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大阪で働く法務パーソンのはなし

取締役の報酬等決定方針が決まらない

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今月から改正会社法が施行されています。
恥をしのんで申し上げますが、当社はまだ取締役の報酬等決定方針が定められていません。今月の定例取締役会へ向けて鋭意準備中です。

個人別報酬等の方針の策定義務化

改正により、会社法361条7項として以下が追加され、上場会社は個人別報酬等の方針を定めなければならなくなりました。定款や総会で個人別の報酬等の内容を決めているところなんてないでしょうから、どの会社さんもどうしようかお悩みだったことと思います。
経過措置もないし、法務省も「できれば改正前に定めましょう」とか言ってくれちゃうし…

 

次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項(※注:報酬等)についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。
一 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書内閣総理大臣に提出しなければならないもの
二 監査等委員会設置会社 

施行規則が読みにくい!

昨年に改正会社法施行規則が公布され、何を決めなければならないか確認しよう!と思ったのは良いものの、インターネット官報を印刷等するタイミングを逸してしまい、施行規則へのアクセスに苦労しました。。施行前からeGOVにも載せてくれていてありがたいけど、印刷に向かず、字も小さく…法務省パブコメ)のほうもいつもの体裁。本当に改善して欲しい。読ませる気あるんですか…

アクセスも悪かったのですが、内容も慣れません。
会社法施行規則98条の5は、決めるべき事項として次のとおり定めます。
4の報酬割合を開示するのはなんとなく気が進まない企業もおありだと思いますし(当社がそうです…)、6は、代表取締役に再一任している場合は、代表取締役の名前と「個別支給額の決定」などと書けば終わりなのでしょうが、それでは今の時代はちょっと格好悪い。。

  1. 報酬等(業績連動報酬等又は非金銭報酬等でないもの)の額又は算定方法の決定に関する方針
  2. 業績連動報酬等に係る業績指標の内容及び額又は数の算定方法の決定に関する方針
  3. 非金銭報酬等の内容及び額若しくは数又はその算定方法の決定に関する方針
  4. 1~3の報酬等の額の取締役の個人別の報酬等の額に対する割合の決定に関する方針
  5. 報酬等を与える時期又は条件の決定に関する方針
  6. 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者 に委任することとするとき
    • 委任を受ける者の氏名又は当該株式会社における地位及び担当
    • 委任する権限の内容
    • 委任を受ける者により委任される権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは,その内容
  7. 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の方法(6の事項を除く。)
  8. 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項

お手本は東京株式懇話会など

こういうものを一から作るとき、どうしてもお手本を求めてしまいます。今回もないのかな?と思ったら、東京株式懇話会から出ていました。取締役会議事録の体裁でかなり具体的に記載例をあげてくださって、大変ありがたいです。コピペの勢いで書き始めたことを告白します。

また、本日時点では、開示に積極的な企業が会社法改正に対応したと思われる方針を自主的に公表されているところもあり(例:オムロン資生堂)、こちらもとても勉強させていただきました。

金融庁の好事例集があだになることもーそもそも誰が起案する?

当社の策定が会社法施行に間に合わなかったのは、漫然と放置していたわけではなく、起案部門が改正の内容を十分把握しておらず、起案されたものを法務で確認したところ、上記の8つの項目が網羅できていなかったからでした*1
改正の内容を知らずになぜ「それっぽい」ものができたかというと、金融庁の「記載情報の開示の好事例集」を参照していたからです。会社法が変わると、あれだけ言ったじゃないか。。

そもそも、「取締役報酬の決め方」って誰が考えるんでしょう…経営企画?人事?なぜか当社はそのどちらでもないところが起案し、その結果、会社法が網羅できていませんでした。

とりあえず決めて様子見を

取締役の報酬等の決定方針は、その概要が事業報告の記載事項となりました。3月決算の企業から対応が必要ですが、幸運なことに当社はそうではありません。
CGコードの改訂も気にはなりますが、義務的な開示にはまだ時間があります。言葉は悪いですが、とりあえず形だけ定めて、各社さんの内容を勉強させてもらい、ブラッシュアップするところがあれば後から直せばいいんじゃないか。今、短い時間でベストなものを作ろうとする必要はないのではないか。そんな気持ちで私はおります。

*1:言い訳をすると、私は自分のボスに起案部門に記載事項を伝えるよう進言していたのですが。。