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プラットフォーマーに対する公正取引委員会の指針第1弾

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先週、デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)パブコメに付され、メディアでも取り上げられました。同時に、個人情報保護委員会この案に対する考え方を公表しています。

 プラットフォーマー予見可能性を向上させる指針

本指針は、巨大IT企業への規制第1弾と目されていますが、その目的は、以下のように説明されています。

 

デジタル・プラットフォーマーが,不公正な手段により個人情報等を取得又は利用することにより,消費者に不利益を与えるとともに,公正かつ自由な競争に悪影響を及ぼす場合には,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)上の問題が生じることになる。
このため,独占禁止法の運用における透明性,デジタル・プラットフォーマー予見可能性を向上させる観点から,個人情報等の取得又は利用においてどのような行為が,優越的地位の濫用として問題となるかについて整理した。 

ニュースでは、GAFAのような巨大IT企業を規制する指針というニュアンスで報道されているように感じますが、 「デジタル・プラットフォーマー」とは「オンライン・ショッピング・モール,アプリケーション・マーケット,検索サービ ス,コンテンツ(映像,動画,音楽,電子書籍等)配信サービス,ソーシャル・ネット ワーキング・サービス(SNS)などのデジタル・プラットフォームを提供する事業者」と定義されており、必ずしも巨大企業でなくても、本指針の適用がされる場面がありうる予感を与えます。

個人情報等=個人情報+それ以外全部

本指針では、プラットフォーマーが「個人情報等」を取得・利用する場面を取り上げているわけですが、ここでいう「個人情報等」とは、「個人情報及び個人情報以外の情報」と定義されており、ありとあらゆる情報の提供が対象で、個人情報保護法の範囲を軽く飛び越えている点に注意が必要です。

問題となる行為類型ーターゲティング広告

本指針では、優越的地位の濫用となる行為類型が具体的に挙げられています。その多くは、そもそも個人情報保護法違反を構成する類のもので、特段の違和感もないのですが、ひとつ異色を放つのがターゲティング広告への利用です。

本指針では、個人情報等の不当な利用の一例として、「利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報を利用すること」を挙げており、その想定例は以下のようなものです。

 

デジタル・プラットフォーマーE社が,利用目的を「商品の販売」と特 定し,当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報を,消費者の同意 を得ることなく「ターゲッティング広告」に利用した(注6)。
(注6)利用目的が「商品の販売」であるところ,新たに,ターゲッティング広告に個人情報を利用することについて,例えば,電子メールによって個々の消費者に連絡し,自社のウェブサイトにおいて,消費者から取得した個人情報を当該目的に利用することに同意する旨の確認欄へのチェックを得た上で利用する場合には,通常,問題とならない。ただし,消費者が,サービスを利用せざるを得ないことから,個人情報をターゲッティング広告に利用することにやむを得ず同意した場合には,当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合がある。 

ここで見過ごせないのは、ターゲティング広告に利用することについてあらかじめ同意を取っていれば、通常は問題とならないけれども、サービスを利用せざるを得ないからやむを得ず同意しているようなケースは、優越的地位の濫用になりうるというのです。

我が社でもアプリを運営し、顧客から一定の情報を得て、その情報を利用してプッシュ通知を出すことがあります。我が社の場合、「サービスを利用せざるを得ない」とまではいえないと思うので、そんなに心配しなくてもいいかもしれませんが、我が社の同意の取り方だと、「やむを得ず同意させている」という見方ができなくもなさそうです。なぜなら、一条一条について同意を取っているわけではなく、プライバシーポリシー全体に同意するか?同意しないならサービス提供はできない、という方針をとっているからです。

対岸の火事、というわけにもいかないのではないか?と俄然心配になってきました。