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大阪で働く法務パーソンのはなし

グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針

先月末、グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針が策定されました。

www.meti.go.jp

トータル142頁と、大部すぎて全文を読む気持ちになれませんが(汗)、以前に公表された案から内容面で大きな変更はなさそうです。おそらく。

事実上の強制力もない実務指針

本指針は、我が国のコーポレートガバナンス改革が形式から実質のフェーズに移行する中、「グルーブガバナンスの実効性を確保するために一般的に有意義と考えられる具体的な行動(ベストプラクティス)や重要な視点を取りまとめている」とのことで、ガバナンスコードと整合性を保ちつつ、これを補完するものとして、一律的な取組みは要請されないものの、尊重が求められるようです。コードと違って、⚪︎(コンプライ)か×(エクスプレイン)か、というものではないので、どこまで真剣に取り組むインセンティブが働くかはちょっと読めませんね。我が社の経営陣はあまり関心を示さないかもしれません。エグゼクティブサマリーですら、老眼の入った経営陣には読む気と理解する気持ちを奪う字の大きさと多さです。

法務はちょっとだけ登場

本指針で「法務(部門)」が登場するのは、後半にさしかかった「4.6 実効的な内部統制システムの構築・運営の在り方」。3線ディフェンスの第2線を担う部門のひとつとして登場します(春に公表された本指針案と同じ)。法務はリスク管理を行う部門で、適切なリスクテイクをするためにも、法務部門の責任者は上級役員クラスのポストをあてがうべきだ、という結論。会社では力が重要ですから、そういってもらえるのはうれしい。

続いて、「4.7 監査役等や第2線・第3線における人材育成の在り方」でもほんの少し登場しますが、ここでは、法務などの第2線を担う人材を育成するために、経営トップの配慮が必要だ、という経営トップに聞き流されてしまいそうなお話が書いてあるのみでした(こちらも春に公表された本指針案と同じ)。

贅沢をいうと、第2線は互いに独立すべきでは?

自分が法務部門で、本指針内での扱いが小さいことを悔しく思っているだけなのかもしれませんが、本指針の提案には不満があります。第2線(管理部門)は、事業部門を支援しつつも牽制するという役割があると定義されているのですが、管理部門は、事業部門だけでなく、他の管理部門の支援と牽制も行うので、第2線は、互いに独立していることが望ましいということを示したほうがよかったのではないでしょうか。第2線の代表格である財務と法務では、同じ部門長の下にあることは考えにくいかもしれません。しかし、我が社の場合、人事や総務と同じボスの下に法務があり、人事や総務の問題を指摘しにくかったり、問題ときちんと向き合えなかったりすることがあるので、その点もズバッと指摘しておいてくれたらよかったのに…と残念です。

検討メンバーが名だたる学者さんや弁護士さん、それに大企業の方だったし、ガバナンス改革の道しるべをまさに必要としている企業の内実までは踏み込むことは難しかったのかもしれません。