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大阪で働く法務パーソンのはなし

株主総会招集決議のお作法

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定時株主総会の目処がついてきました。年々やることが増えているような気がします…

当社では、定時株主総会の招集決定に関する議案が多すぎるように思うのですが、これって普通でしょうか(多分普通じゃないと思う)。

定時株主総会の招集決定事項@取締役会

会社法上、一般的な上場企業で定時株主総会を招集するには、以下を取締役会で決議しなければなりません(会社法298条1項各号、会社法施行規則63条)。
(決算期変更や本店移転といった特殊事情があればさらに増えますが省略。)

  1. 株主総会の日時及び場所
  2. 株主総会の目的事項
  3. 書面投票を採用する旨
  4. 電子投票を採用する場合はその旨
  5. 株主総会参考書類の内容
  6. 書面投票や電子投票の期限
  7. 賛否不明の場合の取扱い
  8. みなし開示を利用し、株主総会参考書類に記載しないものとする事項
  9. 重複して議決権行使が行われた場合の取扱い

株主総会参考書類には、以下を記載することとされています(会社法施行規則73条1項)。

  1. 議案
  2. 提案の理由
  3. 議案について監査役や監査等委員から報告すべき事項がある場合はその内容の概要

もっとも簡単に済ませるなら1回・1議案

では、これらを具体的にどのように取締役会で決めていくか。

典型的非公開会社であれば、以下のように、招集にあたって決議すべき事項をひとつの議案ですべてカバーすることが多いように思います。

 

第●号議案 第●回定時株主総会招集の件
議長は、当社の第●回定時株主総会を下記のとおり招集したい旨を述べ、議場に諮ったところ、全員異議なく原案どおり承認可決した。

     記

  1. 日時 ●年●月●日(●)午前●時
  2. 場所 ●●●● 当社本店会議室
  3. 会議の目的事項
    報告事項 第●期(●年●月●日から●年●月●日まで)事業報告 報告の件
    決議事項
    第1号議案 第●期(●年●月●日から●年●月●日まで)計算書類承認の件
    第2号議案 剰余金処分の件
    第3号議案 取締役●名選任の件
    取締役全員は、本総会終結の時をもって任期満了となります。つきましては、取締役●名の選任をお願いするものです。取締役候補者は、次のとおりであります。
    取締役候補者 ●●●●
      同    ●●●●
      同    ●●●●

以上

1回の取締役会で、1つの議案で招集決定事項をすべて網羅してしまえば、もっとも簡便ですよね。当社も子会社はこの方法です。

上程内容を個別の議案で審議するケースも

しかし、上場企業になると書面投票や参考書類作成が必須になるので、典型的非公開会社よりも招集にあたって決めるべきことが多くなります。
それに、(現実は別にして)議案に関する議論もあるかもしれません。特に最近は、任意でも指名報酬委員会を設置するところが多いので、取締役選任議案などでは同意(推薦?)する旨の社外役員の発言を議事録に残しておきたいというニーズもありそうです。

そういう事情でひとつにまとめるのは無理があると考えたのか、今の所属先では次のように取締役会に付議しています。「・」ひとつずつが独立した1個の議案です。

▼定時株主総会の約1.5か月前

  • 事業報告・計算書類・附属明細書の承認
  • 定時株主総会の招集に関する事項の決定
    (日時・場所・目的事項の名称の決定、書面投票・電子投票の採用その他議決権行使関係)
  • 剰余金処分
  • 取締役●名選任・・・など(議案の内容を決める。提案の理由はざっくり。)

▼定時株主総会の約1か月前(招集通知発送直前)

  • 招集通知の承認
    校了済招集通知の承認)
    ※お土産の内容報告もこのタイミングでしていますが、コロナ禍ではなし。

議案が多すぎる…と思うのは私だけでしょうか。。
ちなみに、決算直後の取締役会では、ご丁寧に「事業報告と計算書類を監査のために監査役会と会計監査人に提出する」という報告もしています。

招集通知の承認だけでよいのでは?

会社法上、書面投票・電子投票を採用する企業は、招集決定にあたって株主総会参考書類の記載事項についても取締役会の承認が必要です。そうすると、当社では、招集通知の承認まで完了しないと必要事項をすべて承認したことにはなりません。
さらに、少なくとも今年の定時株主総会までは、招集通知を見れば必要なことがすべて書いてあります。

であれば、実施概要や議決権行使関連、個別議案について事前に付議せず、招集通知の承認だけで十分で、議事録も次のような感じでよいのではないでしょうか。

 

第●号議案 第●回定時株主総会招集の件

議長は、取締役及び監査役の候補者についてはそれぞれ指名報酬委員会及び監査役会から同意を得ている旨説明の上、当社の第●回定時株主総会を別紙「第●会定時株主総会招集ご通知」のとおり招集したい旨を述べ、議場に諮ったところ、全員異議なく原案どおり承認可決した。

なお、私の10年来の座右の書であるMHMの『会社議事録の作り方』では、上記非公開会社のように日時・場所・目的事項は議事録本文に記載し、その他については「株主総会の招集に関する事項は添付の招集通知のとおりとしたい旨を説明のうえ」とするサンプルが記載されていました(p.249)。