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大阪で働く法務パーソンのはなし

「コンプライアンス体制」とは

とある場面で、「貴社グループのコンプライアンス体制を教えてください」と言われて、答えに窮してしまいました。過日の吉野家さんの件にしても、「コンプライアンス体制」って何なんでしょうか。

コンプライアンス」の「体制」

コンプライアンス体制とは、「コンプライアンス」の「体制」、つまり「コンプライアンス」が機能する仕組みのことだと思います。

では、そもそも「コンプライアンス」とは何か。今の時代、定義は一義的ではなく、たとえば当社グループでは、「MVVや行動規範の共有と実践である」と社員に説明しています(いまひとつ通じていない気はしています…)。
世間的には、法令や世の中の期待に則した行動をとることを意味し、社員にそのような行動をとらせる仕組みを「コンプライアンス体制」と呼んでいるのだと思います。

模範解答は①委員会活動、②教育、③内部監査、④内部通報制度?

大企業の多くは、「コンプライアンス体制」として、

の4つを挙げているのではないでしょうか。

冒頭の質問をした方も「御社の体制はこんな感じですかね?」とおっしゃったのですが、私はこういうのを見ると次のようなツッコミをしたくなり、「そうです」と胸を張って言うのは憚られました。

  • 委員会がありさえすればよいのか?どれくらい貢献しているのか?
  • 現業部門や合弁会社を抱えるグループで、実効性のあるコンプライアンス教育を全社員に提供できているといえるか?
  • 内部監査は、「枝葉」しか見ていないところがある!
  • 社長から独立した内部通報制度がなければ、コンプライアンス体制としては不十分では?

実際には、「そうですね、その通りです」と言ってしまいましたが…

法務部門のスクリーニングも入れればよかった?

しっくりこない回答した後で思ったのは、法務部門の存在もコンプライアンス体制に数えてよかったのではないかということです。

というのも、当社グループの場合、法務は来るもの拒まずで何でも相談に乗りますし、その判断のものさしは、違法かどうかに限らず自社グループの真善美に照らしてどうか、です。法務(当社ではコンプライアンスも法務で担当)にいるから、自分たちの活動こそもっとも会社のコンプライアンスに貢献していると自負してしまう。

もっといえば、3線ディフェンスでいう第2線(バックオフィス部門)をコンプライアンス体制に数えてよかったのではないか…と思いました。
が、会社ごとに多少のカラーはあるにせよ、3線ディフェンスはどの会社にもある(はずの)ものなので、「そういうことを聞いているんじゃないよ」となるかしら。。
だったら、「当社グループの」コンプライアンス体制って何なんだろう?と冒頭の問いに戻ってしまいます。

吉野家さんの件では、「社員にコンプライアンス教育を実施している」というリリースを行ったところ、「まずいのは役員でしょ」とツッコミが入ったのか、翌日のリリースでは「役員にも実施します」という記載が盛り込まれていました。
こうしてコンプライアンス体制は充実していくんでしょうね。