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大阪で働く法務パーソンのはなし

【本】3訂版 電子契約の教科書〜基礎から導入事例まで〜

 

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読もう読もうと思っているうちに3訂版まできてしまったこちらの書籍を、ようやく読むことができました。

3訂版 電子契約の教科書 ~基礎から導入事例まで~

3訂版 電子契約の教科書 ~基礎から導入事例まで~

  • 作者:宮内 宏
  • 発売日: 2021/01/16
  • メディア: 単行本
 

 

コロナ前からの元祖電子契約本

「電子契約の教科書」は、約4年前に初版が発行されています。私が知る限り、コロナ前、普通のビジネスパーソンが読める電子契約の本はこれしかなかったです。電子契約の勉強をしようと思って目星をつけ、その後改訂版が出たタイミングで購入したのですが、書棚の肥やしにしておりました…そして、2020年は電子契約を取り巻く状況が一変したために改訂版は本当に肥やしになってしまい、今年3訂版が出て今度こそちゃんと読む。

著者の宮内弁護士は、電子契約の専門家として各所でご活躍で、日鉄ソリューションズ(株)が提供するCONTRACTHUBのアドバイザーなどをお務めです。当事者署名型をご支持。

www.itis.nssol.nipponsteel.com

余談ですが、CONTRACTHUBの特長は、宮内弁護士をはじめとするエキスパートの支援体制だと思います。その影響かわからないけれど、技術的な説明がかなり充実しています。法務パーソンには難解なほどに…

ひとことで言うと「初心者は買い(多分玄人も)」

電子契約の書籍は、基本的にどれも「読んでよかった」と思います。こちらも御多分にもれず。
法務が完全に主導権を握って進めていけるようなパラダイムシフトは、なかなかありません。電子契約の本格導入は類い稀な機会です。だから、失敗はもちろんしたくないし、できれば自社に合った最高のものにしたいと腕まくりするのですが、ネットの情報は宣伝臭が拭えないので、社内で説明するときに「●●サインのサイトにこう書いてあった」では説得力に欠けてしまいます。書籍や雑誌記事から弁護士など専門家の客観的意見を得たくなるのは法務の職業病ですね。

初心者から私のような「ちょっとは知っている」という人に向けた本書のおすすめポイントは、次のとおりです。

  • 電子署名の周辺に関する説明が丁寧(電子証明書の発行や有効性管理について取り上げてくれている電子契約関連書籍は他にないのでは?)
  • 図解や押印との比較が豊富でイメージがつきやすい
  • 立会人型への批判的な意見を知ることができる
  • 何より、信頼できるのにお求めやすい価格(税抜1,900円!)

なお、「どうやって導入するの?」というような話題はほとんどないので、それが必要な方は違う書籍を選んだ方がいいです。

「だいぶ知っている」という人でも読む価値ありなんだろうと思ったのは、公的個人認証基盤の民間での利用例の解説が載っている点です。書籍で解説してあるものを読んだのは初めてだったかもしれません。理解が足りていませんが、個人情報がバッチリ載った電子証明書と、個人情報は載っていない番号だけの電子証明書を一人の人間が持つことで、本人確認を確実かつ容易にすることが期待できるみたいです。

沼にはまり中

当社の法務のメンバーは、私も含めて、電子契約について

  • 電子署名の3パターン(ローカル署名・リモート署名・立会人型)の違いは他人に説明できる
  • 電子署名法2条1項や3条に関する政府の見解も知っている
  • 「電子契約サービス事業者を5社挙げなさい」といえばそれ以上に答えられる

というほどには知識を持っています。しかし?だから?電子契約の沼にしっかりはまっていまして、わからないことだらけで苦しんでもいます。先日も、DocuSignを利用した契約の署名パネルに「無効」と表示されていて、「え?無効なの??」と慌てました(私たちの理解では、DocuSignはスタンダードなプランだと認定認証の電子証明書はつかないから?)。

本と実際のサービスの往復が必要

当社の現在の電子契約の導入状況は、
①ごくごく一部で立会人型を利用
②相手方に依頼されれば、一定のケースでは、定評あるところか当事者署名型ならOKとする
という感じで、全面導入の進捗度でいえば10%くらいでしょうか。だからまだまだ情報収集や勉強が必要なのですが、巷にある電子契約関連の書籍や各社のサイトを読んでも、各電子契約サービスがどのタイプの電子署名なのか(そもそも電子署名法2条1項を満たしているのか)を判別することすら難しいのが現状です。

一度営業の方に説明いただいたくらいでは全容がつかめず、本を読んで理解を深めるもうまく紐づけられず、という状況。お手数をおかけするけれど、提供事業者さんにはレクチャーを3回1セットくらいでお考えいただきたいですね。。
「締結作業が楽ちん」「UI・UXに優れる」とかは、サービスを比較する上で有意な違いにならないので(どこもわかりやすくできてる)、電子署名のタイプ、電子帳簿保存法の要件該当性、締結された電子契約の署名パネルの意味・見方とかを淡々と教えてもらうほうがありがたいです。全部が◎のサービスはないことはわかったので。