Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

姓ー名か名ー姓か

f:id:itotanu:20190907002239j:plain

公文書で日本人の氏名をローマ字表記する場合、「姓ー名」の順とすることとなったというニュースが先週ありました。民間企業にも推奨するかは、今後文部科学省で検討されるとのことです。

今に始まった話ではない

日本人の氏名のローマ字表記を「姓ー名」順にするという話は今に始まったことではありません。

2000年、第22期国語審議会において「国際社会に対応する日本語の在り方」という答申があり、その中で「姓名のローマ字表記についての考え方」が示され、以下のとおり、「姓ー名」の順序で表記することが望ましいと盛り込まれました。

 

国語審議会としては、人類の持つ言語や文化の多様性を人類全体が意識し、生かしていくべきであるという立場から、そのような際に、一定の書式に従って書かれる名簿や書類などは別として、一般的には各々の人名固有の形式が生きる形で紹介・記述されることが望ましいと考える。

したがって、日本人の姓名については、ローマ字表記においても「姓ー名」の順(例えばYamada Haruo)とすることが望ましい。なお、従来の慣習に基づく誤解を防ぐために、姓をすべて大文字とする(YAMADA Haruo)、姓と名の間にコンマを打つ(Yamada,Haruo)などの方法で、「姓ー名」の構造を示すことも考えられよう。

今後、官公庁や報道機関等において、日本人の姓名をローマ字で表記する場合、並びに学校教育における英語等の指導においても、以上の趣旨が生かされることを希望する。

この答申を受け、当時の文化庁からは「外来語・外国語の取扱い及び姓名のローマ字表記について(依頼)」という通知が発出され、関係機関への協力の呼びかけも行われていました。約20年前から言われていたわけですね。

このたびは、文部科学大臣から提案があり、閣僚懇談会で了承されたとのことですが、なぜこのタイミングになったのでしょうか。(そして、当該閣僚は交代となりましたがどうなるんでしょうか…)

実際には「名ー姓」がほとんど

私も時々英文契約書をレビューするのですが、日本人の氏名は、20年前の依頼も虚しく?ほとんど「名ー姓」ではないかと思います。少なくとも、私がドラフトするときは、100%「名ー姓」で書きますし、苗字だとわかるように姓は大文字表記することも多いです。

というのも、世界にはいろんな国があり、東アジア以外にも「姓ー名」順序の国があるようで(ベトナムハンガリーなど)、また、世界の方々は日本人の名前が「姓ー名」で表記することをご存知の方が多く、こちらが気を遣って「Taro Yamada」といった署名をつけると、前の単語を取り上げて「Mr.Taro」みたいに書かれることもそれなりあるから。こちらから「苗字はこちら!」と宣言しておくほうがいいなと思うのです。見ただけでどちらが名前でどちらが苗字かわからないことも多いから(特に我が社が進出している国は欧米圏ではない!)、同じようにしてほしいという気持ちも込めて…(してもらえたことはないけれど…)

今度こそ浸透するか?

20年前に「姓ー名」で書きましょうと文化庁が言ったにもかかわらず、政府ですらそれを半分スルーしてきたこの慣習。果たして今回こそは浸透するのでしょうか。

個人的には、どのみち外国人はどちらが名前でどちらが苗字かわからないから、どっちでもいいじゃないかと思うのですが、、やはり「苗字が先」な日本の文化・風習を伝えたほうがよいでしょうか。