勤務していたときは、「立派な親会社を持つ非公開会社」でよくある設立、増資、株式譲渡、定時株主総会といった一連の書類について、コーポレートの弁護士やパラリーガルがフォーマットを作成し、全員で利用していました。
上場企業で、日本国内にグループ会社を持っていない会社なんてほとんどないでしょうから、非公開会社に特化し、そういうフォーマットを解説付きで出版すれば、ある程度は売れるんじゃないでしょうか。少なくとも、私は買います。