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大阪で働く法務パーソンのはなし

2023年に施行される法令


毎年、その年に施行される法令を確認するのがうちのチームの習わしです(ただし、自分たちに関係がありそうなもの限定)。

去年が重たかったからか、今年はそこまで負担を感じないのですが、不気味な改正も。

会社法関連

改正法の施行自体はすでに済んでいますが、今年、電子提供制度が始まります。トップバッターは3月総会の会社。

経済的にも環境的にも助かる電子提供制度ですが、上場企業の対応は活用する会社とそうでない会社(従来どおりの対応もする会社)で二分。改正前、「最小限なら圧着ハガキでもOKなレベルになる」と喧伝?する向きもありましたが、活用する会社でもさすがにまだそこまではいかなさそう。当社は従来より招集通知の内容をかなり減らすものの、最低限プラスαで準備予定です。

労働法関連

4月、労働基準法が改正され、中小企業でも月60時間超の割増賃金率が50%になります(厚生労働省リーフレット)。また、労働基準法施行規則の改正により、いわゆる「給与のデジタル払い」が可能になります(厚生労働省サイト)。

さらに、育児介護休業法の改正により、常時雇用する従業員数が1,000人を超える企業では、男性労働者の育児休業の取得状況を公表する義務が課されます(厚生労働省リーフレット)。それが影響しているのかわかりませんが、自社もパパ育休の取得率が高まっており、取得期間も長くなっています。

民法関連ー所有者不明土地対策

4月、民法が改正され、所有者不明土地の利用の円滑化が図られます。その具体的な施策は以下の4点。

  1. 財産管理制度の見直し
  2. 共有制度の見直し
  3. 相続制度の見直し
  4. 相隣関係規定の見直し

今回の改正は、自社にとって「いずれはお世話になることがあるかも」程度ですが、向こう3年で施行される住所変更登記の義務化が怖い…

また、相続土地国庫帰属法が制定され、一定の要件・手続を満たすことを条件に、相続した(遺贈を受けた)土地を国庫に帰属させる制度が創設されます。「ハードルが高そう」というのが正直な感想なのですが、どれくらい利用されるでしょうか。

法務省のサイトに概要の説明等が掲載されています。

消費者法関連

6月には、消費者法関連の改正が予定されています。施行日が確定しているのは、消費者契約法と消費者裁判手続特例法(消費者裁判手続特例法は一部未定のものも)。

消費者契約法の主な改正内容は以下のとおりです。詳しくは消費者庁サイトへ。

  1. 取消権の追加
  2. 解約料説明の努力義務新設
  3. サルベージ条項(免責範囲が不明確な条項)の無効化
  4. 契約解除に必要な情報の開示等、事業者の努力義務の拡充

このなかでは、サルベージ条項の無効化に関する警鐘(?)をよく見かけますが、以前からきちんとした書籍等をお手本にしてきた事業者は、手当不要なケースが多いのではないかと推測しています。ありがたや。
また、消費者裁判手続特例法の改正により、対象範囲が拡大されたり、和解の柔軟化が図られたりするそうです。

また、施行日未定ですが、改正特定商取引法も6月頃施行予定で、契約締結時などに書面で交付することが義務付けられている書面を、消費者の承諾を条件として電子化することが認められます。その承諾をどう取るのが適切かについては、検討会が報告書をまとめたものの、事業者としては「結局どうなるの?」という状態で越年でした。

電気通信事業法

6月頃、電気通信事業法が改正されます。今年、最大の難関はこれだと思う。巷では「cookie規制」とかいったりするみたいです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000820706.pdf

通信事業者でもなければ、大規模な検索サービスやSNSを提供していない「一般的な事業会社」でも気にしなければならないのは、利用者情報の外部送信規制の新設です。自社サイトにタグ埋め込んでますよね、きっと。

内容自体は、

  • 外部送信される利用者情報の内容
  • 送信先
  • 利用者情報の利用目的

を通知公表するか、個別同意とるか、オプトアウト対応するかしなさいというものです。

何が問題って、そもそも自社が規制対象なのかどうかがよくわからないのです。実は第3号事業者なのにその自覚がないし*1、そんなど素人が読みこなせるほど電気通信事業法は易しくないから…
適用除外に当たらないか調べてみるけど、「つべこべ言っている暇があれば、対応したまえ」と言われているような気がします。

うまく説明できないので、世古先生杉浦先生の記事をお読みください。。

消費税法インボイス制度の開始

10月からインボイス制度が始まります。インボイス制度自体は、法務部門にとってはあまりピンとこない話ですが、個人事業主など免税事業者と取引がある場合には、独禁法の観点から注意が必要で(公正取引委員会のサイト)、法務としてはこちらを注視する必要がありそうです。

「課税事業者にならないなら、その分料金下げて」というのは、めちゃくちゃな要請ではないような気もするのですが…

*1:SaaSやIoTを提供していたりすると第3号事業者なんですよね…