半年以上かけて検討してきた、改正公益通報者保護法施行に伴う内部通報制度の見直し対応がやっと終わりました!
やったこと
内部通報制度の見直しのTODOリストや規程の書きぶりなどは過去にも書いてきました。
これらの記事では漏れていたものがあるのですが、やったことをざっくり書くと以下のとおりです。
- 親会社規程の見直し
- グループ会社(法令上体制整備が必要な会社)の規程のドラフト
- マニュアル、使用フォーマットの修正
- 窓口周知資料の修正
- 取締役会付議(資料作成も)
- 監査役・社外窓口・グループ会社・内部監査部への説明
- 従事者の指定
- 人事との調整(退職者向け案内事項の追加依頼)
内部通報対応マニュアルの中身
ルールやマニュアルは少ないほうがいいですが、内部通報対応に関しては、ある程度のマニュアルが必要と感じています。
というのも、通報者に伝えるべきこと、タイミングといった留意すべきポイントやルール(フォーマット含む)が少なからずあり、規程に書いてしまうと変更の柔軟さにかけたり、見る必要のない人にまで見せてしまうから。
今回、内部通報対応業務担当者向けのマニュアルも大幅に見直し、以下の目次で再構成しました。これらの項目を、原則としてそれぞれA4で1枚に収まるようにしています。
- 基本の対応フロー
- 通報受付
- 部内協議
- 通報者への連絡(受付)
- 通報者へのヒアリング
- 調査
- 対処
- 通報者への連絡(調査結果等)
- 関係者への共有
- その後の状況確認
- 記録の保管・閲覧
- 運用状況の概要の開示
- 利益相反排除・独立性の確保
- FAQ
ここに、周知用のリーフレット原本、受付カード(兼報告書)や従事者指定書のフォーマットなども盛り込んで、「これさえ見れば窓口担当ができる」というクオリティに高めたつもり。
参照する人が限られますが、私にはとても価値があります(売れるかな…)。
参考書籍が出た
内部通報制度の見直しにあたっては、消費者庁の資料を中心的に確認し、あとは有料/無料のセミナーをいくつか受けたり雑誌記事を読んだりして情報収集してきました。
本は、探す時間と読む時間を確保できず、5月に入って出たこちらのみ。
しかし、5月に入って読んでいては遅い…監査役協会の見解も遅かったけど。。*1
本書を踏まえた変更はなかったので一安心。仮に必要があっても対応できなかったでしょうが。
そして、こちらも読むべきだったろうと反省…
CGコードの「コンプライ」は見直される?
CGコードの原則2-5・補充原則2-5①は次のようになっています。
この改正時のパブコメ結果では、東証が次の考え方を示しています。
原則2-5の「内部通報に係る適切な体制整備」に当たっては、令和2年の公益通報者保護法の改正が施行されれば、当該改正内容も踏まえてご対応いただくことが考えられます。
法が求める体制を整備できていなければ、「適切な体制整備」がされているとはいえず、何を当たり前のことを…と思いますが、改正対応は結構大変だったので、施行日時点で法改正にしっかり対応できる企業は多数派ではない気がします。
当社グループだって、上場企業本体は施行日までに対応するけど子会社の規程整備は6月に入ってしまうし。
補充原則が「経営陣から独立した窓口」を求めるのと同じように?指針でも「組織の長その他幹部」が関係する事実については独立性を確保することが求められています。しかし、その確保の方法として例示されているのは、社外取締役や監査機関にも報告を行ったり、窓口を外部に置いたりすることといった程度。
「社外窓口を置いているだけ(通報内容が結局は経営陣に届く)では『コンプライ』とは言えんぞ」というご指摘も多いのだから、指針の解説はもっと踏み込んだほうがよかったのでは…とやはり思ってしまいますが、従業員300人スレスレの企業にあれもこれも課すのは難しいですかね。
スタートラインにたっただけ
忙しい時期にコツコツやってきたことの区切りがつき、やれやれという気持ちで今はいっぱいですが、運用はこれからです。
それに、先送りした次のような課題も。
- 独立性の確保(責任者が人事の部門長でもある…)
- 定期的な評価・改善
- グローバル体制
私では力が及ばないので、「社外役員、しっかり頑張れ」と思いながら取締役会に説明するのでした。