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大阪で働く法務パーソンのはなし

商標の早期審査とデザイン案

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商標出願では、一定の場合に「早期審査」を申請することができます。早期審査とは、審査待ちの行列に並ばず、ファストパスを使うようなイメージです。

早期審査を利用するとFA期間が約2か月に短縮

特許庁のパンフレットによりますと、現在、商標出願をしたあと、最初の結果が判明するまでの期間(FA期間)は平均約7か月であるのに対し、早期審査を利用すれば平均1.8か月に短縮されるそうです。出願件数の増加のためか、直近ではFA期間が長くなっているので、早期審査が利用できれば結果が早く判明して、大変助かります。

早期審査が利用できるケースは限られている

しかし、無条件で利用できるわけではなく、早期審査が利用できるのは、次のいずれかのケースです。

  1. 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願であること
  2. 出願人又はライセンシーが出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願であること
  3. 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願であること

上記のうち、よく利用するのは2か3で、何らかの事情で上市スケジュールが逼迫している場合に利用します。あとは裏技的に、どうしても早く結果が知りたいというとき(主に先行登録商標の存在が気になるとき)に利用することも。

早期審査では、デザイン案を提出することが一般的

早期審査を利用したいときには、「早期審査に関する事情説明書」なるものを提出することになっているのですが、「既に使用している」あるいは「使用の準備を相当程度進めている」ことの裏付け資料として、我が社では次のような書類を出しています(おそらくどこの会社さんも同じかと…)。

  1. 発売までのタイムスケジュール
  2. (正面)デザイン案
  3. 案件が外部を巻き込んで進んでいることを証明する書面(発注書など)

出願段階では、通常は商品のデザインができていないので、デザイン案についてはイメージを切り貼りしたようなレベルのものを提出しています。経験上、これが特段問題になったことはありません。

しかし、先日、弁理士さんから聞き捨てならない助言を受けました。

標準文字での早期審査の落とし穴?装飾はだめ

出願の段階では、最終デザインが確定していないことのほうが通常なので、出願商標は標準文字とすることがほとんどです。とはいえ、早期審査のためにはデザイン案が必要で、できあがったデザイン案では、その商標が若干デコレートされていたり、全体としてロゴのように見えることもあります。

ところが、ある弁理士さんによれば、「それでは使用形態が異なるとして拒絶理由通知がくる可能性がある」というのです。なぜなら、ガイドライン上、出願商標と使用予定商標が「同一」である必要があるから。

今までの私の経験では、多少の装飾では問題なかったのですが、直近では拒絶になった事例があったということで、最近の申請では、万全を期して、あえて装飾一切なしのゴシック体などでデザイン案を作成して提出しました。

デザイン案がラフなものでOK(そのとおり上市されなくてもよい)というルールで助かりましたが、なんだか腑に落ちないプラクティスです。

「使用」の解釈は緩いのだから、使用予定があるという段階では、そもそもデザイン案の提出はいらないのでは?と思うのですが…不使用取消の場面では、発注書で商品名として使われていれば「使用」と見るのですし、発注書や見積書で使われていれば、早期審査でも使用を認めていただきたいですね。