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大阪で働く法務パーソンのはなし

有償支給品がボツに

これまでよく起きなかったと思うのですが、第7波でついに「製造委託先のライン停止」が発生し、発注していた製造がキャンセルになりました。

しかし、うちからの有償支給品はすでに納入済み。「これ、請求してもいい?」と聞かれました。

製造委託と有償支給品の売買

結論、製造委託と有償支給品の売買は、別の独立した取引なので、製造がキャンセルになったからといって、契約で別段の定めをしていない限りは有償支給品の売買までなかったことにはならないと考えます。
お気の毒ではあるけれど、発注者である当社に落ち度はないし、にもかかわらず超繁忙期にラインが飛んでこちらも大変なのです。。

相手が下請事業者であっても「請求可能」の結論は同じはず。さすがに、「不当な経済上の利益の提供要請」をしているなんていわないでしょう。

製造委託が下請取引だった場合に早期決済の禁止を考慮すべきか

では、支給品の売買代金はいつ支払ってもらえばいいのでしょう?
特に相手が下請事業者の場合、「有償支給原材料等の対価の早期決済」の禁止が頭をよぎります。

直感的に「いやいや、発注が飛んでいるのだから『早期』決済なんてないだろう」と思うのですが、「コロナが原因だったら何か特別な配慮がいるのかしら?」とよくわからない不安に苛まれ、2020年〜2021年にかけて法律事務所からご恵贈いただいた書籍やニューズレターを漁ってみるも、特に参考になりそうな記載は見当たらず…

そこで、顧問弁護士にご相談したところ、「基礎となる下請取引はないから、早期決済の禁止を考えなくてOK。そのほかも特に気にする必要なく請求してよい」と助言いただき、やれやれ一安心。

債務の履行・弁済の提供は必要

今回の支給品は、使用可能期間が短いこともあって、製造の直前に納入する段取りになっており、キャンセルになった時点では、納入できていない支給品も一部ありました。

売買契約はすでに成立しているとはいえ、納入していないなら、製造委託先は同時履行の抗弁ができてしまう…抗弁をさせないためには、債務の履行(弁済の提供)の用意があることを伝えないといけないですね。

払ってもらうか、相殺するか

  • 支給品の代金は請求可能
  • 支払時期も特別の配慮不要

ということなので、製造委託料と同じ締日で締め切って請求しようかと考えるわけですが、製造がキャンセルになってこちらが払うものがない中で、支給品代金を振り込んでもらうのもいかがなものか。
振込手数料がもったいないし、売上が立ってないのに支払わせるのも酷ということで、将来の製造委託料と相殺することにしました。
下請事業者に配慮した模範的親事業者として、下請調査で加点してほしいわ。

できるだけロスをなくすために

使用期限が短いものには短い理由があるので、むやみに延ばすこともできず、すぐに使える機会がなければロスになってしまいます。今回もロスになりそうだったので、支給品代金を回収できるか慎重に検討したのでした。

が、最終的には、期限内に転用できる行き先が無事に見つかり、支給品を廃棄することも、下請事業者に支給品代金を請求することもなくなったとのこと。
どこかでQC・QAのルールを曲げたんじゃないか?と、いぶかしる自分もいるのですが、ひとまずめでたしめでたし。