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大阪で働く法務パーソンのはなし

時代に追いついた「公用文作成の考え方」

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先週、文化審議会が「公用文作成の考え方」をとりまとめて文科大臣に建議したとのリリースがありました。

www.bunka.go.jp

70年ほど使われてきた「公用文作成の要領」に代わるそうです。「公用文作成の要領」を読んできた身には、「,」が「、」になるといった具体的な変化にとどまらず、「すごく踏み込んだ内容になった」と思えたのですが、客観的に読めば「やっと時代に追いついた」という感じでしょうか。

70年の歴史「公用文作成の要領」

現在の公用文作成のルールである「公用文作成の要領」は、昭和27年に周知されたので、もう70年近く経ちます。この間、常用漢字や仮名遣いの変更によって修正や読み替えがされたものの、基本的には姿を変えずに使われてきたようです。

鑑をあわせても8枚なので、読むのにそれほど苦労はなかった「公用文作成の要領」ですが、今回の改定?により、本体の分量はほぼ同じであるものの、解説を含めると約50枚へと大幅なボリュームアップ。枚数だけ見ると読む気を失せかねません。。

何が変わったのか?ー考え方とTPOに合った使い方の提示

新しい「公用文作成の考え方」では「基本的な考え方」が明示されました。公用文にも種類があり、種類や目的、さらには読み手(の持つ知識)に応じて工夫の余地があることが記載されています。さらに、「読み手に伝わる公用文作成の条件」として、以下の3つが示されています。

  1. 正確に書く
  2. 分かりやすく書く
  3. 気持ちに配慮して書く

誤解を恐れずに言えばここにもポリコレが…
配慮は必要ですし、時代に追いついただけですかね。

公用文なので正確さが優先されるのは当然ですが、最後に「厳密さを求めすぎない」とも書かれていて、70年の時を経て公用文が多様化したことがうかがいしれます。70年前は、こんなに積極的にパンフレットや法令の解説を作ることを想定してなかったでしょうね。

また、本体の最後には「伝わる公用文のために」という章が設けられ、

  • 文体の選択
  • 標題・見出しの付け方
  • 文の書き方
  • 文書の構成

についてもわりと細かく提案されています。「わかっちゃいるけど…」というものが多いですが、法務パーソンなら改めて目を通しておく価値はあります。
「同じ助詞を連続して使わない」「受身形をむやみに使わない」などは耳が痛いです。。

やはりマイルールを決めておく

「公用文作成の考え方」では表記の原則も示されていますが、常用漢字表「送り仮名の付け方」などを基礎にしており、真面目に参照して実践するには見るべきものが多くてかなり大変です。

しかし、法務パーソンのように堅めの文書作成を生業とするなら、何か基準を持っていないと、完成度だけでなく作業効率も落ちてしまいます。
そこで、自分なりのルールを決めておくことが重要だというのが私の考えで、同じ理由で自分だけでなくチームのルールにしておくのがいいと思っています*1守破離の「守」の型を用意しておくイメージですね。

公用文を書くわけではないので、文化庁が出してくれるこれらの文書に厳密に従う必要はありません。でも、マイルールの作成にはとても有益な資料なので、くどいですが一読をお勧めします。

*1:法律事務所で働いていたときは、DDレポートのように複数人でひとつの文書を作成することがよくあり、その場合には厳格な表記コードがありました。そういうところで育ったので、表記ルールをつくる慣習が染み付いているだけかもしれません。