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大阪で働く法務パーソンのはなし

広告表示チェックはどこまで?

ビジネス法務2022年6月号では、「広告ガバナンス強化に対応する 業界別 広告表示規制の勘所」という特集が組まれています。

広告表示チェックで見るべき法令

ビジネス法務の特集が「業界別」と銘打っているように、表示規制には業界独自のルール(自主規制含む)があって、所属先で抵触の検討をするのは以下の法令です。

ビジネス法務の特集は、広告で謳われる内容の真偽にスポットが当たっていましたが、実務上は、知財の権利侵害の有無も確認することが一般的だと思います。

最近は社内外で健康志向が高まっていて、健康増進法や薬機法上の観点からの指摘、特定の栄養成分や特色ある原材料を訴求も増えていて、食品表示基準の確認も法務でするようになってきています。ひとことで言って、手間がかかる。

どこまで法務で見るべき?

ビジネス法務の特集では特に触れられていませんでしたが、あらゆる表示の「どこまで法務がチェックするのか問題」がどこの企業でもあるのではないでしょうか。

消費財の場合、上市にあたっては

  • 商品のパッケージデザイン
  • カートン
  • プレスリリース
  • テレビ・ラジオ・動画などのCM
  • POPやカタログ
  • 消費者向け想定Q&A
  • バイヤー向け資料

といったものがつくられます。「すべて法務がチェックする」という企業もあるかもしれませんが、消費財だと年に2回新商品の季節があって数十のSKUが上市されます。なので、すべてチェックすることは現実的でなく、どこかで線引きしている企業が普通のはずです。

では当社はどうしているかというと、必ず法務で確認するのは、

  • 商品のパッケージデザイン
  • カートン
  • 消費者向け想定Q&A

の3点で、それ以外は相談があった場合のみ検討しています。同業他社や消費財を扱っている企業の中では、関与度がだいぶ低いほうに違いありません。でも、たった3点をチェックするだけでも1SKUあたり4〜5人時はかかるので、小規模法務では負担なのです。。

一応言い訳をすると、CMは重要会議で絵コンテが示されるので、気になれば指摘できるし、放映にあたっては各局の考査があるので間違いは起きないだろうと思っています。それに、消費者向けクリエイティブはすべて消費者担当部門のスクリーニングがあります。万一不適切なら、すぐに撤去・撤回すればいいし…
あとは、迷ったら社員が相談してくれると信じています。

アウトにすべきか悩ましいことも

法務パーソンは論理的思考力が鍛えられているので、広告(表示)にも色々とつまずいてしまい、どこまで指摘・修正を求めるかが悩ましいことがあります。広告は多少下駄を履いてもOKなのですが、さじ加減が難しい。

たとえば、想定Q&Aの記述に「●●市場は近年拡大しており」という内容があれば、「●●市場が近年拡大している」資料を提供してもらってその事実を確認すべきでしょうか。
私は、仮にその事実がなかったとしても、違法なレベルの優良・有利誤認を引き起こすことにはならないから、スルーしてもいいのでは…という気持ちになるのですが、メンバーたちは、「正しい情報を提供する」という自社の理念に忠実で、しっかり指摘していました。立派。

最終判断は誰がするのか

開発チームの人たちは、法務が難色を示せばすんなり受け入れてくれることが多いです。
とはいえ、意見が対立することもあります。その場合、どうあるべきでしょうか。

当社の現状だと、法務は確実に負けます。なぜなら、開発チームが商品化の最終権限を持っているから。
そこは、品質管理・品質保証部門が持つべきだと考えるのですが(実際、他のグループ会社はそうしている…)そうならないのはなんでだろう。