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大阪で働く法務パーソンのはなし

どうすれば法務に優秀な人材を集められるか

所属先では「人材の確保・育成」が経営上の重大リスクに置かれていて、「プロフェッショナル人材」を育成するようお達しが出ています*1

そんな中、法務人材の確保について他社のお話を聞いたり、自分で考えたりする機会があったので備忘メモ。
この類の話は、よその成功例が自社にハマる確率は低い(なんならよそでも本当に成功しているか怪しい)ので、自社が同じ方法をとれなくてもくよくよする必要はないと最近ようやく悟りました。

法務人材の特殊性?

どの部署でも「優秀な人材」を獲得するのは難しいですが、なかでも法務人材はハードルが高いと思います。

 

その最大の理由は、「必要性を理解してもらいにくい」から。どこも人手不足なので、法務にお鉢が回ってこない。
さらに、「法務は専門性が高いから、法学部出身か経験者でないとダメ」という思い込みを人事が持っていて、社内からの異動を渋られ、いつ応募があるかわからないキャリア採用者に一縷の望みを託す。

というのが私のこれまでの経験だったのですが、同じ経験を持つ法務の方は多いようです*2。さらに、一人前の法務はどこでも活躍できるので、今より高待遇のところにステップアップしていき人が減ることもあるという話も伺いました。
私個人の経験や周囲を見ている限りでは、「今よりいい待遇(給与)だから」というより、「今より自分を大事にしてくれそう」「今より仕事が面白そう」という理由で転職する人ばかりですが…

キャリア採用で優秀な人材を得るには

奇跡的に増員や補充が認められた場合、選択肢には①新卒採用、②社内異動(公募含む)、③キャリア採用があり、社内異動は渋られるし即戦力が欲しいので③キャリア採用が第一候補です。

でも、難しい。私がキャリア採用で行き詰まったのは、何より応募の少なさでした。応募がなければ何も始まらないのに。

どうすれば母数が増えるか。私の経験や他社のお話を聞く限り、次の3つくらいの策がありそうです。

  1. 給与と求めるキャリア・能力・スキルのバランスをとる
  2. 柔軟な働き方を許容する
  3. 自分で求人票を書く

1ができれば一番いいのですが、できないのが「メーカーあるある」。所属先もご多分にもれずで、特に働き盛りの世代をとろうとすると全然釣り合いません…

2は、都心かどうかにかかわらず、立地がネックになりえるのと*3、今はフルリモートやスーパーフレックス、副業のように柔軟・自由な働き方を認める企業が増えているので、そういうところと勝負するには重要なポイントです。

しかし、1も2も、法務の力だけでは変えられません。唯一?法務の力でできることが3です。これは私自身の失敗からの学びで、求人票を自分で書いていれば、自社をよりイメージいただけただろうし、ここに注意を払わない組織に飛び込むのは不安だったろうと反省しています。面接時や入社後のギャップも防げるので「求人票は法務で書くべし」というのが今の持論です。

人事からは「リファレンス採用もできるから、いい人がいたら紹介して」とも言われたのですが、法務パーソンは正直かつ慎重な人が多いので、馴染まないと思う…

社内から優秀な人材を得るには

キャリア採用は難しい。新卒採用も育成以前に入社・配属までのリードタイムが長すぎて許容できない。ならば社内で異動してもらうしかありません。しかし、上記のように「法務は専門職」のイメージがあって、人事も他部署も人を出すことに消極的なのは、多くの企業で共通の悩みのようです。

打開策として、ある会社の方から「法務で経験を積めばキャリアパスが広がる」というストーリーを見せるのがいいというお話を伺いました。法務の経験がキャリアの選択肢を広げるのは事実と思うけれど、「法学部卒でないと法務は無理」といった思い込みは解決できません。そして、この解決策は「運」だと思っています。
今の私のチームは半分以上が非法学部卒なのですが、最初のきっかけは、「営業で伸び悩んでいる社員がいるのだけど、勉強が好きらしいから預かってほしい」という人事の依頼でした。結果、既存メンバーを凌駕する活躍で「法学部卒かは関係ない」を見事に証明でき、以降の増員では学歴不問で公募をしてもらえることになりました。

さて、「社内から優秀な人材を得るには」の問いに対する私の今の答えは、次の2つです。

  • いつか巡ってくる「運」に備えて、社員をよく観察して一本釣りに備える
  • 法務の雰囲気を良好に保ち、仕事で少しでも期待を上回り、【あそこに行けば成長できそうだ】というイメージをつくる

今年公募をしたときは、宣伝の甲斐もあって複数の応募があったのですが、これはうちのメンバーの働きが大きいと思います。普段の仕事ぶり、誠実かつ朗らかな対応が「難しそうだけど成長できそうだから飛び込んでみよう」と思わせてくれたから。

結局、当たり前のことを愚直にやっていれば、いつかいいことがあると思っています。

法務で活躍できれば大概うまくやっていける(はず)

法務で経験を積んだ先のキャリアパスについて、私も人事に何案か提出しているのですが、結論からいって、「大体どこででも活躍できる」というのが私の持論です。もちろん、本人の適性はあり、数字が苦手な人が多い印象ではありますが。

かつて、トヨタの元社長である奥田さんが「私はどんな会社も経営できます。なぜならPDCAが回せるから」とおっしゃったという逸話があります。それにならうと、「法務は大体どこででも活躍できるはず。なぜなら、玉石混交の情報を集めて峻別し、適切・妥当な論理を組み立て納得感を持って説明できるから」と。

営業で伸び悩んでいたという件のメンバーも、今戻ったら違うと思います。
なので、「幹部候補生には、管理職になる直前あたりで法務をはじめとする管理部門に3年ほど修行させるべきだ」と人事に数年前から提案しているのですが、そんな意図で来てくれる人はまだいません…

*1:「人材の確保・育成」がリスクなのか経営課題なのか、「プロフェッショナル人材」とは何か、といった話も尽きませんが今回は横に置きます。

*2:人材の必要性理解はプレゼンスの問題だと思うので、外資や強い法務部には当てはまらない模様。

*3:私自身、通勤が億劫で京都の企業には応募しませんでした。