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大阪で働く法務パーソンのはなし

同業他社さんがやってきた

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先日、同業他社さんがわざわざ東京からご挨拶にお見えになり、商標の取扱いについて意見交換させていただきました。その会社さんは、業種の枠を越えて、様々な会社さんと商標に関する意見交換をなさっているといいます。すごい。

グループの商標をどう管理するか

その会社さんも我が社も、複数の事業領域を抱え、海外にも進出しているので、商標管理の効率化は、商標管理において大きな課題です。

我が社の場合、最終親会社であるHDが主力事業とコーポレートマーク関連の商標を保有し、グループ会社からライセンス料を取るというのが基本の方式ですが、M&Aでグループ化した企業の商標は、引き続きその会社に商標を持たせています。その理由は、いつまたカーブアウトするかわからないから。笑

お見えになった会社さんも、基本的には我が社と同じ方針とのことでした(国内グループ会社については集約されたいお考えでしたが)。この会社さんは、ある世界では業界トップの国内シェアを誇ってらっしゃるので、私たちもおかしな方針ではないということでよかったです。

何を大切にしている?

商標管理において、何を大切にしているか?特別大切な登録商標はあるか?

お話の中で、そんなご質問を受けました。我が社は、商標権の取得・維持について、特別明確な方針は持っていないし、取得・維持について、法務と企画で意見が分かれることもしょっちゅうです。つまり、私たちとしては、「とっても(権利・財産として)意味がないものは出願したくない」のに、企画部門は「安全に使うためには権利化したい」というわけです。

この点の問題意識も概ね同じでした。根本的な問題として、識別力が怪しいものも登録されるという日本の商標実務があるので、その会社さんはせっせと情報提供をしているということも教わりました。うちは専任も置いていないので、そこまでやりませんけれども。

コストを抑える

我が社は、商標については出願から期限管理までをすべて外注しています。

商標出願はわりと簡単なので、自社でされているところも結構あるのですが、年間の出願数が数十と多くないこと、担当者の異動が予想され、期限管理に誤りが生じうること、システム導入が面倒である(+一時的に多額のコストがかかる)ことなどから、外注する方がコスト安だろうという見方です。

お越しになった会社さんは、国内市場はシュリンクしていくから、国内の商標管理にかける費用はもう少し抑えていくつもりとおっしゃっていました。どうやって抑えるお考えなんですかね。

ちなみに、我が社は、知財協会や商標協会、業界の知財団体などには一切入っていなくて、「お見えにならないのはなぜですか?」と質問を受けたのですが、そのこたえは「予算的に厳しいから」です。正直、私たちが商標にかけられる時間は全体の10%もないので、そんなに熱心できないという事情があります。

(それでも、商標協会には入っては?といわれました。まったく別の方にも入会を勧められたことがあるので、よほどよい情報を提供してくださるのでしょうか…)

商標を売ったり、貸したりしてくれますか?

さて、ご挨拶にお越しになった目的は、我が社が持っている商標を使いたいときに協力してくれるか?ということの確認だったようです。

「それは、商標によります」という回答になりますが、識別力が怪しいものについては有償でライセンスすることは考えていません。なぜなら、そういった商標が無断で使われていたとして、商標権侵害を争うことはおそらくできませんから。不毛な喧嘩はしたくありません。

というようなお話をしていたら、商標や相手によって価格を変えたり、無償でライセンスすると、利益供与になるから会計税務的にNGにしているというお話をしてくださいました。確かにそうかも…と思い至り、やはり会計税務と法務は相入れないところがあるとため息がでました。「不行使特約なら無償でもOKでしょうけどね」という話もあったのですが、通常使用権の許諾は、法的にはただの不行使特約だから、ライセンス契約なら有償でなければならないが、不行使特約なら無償でもよい、というのは腹落ちしかねました。

新しい取組みも?

私たちの業界は消費財で、商品のSKUが多く(ライフサイクルは早い)、商標は陣取り合戦の様相を呈しています。ずっと使用を続ける商標はかなり少ないですが、いつかまた使うかも、あるいはこの商標はやたらに他人に使わせたくない、というずるい気持ちから、商標を長くキープしてしまう傾向にあります。これらが先行登録商標として、後の使用を脅かし、「こっちも出願しておこう」という悪循環を生んでいます。

業界によっては、TMP(トレードマークプール)を作り、あらかじめ合意した使い方であれば(広告での使用など)、プラスαの利用料を請求や権利行使をしないという取組みを模索されているところがあるそうです。

我が社は「安全に使えればそれでいい」というところがあるので、そういった取組みができたら、喜んで参加させていただきたいと思います。が、適した商標がプールされなければ意味がなく、成否は参加者にかかってきそうです。