今年の3月総会以降の上場企業は、ほとんどどこも9月からの電子提供制度の開始に備えて定款変更の総会付議を予定しているはずです。
賞味期限の短い話ですが、そういう会社の8月末までの現行定款は、どうするのが正解でしょうか?
全株懇モデルの定款変更議案
電子提供制度に備えた定款変更の全株懇モデルは、次のようになっています。
若干のアレンジはあれど、ほとんどの上場企業がこれを踏襲するはずです。もちろんうちも。
総会後から「現行定款」は上書きしてしまうべき
この定款変更を行った場合、現行定款は、次のA案とB案のどちらで対応するのが正しいのでしょうか。
<A案>
- 8月31日まで
→今のまま - 9月1日から来年2月末まで
→総会の定款変更決議内容を反映 - 来年3月1日から ※臨時株主総会がない場合
→附則を削除
<B案>
- 総会直後から来年2月末まで
→総会の定款変更決議内容を反映 - 来年3月1日から ※臨時株主総会がない場合
→附則を削除
結論としては、定款変更自体は決議時に効力を生じるので、B案が正しいらしいです。
実際、IR優良企業賞を受けているアサヒGHDさんの定款は、先月の株主総会を受けて次のように反映されていました。有価証券報告書に添付された定款もこの内容でした。
しかし、次のとおり附則があるとはいえ、むしろ、この附則のせいで違和感が残りませんか…?なんで、まだ効力が生じていない定めが載っていて、逆に現時点で有効な定めが現行定款にないのか、それは果たして「現行定款」なのかと。
たしかに、「9月1日付で定款を変更する」という決議をしたわけではなく、上記内容の決議を今採ったので、決議後すぐに現行定款を直すのが理屈が通っているように思います。でないと附則の意味がない。
現に、証券代行に聞いても、印刷会社に聞いても、「決議後すぐに直してください」と言われました。
「今効力がある定めが消える」モヤモヤ
証券代行と印刷会社に「すぐに直せ」と言われたので、反論の余地はないのですが、現時点で効力がある定めが現行定款から消えるのはモヤモヤします。向こう1年、臨時株主総会の予定はなく、みなし提供の定めがなくても何ら不都合はないけども。
「そんなに気になるなら、現行定款交付のときに、今年の招集通知のコピーを一緒に提供してあげればいいんじゃないですか?」と証券代行や印刷会社は言ってくれるのだけど、そういうことではないような…
当然に9月1日に変更するものと思っていた
効力発生を将来の日とする定款変更は、今回のような法改正への対応のほか、商号変更でも多用されます。
その場合も、上場企業なら附則で効力発生日を定めるはずですが、総会決議の直後に定款を新商号へ変更することはせず、現商号のまま効力発生までいくのでは?
また、上記の全株懇モデルの説明には、次のように説明がありました。
なお、施行日前に開催される株主総会で電子提供制度に係る定款変更を行った会社については、施行日をもって定款変更の効力が生じ、施行日に備置定款そのものを差し替えることになるため、当該説明文(筆者注:みなし定款変更がされている旨の説明文)を備え置く必要はありません。
※下線筆者
よって私は、
- 8月31日まで
→今のまま - 9月1日から来年2月末まで
→総会の定款変更決議内容を反映 - 来年3月1日から ※臨時株主総会がない場合
→附則を削除
とA案の順に手を入れていくのだと思っていたのですが、やはりこちらは正しくないんでしょうかね。。