当社では、景品規制に関する相談が結構あります。
「こういうキャンペーンをやりたいが、景品表示法上問題がないか」「こういう場合は景品の上限はいくらか」といった質問です。指導や措置命令に熱心な消費者庁にあっても、景品規制の処分が表沙汰になることはめったにないので、「そんな神経質にならなくても…」と思わず言ってしまいそうになります。なぜなら、頭を抱える質問が結構多いもので。。
景品規制の基本
景品類の提供方法には以下の4種類がありますが、共同懸賞はありませんし、オープン懸賞には景品表示法の景品規制がかからないので、一般企業で検討するのは一般懸賞と総付景品です。
- 一般懸賞(「クローズドキャンペーン」などともいう)
- 総付景品(「ベタ付け」などともいう)
- 共同懸賞
- オープン懸賞
一般懸賞とは、くじ等の偶然性や特定行為の優劣等による景品類の提供(=懸賞)のうち、共同懸賞(商店街で行われるものなど)以外のものをいい、
- 景品類の限度額は、取引価額の20倍(最高10万円)
- 総額の限度は、懸賞に係る売上予定総額の2%
という制限があります。
総付景品は懸賞によらずに提供される景品類のことで、「必ずもらえる」「先着●名」といったものが含まれ、
- 景品類の限度額は、取引価額の2/10(最低200円)
- 総額の限度は、なし
という制限になっています。
消費者向けビジネスの企業では、法務でなくてもこの規制を知っている人がかなり多いので、法務に回ってくるのはこれらでは片付かない問題です。
複数の企画が重複する場合
法務に相談が舞い込むのは、たいてい複数の企画が並走するときです。
一般懸賞と総付景品
まずは、一般懸賞と総付景品の組み合わせ。
同じ時期に同じ対象商品で、
- 購入者●名に抽選で●をプレゼント(一般懸賞)
- 対象商品を買うともれなく●がもらえる(総付景品)
というキャンペーンを実施する場合、それぞれの景品類の限度額はいくらとすべきか。
この問題は簡単で、それぞれ別の企画と取り扱ってよく、一般懸賞の限度と総付景品の限度を目一杯利用することができます。
総付景品と総付景品
同じ対象商品で
- もれなく景品Aがもらえる
- もれなく景品Bがもらえる
という取組みをする場合は、景品Aと景品Bの和が限度額(取引価額の2/10)に収まるようにすればいいのですが、実際には次のような取組みが行われたりします。
- 商品Xを買えばもれなく景品Aがもらえる
- 当社商品のどれかを買えばもれなく景品Bがもらえる
この場合も景品Aと景品Bの和が限度額に収まるようにすべきなのか、たまたま商品Xが重なることがあるだけなので、別の企画と取り扱ってよいのか。
商品Xを買えば両方の景品がもらえるのだから、両方合わせて限度額に収まるようにすべきだという考えも取り得るとは思いますが、当社では、2つの企画がどれくらい重複するかというものさしで判断しています。
当社商品のうち商品Xの販売数量が1%にすぎないといった場合は、別企画でよいのでは?という考えです。この点について、消費者庁は直接的な関係を出していません。
一般懸賞と一般懸賞
続いて一般懸賞と一般懸賞。これはバリエーションもあってさらに難しいです。
まず、次のパターン。
- 商品Xを購入すると抽選で景品Aが当たる
- 商品Xを購入し、景品Aの抽選に外れた場合に、抽選で景品Bが当たる
これは消費者庁が見解をだしてくれています。
重複当選しないのであれば、景品Aと景品Bの最高額は、それぞれ取引価額の20倍まで設定でき、ただし景品類の総額は商品Xの売上予定総額の2%になります。これは違和感ありません。
続いて、もっと難しいパターン。
- 商品Xを購入すると抽選で景品Aが当たる
- 当社商品を購入すると抽選で景品Bが当たる
結論、総付景品のときと同様、2つの企画の重複度合いで考えることでいいのではと思います。書籍の中には、このパターンは合算して考えるべきと説明するものもあるのですが、消費者庁への照会や弁護士との相談を繰り返してこの結論に到達しました。「重複度合い」はどうやって判断するのか?という難しい問題は残るのですが。。
一番ラッキーな人で考えるべきか
以前は、景品規制は「一番ラッキーな人」で考えるべきだと信じていました。「同一の取引」は、消費者の目線で考えるべきではないかと。
そういうお考えの人もいっぱいいらっしゃると思います。
しかし、全社で実施するキャンペーンもあれば、一部地域・チャネルで実施されるキャンペーンもあります。「一番ラッキーな人」で考えていたらやりたいことができないよ!という企画部門からの悲鳴を受けて、以上のように考えを改めました。
これを法創造といいます?