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大阪で働く法務パーソンのはなし

依頼件数を数えてどうする?

契約審査の数を数えるか、それを目標や評価項目にするか、という話題について。

私は、何の意味があるんや?と問うよりも、数えることで何か意味がないか(「情報」にならないか)、そのためのよりよい数え方がないかを探し続けたいと思っています。ただし、今は、数を目標や評価項目することには否定的。特に個人の目標としては。

いつ・誰から・どんな依頼が のデータがそこにあるので

所属先の場合、昔から受付台帳をつけていたので、

  • 依頼日
  • 依頼部署・担当者
  • 相手方
  • 契約書のタイトルや相談概要
  • 法務担当者

は、以前から手元にありました。今は、ワークフローにしているので、もっと色々なデータが取れます*1

数えよう!とわざわざ何かをしなくてもデータがそこにある。
そこで、このデータを分析すれば何か得られるものがあるのではないか?という発想から、所属先では定期的に集計しています。

なお、私は記録魔なので、受付台帳をつけないという選択肢はないです。

基本的に部門や個人の目標・評価項目にはしない

数えているなら、それを部門や個人の目標にして、達成度で評価するのか?というと、それはしていません。

白状すれば、「日常の仕事をちゃんとやっていること」を評価するために、件数を目標にしていた時期もあるのですが、依頼をコントロールできないし、どれを1件と数えるのか?という問題もあってやめました。

ただ、新卒新人は、個人目標を立てにくいという事情もあり、「⚫︎件以上依頼対応する」という目標を許容しています。入社後最初の数年は、達成度の評価をするとはいえ、給与や賞与には影響がないという古式ゆかしい日本企業の人事制度のなせる業かも。

データの活用法

目標にせず、評価にも使わないなら、「依頼件数」を数えてどうしているのか。所属先では、以下のような使い方をしています。

アピール材料にする

現職では、少し前まで人手不足に悩まされていました。そこで、CAGRを見せるかのごとく依頼件数の増加率を「この調子だと、とてもとても既存メンバーでは対応できません!」と人事や社長に訴える根拠にしてきました。
補強材料?として、大型のプロジェクトなどをあげて、「これだけの案件を処理しながら、プロジェクトにも呼ばれて、もうコップの水があふれてますよ」などと、多少盛って説明した結果、所属先では奏功しています。(一気に複数人増えてそれはそれで大変でしたが)

実際には、同じ1件でも高度なスキルが要求されるものや、法務が対応しなくてよいようなものが混在していますが、部外者への説明では割り切るべし。

ただ、アピール材料になるのは、依頼件数が増え続けていたり、頭数で割ったときの平均件数がインパクトのある数字だったりする時期に限られ、有意な変化がないとこの策は使えそうです。
実際、今のチーム陣容だと、アピールどころか人減らしていい?と言われそう。

依頼部署の状況を推測する

アピール材料にできなくても、まだ活用法はあります。

所属先では、定期的に依頼件数を集計し、部署別に前期や前年同期と比較し、その変化の原因を探ることで、依頼部署の状況を推測しています。渦中にいても気づくはずなので、振り返り要素が強いかもしれません。

  • この部署で依頼数が増えているのは、⚫︎⚫︎ビジネスの拡大で取引先を拡大しているから
  • この部署では依頼数が減っており、商品開発の方針が変わっているのではないか
  • この部署からの依頼がダントツで多いから、Aさんに張り付いてもらおう

といった感じです。今のところ、分析しても「ふーん」なことがほとんどですが、研修やコンプライアンス教育に活かすこともできるのではと思います。

成長を感じる材料にしてもらう

法務の仕事は、スキルや成績の数値化が難しく、また、依頼者が法務に明るいわけではないから、いい仕事をしても依頼者が喜ぶとは限らないし、その逆もあります。そうすると、特に経験が浅いうちは、検討してもチェッカーから結構直されるでしょうから、自分のスキルや成長に自信を持つチャンスがなかなかなさそう*2

なので、「前期は⚫︎件だったけど、今期はそれより⚫︎件多く担当することができた」という事実は、自信にしてもらっていいのかなと思います。この伸びが鈍化してきたら、独り立ちの証なのかもしれません。

数える弊害を乗り越える方法を探し続けたい

法務の仕事は数で測られるべきではないです。難易度の高い1件も、ザコい1件も同じ1件だと不平もあるでしょう。数えることで、本来1件とカウントすべきものを分けるとか、件数が減っているなら人も減らそうとか、おかしな方向に行ってしまうおそれもあります。だから、依頼件数それ自体を中心的な指標に使うことはやめたほうがいいと思う。

しかしながら、法務のメンバーがモチベーションを持って働き続けたり、法務の存在意義を認めてもらったりするには、メンバーのスキルや法務の仕事量・貢献度を見える化する試みをあきらめることはできないとも思う。単に自分がそれに挑戦したいだけかもしれませんが。

なので、これからも悪あがきする所存です。

*1:初回回答までの日数、弁護士相談をしたか、ラリー回数、タグなど。

*2:経験を重ねても自信が得られるかはわからないけれど、未熟な自分とはうまく付き合えるようになるかも。