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大阪で働く法務パーソンのはなし

なぜ取締役会書面決議のときは登記に現行定款が必要なのか

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登記周りの投稿をするときは、司法書士さんと見解の相違を生じたときであることが多いのですが、今回は違います。

今回問いたいのは、「なぜ取締役会で書面決議したときは、登記申請に現行定款を添付しないといけないのか」

その問いの答えは、「法令で決まっているから」ですが、「定款がなくてもいいときがあるじゃないか!」というのが私の疑問です。

取締役会の書面決議(決議省略)

代表者変更や定款変更を要さない本店移転など、(親会社の一存で)イレギュラーな取締役会が必要なことがあります。そんなときは、わざわざ臨時取締役会を招集せず、書面決議で済ませてしまうのも一案です。
当社の子会社の中には、定時取締役会の開催ペースに合わないという理由で、定時株主総会と後役会を書面で済ませるところもあります。

定時株主総会と後役会を書面で行ったときがまさにそうですが、書面決議の取締役会議事録が登記申請の添付書類になることも。そんなときは、現行定款も添付しなければなりません。

現行定款が登記申請に必要な理由

書面決議の取締役会議事録を登記申請で添付する際に、現行定款の添付が必要な理由は、次のとおりです。

  1. 取締役会の書面決議は、定款に定めがないと利用できない(会社法370条)
  2. 定款の定めがなければ登記事項に無効・取消し原因があることになる場合には、定款の添付が必要(商業登記規則61条1項)

「まぁ、そう言われるとそうかぁ」という感じですよね。登記官、細かいところまで見るな…と思いつつ、おとなしく提出しています。

取締役の任期短縮の場合は不要

ここで立ち止まる。定款で会社法の原則を修正しているケースが他にもあるではないか、と。

取締役の任期を1年とする企業が相当数あります。特に上場企業は、そうすれば期末配当を取締役会決議だけで実施でき、また、取締役の経営責任を問いやすくできるとかいう理由で、むしろ「任期1年が普通」くらいです。

しかし、会社法上、取締役の任期は原則2年であり、1年とするには定款の定めによって短縮しなければなりません(会社法332条1項)。定款の定めがなければ、任期1年での改選は法令に反し、総会決議の無効事由となるはずです(会社法830条2項)。

では、毎年の役員変更登記申請に現行定款を提出している企業はどれほどあるでしょうか。多分ないと思います…提出している企業や提出させている司法書士さんがいらっしゃればお目にかかりたい。

「任期満了により退任」と株主総会議事録に書いておけば、それを退任を証する書面としてよいという昭和時代の法務省の見解があります。任期が何年でもとにかくその文言を株主総会議事録に書いておけばよいという実務が定着しているから、現行定款の添付は不要なんですよね、多分。

定款に規定があることを議事録に書いておくことも

でも、どうにも違和感があります。「そこは適当なんかい?」と。

人様の登記を預かる事務所時代は、任期が1年の企業の株主総会議事録には「定款の規定により本総会終結の時をもって取締役全員の任期が満了するので…」と書くのがマストでした。法務局にも確認の上だったと記憶しています。
そして、私はいまだに子会社の株主総会議事録ではその方法を守っています。もちろん、現行定款なしで登記申請できますし、司法書士さんにとやかく言われることもありません。

ところがですね、親会社(上場企業)の招集通知には「定款の規定により」など書いておらず、総会のシナリオにもそんな表現はありません。多くの上場企業がそうだと思います。
言ってもないことを書いてはいけないので、親会社の株主総会議事録には「定款の規定により」は記載しないのですが、もちろんあっさり登記申請ができてしまう。

「なんでなん?取締役会の書面決議との違いはどこ?」と、この時期いつも思います…

いつ時点の現行定款を出せば良い?

もう一つ腹落ちしないことが。

現行定款を登記の添付書類として提出するとき、「以上は、当社の現行定款に相違ありません。●年●月●日 ●●株式会社 代表取締役 ●● ●●(印)」みたいな奥書をつけますが*1、いつ時点の現行定款を出せばよいのでしょうか。

普通に考えると、取締役会の書面決議の日時点に定款に定めがないといけないので、決議の日時点のものを出すべきだと思うのですが、実務上は登記申請日だったりもするようです(当社の子会社ではそんなケースがありました)。適当…

途中で定款変更していたらどうするんでしょうね。

*1:建前上はハンコ不要になったけれど、「とりあえず様子見で押印しておいてください」と司法書士さんに言われました。気持ちはわかります。わかるけど、、それでは変わらないぞ!