参院選の公示日が事実上決まったようです。
このタイミングで、某社による国会議員後援会への酒類の無償提供が明るみになり、うちの社員たちの関心も高まっていそうなので、「会社でできること」を整理しました。
ひとことで言えば、「よくわからん」です。。
政党・政治資金団体以外への寄附はできない
意外にも、企業ができる寄附に関するルールはシンプルです。企業は、政党(支部含む)・政治資金団体以外に寄附をすることはできません(政治資金規正法21条1項)。そして、その上限額も資本金ベースで明確に定められています(同21条1項2号、2項)。
政党とは、以下のいずれかに当てはまる政治団体のことで(同3条2項)、企業が寄附するような「●●党」であれば概ね該当するはずです。
政治資金団体とは、政党のために資金援助することを目的として政党が指定した団体のことで(同5条1項2号)、各政党がひとつだけ指定することができます。
今、日本にどれくらいの政党・政治資金団体があるかは、総務省の以下のサイトで確認することができます。
冒頭のニュースは、企業から後援会への寄附、つまり政党・政治資金団体以外への寄附だから問題ではないか?ということですね。
寄附はお金に限らないが物品の価格って?
政治資金規正法上の「寄附」とは、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のもの」をいいます(政治資金規正法4条3項)。党費や会費が債務の履行(何かの対価)であるのかよくわかりませんが、とにかく、「寄附」にはお金だけではなく、物も労務も含まれます。
そして、寄附できる上限額が決まっているので、自社商品を提供する場合でも値段をつけなければいけません。その価値はどうやって算定すればよいのでしょうか。
結論としては、希望小売価格に換算しておくのが無難ということになると思います。
総務省が出している「政治資金規正法のあらまし」には、寄付の総額制限の考え方として、「金銭等以外の財産上の利益についても時価に見積もった金額により制限の対象となること…に注意が必要です」と記載されており(p.10)、「時価に見積もる」には解釈の余地があるので、より高い方で計算しておくのがよさそうです。
消費財だと、実勢価格とだいぶ差があるんですけどね…
選挙運動に関しては、飲食物を寄附してはいけない
会社がする政治活動への寄附に関するもうひとつの明確なルールは、「選挙運動に関して飲食物を提供してはいけない」ということです。公職選挙法139条は、以下のようになっています。
飲食物の提供の禁止)第百三十九条 何人も、選挙運動に関し…飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない。(略)
例外として、「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く」とあるので、飲み物やお菓子はこれに当たるからいいのでは?と思ってしまうのですが、明確な線引きはないようです。
「お茶はOKだけどコーヒーはダメ」とかいう解説をテレビで聞いたこともありますが、よくわからないので基本はNGとして、どうしても提供が必要な場合は提供先や選挙管理委員会に確認してもらうことにします。
パーティー券かどうかはわかるようになっている
寄附には総額の上限があるので、当社では総務で一元管理するのですが、同様にパーティー券の購入についても一元管理しています。同一のパーティー券は150万円超購入することができないためです(政治資金規正法22条の8第3項)。そんなに買うことはないけれど…
ところで、政治資金パーティーは、「●●議員政治資金パーティー」みたいなわかりやすいネーミングになっていないので、凡人には政治資金パーティーなのかどうか見分けがつかないはずです。
私はパーティー券の実物を見たことがないのですが、政治資金規正法では、パーティー券はそれとわかるように書面で告知することが求められ(同22条の8第2項)、「この催物は、政治資金規正法第八条の二に規定する政治資金パーティーです。」と。文言までばっちり決まっています(同施行規則39条)。
「中の人」も選挙管理委員会に聞いたりするらしい
- 寄附できるのは政党・政治資金団体のみ
- 一定の例外を除いて、選挙運動のために飲食物を提供してはならない
企業の政治活動に関する寄附のルールは、上記二つのシンプルなものですが、故に解釈の余地も存在します。
わからないことはわかる人に聞くのが一番なので、まずは提供先の窓口となる方に聞くことになりますが、実際のところ、秘書さんはじめ事務所スタッフの方も選挙管理委員会に確認したりするらしい。そして、実は、選挙管理委員会の見解も必ずしも統一的ではないらしい。どうしてそういうことが許されるのかしら。。
ますます足を踏み入れたくないな…と思ってしまうのですが、地方で仕事をするとそういうわけにもいかないのが苦しいところです。