Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

中国の商標審査

f:id:itotanu:20190621230617j:plain

最近、中国に出願していた商標で拒絶査定を受け、地団駄を踏みたくなるような思いをしました。ほかにも、ブランド関連でいくつか判断に迷う事件があったので、まとめて記録しておこうと思います。

中国の商標審査は厳しい

先日も書きましたが、日本と比較すると中国の識別力や類否の判断はかなり厳しいと感じています。したがって、出願してもどのみち識別力なしで拒絶されそうなものは通常出願しないのですが、商標登録があると通関手続がスムースに進むケースがあるそうで、どうしても商標登録を取得したいと現地子会社がいうので、可能な限りの要素を盛り込んで出願したケースがありました。それが、識別力ではなく、先行登録商標に類似するという理由で拒絶査定になったのです。現地代理人や日本の弁理士にも相談して進めてきた案件でしたが、中国は本当に予測がつきません。

出願商標は、「ブランド名(登録済) ●●(商品の種類) (ありふれたイラスト)」という態様だったのですが、類似しているとされたのは、商品の種類の一部。日本語では完全に商品の種類なので分離観察はありえないのですが、中国では識別力ありとされたもようです。現地代理人に、「●●」は商品の種類だから、ここを分離観察するのはおかしいのでは?と確認すると、「仮に単語自体に識別力がないとしても、その部分が全体として目立つので分離観察されるのはやむを得ない。不服審判を請求しても覆る可能性は高くない」というつれない回答でした。そんなバカなー。

中国は広く、出願数も多いので、審査官の審査品質にもブレがあるといいますが、現地子会社に意見を聞いてみると、「日系の息のかかった代理人を使ったから審査が厳しかったに違いない。もう一度、純粋に現地の事務所からトライする」などという。そんなバカなー。

おたくのブランドのドメインが他社に取られようとしていますけどいいですか?

次にあった事件は、投資家向けの連絡窓口への「××という会社が、おたくのブランドを使ったドメインを複数登録しようとしています。承認するか確認してください。返事ください。」という怪しさ満点のメール。結論はスルーです。

一応、「××」という会社を調べると、きちんとウェブサイトを持っていて、それなりの会社のようにも見えましたが、自らを「official registrar」と名乗る方の素性は知れませんでした。

そもそも、ドメインはかなり簡単に取得できるものですし、不正な取得を完全に排除しようとすると、相当数のドメインを購入する必要があり、一般企業が対応するには限界があります。巨大IT企業でもない限り、対応しきれません。

なお、過去には直接的な売り込みもありましたが、こちらもスルーさせていただいています。

おたくの登録商標と類似する商標を輸出専用品に使用してもいいですか?

3つ目は、悩ましいお話です。

海外子会社が事業を行っているA国に所在する容器メーカーさんから連絡があり、「B国企業から、貴社のA国登録商標××に類似する●●という商標を付した製品(当社登録商標の指定商品)を製造するよう注文があったのだが、引き受けてもよいか?」というお申し出がありました。

我が社はB国ではビジネスを行っていないので、B国輸出用の製品であれば実害はなく、お申し出を断る理由はなく、最終的には快諾しようと考えていますが、法的にはやはり商標権侵害なのでしょうか?

この点、日本の法律で考えてみると、海外輸出専用商品であっても、日本国内で登録商標を指定商品に付す行為は、商標権の侵害に当たります。輸出専用なら、実害がないので、差止請求はできても賠償請求では損害不発生の抗弁が成り立つのでしょうか。