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大阪で働く法務パーソンのはなし

スキルマップを見直す 2024

「法務のスキルマップを見直す」というのを、ここ数年、自分に課していたのですが、なかなか手をつけられずにいました。気持ちはあるけれど、壮大なので先送り先送り・・・
しかし、諸事情でいよいよ逃げられなくなって、ただいま取組中です。

スキルマップの改善が必要な理由

なぜスキルマップを見直す必要があるのか。
根本的な理由は、「既製品を流用してとりあえず作ったから」ですが、

  • そもそも、自社の等級制度と整合していない(細分化できていない)
  • 自社人事がやろうとしているスキルセットを無視している
  • 自社ではそれほど機会に恵まれないものが結構ある(英文契約、M&Aなど)
  • 法令の理解・収集分析力・起案力、といった抽象的な切り口ばかりで、おそらく、メンバーが求めているものとギャップがある

といった問題があるからです。

なお、このスキルマップを使って評価をしているわけではありません。あくまで自身や指導担当の力量を振り返ったり、次の注力ポイントを見定めてもらうために使っています。

法務のスキルマップ作成で参考にしたいもの

今、使っているスキルマップは、2019年に経済産業省がリリースした国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書の参考資料として提供されている「経営法務人材スキルマップ」をベースにしています。これは、経営法友会が以前に作成した法務人材のスキルマップがベースになっているそうです(経営法友会事務局の方に教えてもらいました)。 

「経営法務人材」って何?という議論は横に置くとしても*1、このスキルマップを引き続き参考資料として差し支えないでしょう。

ただ、これだけだと上記の問題が解消されないので、今回は、自社人事が求めているスキル(「●●力」とかしか書いていない…)のほか、kataxさんが中心になって作成されている「リアリティのある法務のスキルマップ」を穴が開くまで拝見して勉強させていただいています。

等級別イメージ

今回の見直しでは、自社の等級に合わせてスキルをマッピングする予定です。
等級が上がってから異動してくる人もいるので、完全運用は難しいのですが、「これができる人が●等級だよね」というのをお互いに認識しておくことは、評価するほうにとっても、されるほうにとっても、いいことだと思うから。

所属先は等級が6つあって、管理職の境目はちょうど真ん中にあります。まずは、各等級でどれくらいのスキルを備えていればいいかをイメージするところから考えてみる。生煮えですので、ツッコミ・ご批評よろしくお願いいたします。

初級・非管理職:伴走が必要

  • 割り当てられた仕事を所定の期限までにやるところからスタート。
  • ルーティンの教育研修・情報発信や契約書チェックが大体できる。

中級・非管理職:一人前(〜6,7年目)

  • 通常ルートで入ってくる相談は、主担当を務められる。
  • 弁護士への相談が必要なものを見極めることができ、訴訟対応含めて弁護士と相談して事を進めることができる。
  • プロジェクトに1メンバーとして参加できる。
  • 自分の課題を把握できる。

上級・非管理職:管理職適性を身につける(〜10年目)

  • PJ案件含め、部門で受けるほとんどの依頼で主担当を務めることができる。
  • 他部署であっても、誰に聞けばわかるかがわかる。
  • メンバーの現状を見ながら、通常ルートで入ってくる案件をアサインできる。
  • メンバーの成果物をダブルチェックしたり、課題を把握できる。

初級・管理職

  • 部門で受けるすべての依頼で主担当を務めることができる。
  • メンバーを評価し、フィードバックできる。*2
  • 協力が決まっているタスクについて、他部署との調整(役割分担の明確化・進め方の調整)ができる。
  • 部門内の経費を管理し、予算案を作ることができる。

中級・管理職 ←自分、いまここ。

  • 自分が不在でも滞りなく回るチームを作っている。
  • 部署の内外・法務内外を問わず、首を突っ込むべきところを見極めて、しかるべきところで首を突っ込める。
  • 必要と考える取組みを見定め、関係者を説得できる。

上級・管理職(=部門長、役員)

  • 社外のネットワークを築ける(できればプロボノ活動も)。
  • 経営陣の法務リテラシーを高められる。
  • とにかく1円でも多く予算をとってきて、メンバーの活動の自由度を高められる。

マップをどう設計するか

イメージの解像度はもっとあげていくとして、マップ(表)のデザインはどうするか。

列(横)は、自社の等級で決まりです。

行(縦)は、「契約書チェック」といった業務遂行スキルだけだと、法務に求められる能力としては不十分に思うので、capabilityというのか、skillではないものも含めるつもり。基本的な事務処理・法的理解・情報収集分析などに加えて育成も設けたい。

こういうのは、やりだすと欲張りになり、長くなってしまいがちですが、A4で4枚(両面2upで2枚)に収まるようにしたいとも考えています。自分でハードルを上げている…

自分のことは棚に上げる

スキルマップの作業をしていると、「お前はどうなのか?」「どの口が言うのか」ともう一人の自分が囁いてきます。
でも、自分のことは棚に上げておくのが正解だと思ってやっています。

遅くとも夏までには仕上げるつもりです。

*1:件の経済産業省の報告書では、「経営法務人材」について、「法令全般の基礎知識に加えて、ビジネスの理解や分析力、交渉力・説得力、ITリテラシーなどのスキルや、最適解を選ぶこと、現実的解決策を見出すことなどの姿勢・マインドセット」を兼ね備えた者をそう呼ぶべきという意見の紹介がありますが(p.28)、結局のところよくわかりません。

*2:評価ができるから管理職なのではなく、管理職だから評価しなければいけないのですが…