Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

「SDGs経営ガイド」は誰のためのものか

先月末に経済産業省から「SDGs経営ガイド」なるものが公表されました。

www.meti.go.jp

私が週明けの月曜日に読もうとプリントして席に着くと、コーポレートコミュニケーションの部門長も同じものを熱心に読んでらして、やはり広報・IR的には関心の高いトピックのようです。

SDGs経営ガイド」とは

SDGsという言葉は、ビジネスパーソンの多くにとって耳慣れつつあると思います。最近では、中期経営計画などでSDGsのゴール(目標)のいくつかを取り入れる企業も増えています。

しかし、現在の日本企業のSDGsの取り入れ方は、もともとあるもの、今行なっていることにSDGsを当てはめている感じで、「SDGs経営ガイド」の「はじめに」でも以下のような指摘がありました。

 

SDGsに係る企業の取組については、「既存の取組にSDGsの各ゴールの ラベルを貼る にとどまっている」との評価が存在するのもまた事実である。

では、どうすればよいのか、ということで、国や大学や大企業の偉い方が集まって議論した成果がこのガイドだということです。

f:id:itotanu:20190603224838j:plain

出典:「『SDGs経営ガイド』について」

本ガイドのターゲットは、日本企業のみならず、世界中の企業や投資家だということで、すごい大風呂敷を広げはったなと驚いています。

SDGs経営ガイド」は誰のためのもの?

本ガイドが自認するとおり、アピール下手かどうかはさておき、日本企業でSDGsやそれに近い考えを持たないところは少ないと思われ、本ガイドが日本企業の誰に刺さるのか、ちょっとわかりにくいような気がします。

時流に乗るために、「SDGsの中からビジネスチャンスを見つけ出そう」といわれているように思うのですが、企業からすれば、いつの時代も、「SDG」とかいわれなくても、社会に新しい価値・まだ見ぬ価値を提供し、持続的成長を目指すために日夜励んでるぞ!と言い返したいのは、私だけでしょうか。

最近の経済産業省は、頑張りすぎでは…

自分のウォッチする分野が広がっただけかもしれませんが、最近の経済産業省はとても頑張っていて、次から次へと研究会やワーキンググループを作っては成果物を出し、日本企業や社会にさまざまな提言をしたり、法改正に向けて動いています。

企業法務の在り方、法務機能の強化や法務人材育成について、経済産業省が一生懸命考えてくれるなんて、夢にも思わなかったので、大変喜ばしくありがたいことなのですが、こうもポンポンと色々な取りまとめがあると、企業ではお腹いっぱいになってしまうのです。。

CGガイドラインではこういっている、SDGs経営ガイドではこうだ、法務機能の在り方研究会のレポートはどうだ、グループガバナンスもあるよ…では、経営者にはメリハリをつけにくいというか、「また経済産業省が何か言ってるね」となってしまう可能性があるのではとおそれています。

特に、各種取りまとめに参画されているのは、一般企業といっても日本の超一流企業の重役の方々ばかりなので、提言内容も庶民にはストレッチすぎるような印象があります(実際、「ベストプラクティスを紹介する」というものもあります。実現可能なものを知りたいのですが…)。

国がリードしていろんなチームで様々な視座・視野・視点で検討し、取りまとめて公表してくれるのはとてもありがたいけれど、「企業経営の在り方」みたいな感じで年に一度くらいの頻度でまとめて出してくれた方が、庶民企業としてはうれしいです。そんなにあれこれ見られません。。