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大阪で働く法務パーソンのはなし

パワハラ防止法成立への関心

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先月末、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が可決・成立し、来年春の施行が予定されています。

パワハラ防止法が成立 企業に防止義務 :日本経済新聞

セクハラ・マタハラ等については、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で一足先に事業者の講ずべき措置の指針が定められていますが、ついにパワハラも法律上で定義され、事業者の講ずべき措置が定められます。そして、これは、管理者には大変興味深いニュースのようです。

ハラスメントは避けて通れない

大事になるハラスメント事案はなかなか珍しいかもしれませんが、それでも通報窓口に寄せられる相談の多くは、ハラスメント系ではないでしょうか。

上級管理者はかなり気を遣っている

つい最近、かなり上級の管理者の方とお話したとき、「パワハラ防止法ってのができたんだよね」といわれ、改めてハラスメント問題への関心の高さを知りました。

先日も子会社社長が「こういうのもパワハラになるんだよな」などとおっしゃっていて、その理解や注意の深さに脱帽するばかりでした。どこで勉強されるのか存じ上げませんが、上級管理者になられると、パワハラを含めてハラスメントへの理解はかなりあり、自重されていることが伝わります。

実際、ほとんどの上級管理者はハラスメントで問題になることはありません。

教育が必要なのは、若手管理職?

しかし、会社にハラスメントがないわけではないのです。こんな仕事をしているので、「実は、こんなことがあるのです」とこっそり教えてくれる子たちがおりまして、それにはこんなことが含まれていました。

  • 業務時間外にLINEで叱られる
  • 業務時間外にLINEで「あの仕事やってくれた?」と聞かれる(急ぎでない仕事)
  • ボディタッチされる(肩を触るなど)
  • 二人で飲みに行こうと誘われる

こうやって書くと、「それはアウトでしょ」となるのですが、実際にあるようでして、しかも、その相手(ハラスメント加害者)は、私と同じような若手管理職だというのです。

私たちの世代は、まだまだ体罰も普通にあって、飲めないお酒は飲んで覚え、下は上のいうことに絶対服従という固定観念も健在な中、社会に出ましたが、それらに強烈な違和感がありました。「自分たちがされて嫌だったこと、正しくないと思うことはしない」と心に固く誓っている世代だと思っていたので、下の世代の就業環境を害していると知り、ショックでした。

「今度、管理職にはハラスメント研修をしてほしい」と非公式要請もありましたので、検討せねばと考えています。彼らと私たちとの間に「優越的な関係」があるといえるのか、私にはよくわかりませんけれども…

ハラスメントと内部通報は分けるべし?

内部通報制度も自己適合宣言制度が開始されたり、認証機関が定まったりと、俄かに脚光を浴びており、そこでは、「不正の萌芽をキャッチする(重大な)役割を担う内部通報と、(個々の小さな)ハラスメント相談は窓口を分けるべきだ」という意見がかなり広がっているように感じています。

なるほど、不正は会社の存続を揺るがしかねず、他方、ハラスメントは基本的には個人の問題であって会社の存続に与える影響は小さいでしょうし、本気の内部通報制度は、グローバル対応として、現地の弁護士事務所等にも窓口を設置したりしないといけませんから、ここにハラスメント相談を持ち込まれると面倒かもしれません。

でも、私は、窓口を分ける必要はないと考えますし、「窓口を分けよ」という主張は、ユーザーの視点を欠いているように思えてなりません。なぜ、追い詰められた社員や関係者に、「どこに相談するか」を考えさせなければならないのでしょうか。それに、ハラスメント相談となると人事部門が窓口となるのが通常でしょうから、真実追及より配転で解決などとなって、自部門内で処理し、根本的な対策が取られない可能性があるのではないでしょうか。