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大阪で働く法務パーソンのはなし

第2線間のレポートラインが機能しない

グループ全体のガバナンス向上は、所属先の課題のひとつ。3線ディフェンスでいう第2線間のレポートラインを機能させることが、私のチームの課題(問題)です。

第2線間のレポートラインが機能しない理由

グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針では、第2線の実効的な機能発揮のためには、管理部門が親子間で「タテ串」を通すことが推奨されています(p.82)。しかし、所属先ではこれがなかなか難しい。

ルールがない

元も子もないのですが、まず、「こういうときには、親会社法務部門に事前相談・事後報告しなさい」というルールがありません。

グループ会社管理規程みたいなのはあって、事前承認/事後報告が必要な事項は決まっているけれど、財務諸表へのインパクトを念頭に設計されているので、法務など蚊帳の外。また、ある程度の規模を持つ子会社は、独立した法務部門がないとしても、法務業務を担う人材がいて回っているから、いちいち相談してくることもありません。

共通して使えるツールがない

もう少し規模が大きければ違うのでしょうが、所属先では、グループ会社によって使うシステムがバラバラなので(なんでやねん)、同じプラットフォームで情報を共有できません。情報を伝えたければ、メールや電話のようなクローズドな方法しかないのもコミュニケーションの基礎を欠いていると思います。

カウンターパートがバラバラ

では、電話するか…と思っても、法務部門の有無にかかわらず、親会社の法務部門がカバーしている業務(法務・コンプライアンス知財)を子会社では複数の部門で分担していることが多く、カウンターパートが誰なのかよくわかりません。聞けばわかりますが、あちこちに連絡するのは正直面倒ですし、R&D部門などに接触するのは、なんとなく越権行為な気持ちになります。

物理的にも心理的にも距離がある(縮まらない)

私たちが連絡をしても反応が鈍く、子会社からも滅多に連絡がこない問題の核心は、結局のところ信頼関係がないからで、その理由は物理的距離と心理的距離が遠いままだからだと思います。

生い立ちも生業も違うのだから致し方ないのですが、なかなか縮まりません。ありていに言って、露骨に警戒感を感じることもあります*1。PMIの失敗は、10年経っても尾をひきますね。大事な会社には、エース級の人間を送り込むことが大切なのだと痛感します*2

実は経営陣に望まれていない?

さらに、表向きは「グループガバナンスの実効性向上」を「対処すべき課題」にしたりしているけれど、実際に具体的な策を講じようとする気配、想いが経営陣に見られません。
よく言えば、自由闊達にやらせてあげたいのかもしれませんが、「内部監査をしっかりやるように」という以外聞いたことがないぞ。(そして、内部監査の結果をしっかり見ているかというと・・・)

親会社に法務部門を集約するのが正解なのか

第2線間でタテ串を通す意義は、レポートラインを複数確保することでどこかで握りつぶされてもグループとしてはガバナンスを機能させることにあるので、情報が入ってこないなら、情報が入ってくるしくみをつくるしかありません。

私の微力だけでできることは、カウンターパートを集めたミーティングをオンラインで設定することくらいなのですが、ちょっと想像しても、まるで実効性が期待できない。心の距離が縮まるとは思えません。なぜなら、子会社は関与を望んでいないから。

事を大きくして周りを巻き込むなら、法務業務を親会社に全部集約することが考えられます。私のボスはそうしたいようだけど、これもあまり上手くいく気がしません。先をいく企業さんには、日常的な契約書チェックなどをシェアードサービス化されているところもあるけど、結局元に戻したりしているし、私が子会社なら「面倒くさいから相談せずにやっちゃえ」と考えるでしょう。

おそらく理想は親子間で法務人材の交流をすることなのだろうけど、親会社に人材を派遣するほどの余裕はうちの子会社たちにはありません。親会社から派遣しようとしても誰も行きたがりません…(私も行きたくない)

この問題、本当にどうするかな…

*1:これまで指導とかしたことないのに…私がコミュ障だというのもあるだろうし、相手もそうなのかもしれない。

*2:「エース級」と信じた人がそうではなかったということもままあるわけですが。汗