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大阪で働く法務パーソンのはなし

社内規程の「あたりまえ」がわからない

「社内規程の管理は法務」という企業も珍しくないですが(「管理」とは何ぞ?)、所属先では法務以外が担当しています。
なので、普段は社内規程に関与せず、行き詰まったときのみ相談がきます。

社内規程が年々カオスになっていくのは我が社だけでしょうか…

そもそも「社内規程」とは

法務脳だと、社内規程の頂点にあるのは定款で、その他「●●規程(規則)」と名づけられたものが「社内規程」だという感覚があります。

でも最近は、「●●ポリシー」「●●方針」が乱立するし、企業理念(パーパス)や行動規範等もあって、これらも「社内規程」と整理するのが内部統制としては適切で、所属先の「規程一覧表」には80くらいの「社内規程」が並んでいます。
誰がこんなにルールを守れるんだ…

「社内規程」の優劣は

企業理念を含む社内ポリシーまで社内規程に含めると、「社内規程ヒエラルキー」では当然ながら企業理念がトップにきて定款は劣後します。会社にとっての定款は国にとっての憲法だと習ったので、ちょっと釈然としません*1

とはいえ企業理念はトップにくるのは論を俟たないからいいとして、他の社内ポリシーと古典的な社内規程(定款やいわゆる「●●規程」と名のつくもの)、さらに古典的な社内規程同士の間で矛盾が生じた場合はどちらを優先すべきでしょうか。

社内ポリシーと古典的社内規程の比較は難しいので措いて、定款と矛盾する場合は、形式的効力が上位の定款が優先するはずです。
では、取締役会規程と職務権限規程が矛盾したらどちらを優先させるべきか。

形式的効力が同じなので、「後法優先の原則」を適用するのが自然だけど、従業員が通常確認するのは職務権限規程(の権限基準表)で、取締役会規程にある決議事項(職務権限規程よりざっくり+主に会社法周りのルール)なんて、取締役会事務局担当者でもめったに見ていないと思う。。そうすると、一般法(取締役会規程)と特別法(職務権限規程)の関係にもなりそうです。

矛盾しないようにメンテナンスできればいいのですが、木も森も見るのは難しい。

グループ企業の「社内規程」をどこまで面倒見るか

所属先には国内外合わせて数十のグループ会社があり、これらの社内規程をどこまで把握・指導するのかも悩ましいです。法改正に対応できていないケースもままあります…

他社だと、子会社役員に自社の総務部長を派遣して「親会社では●●規程をこう変える(変えた)から、対応するように」と指導することもあるそうです。しかし、自社の場合、子会社に派遣する役員は管理系の人ではないからこのアプローチはなかなか難しい。

所属先では、グループ会社が自前ですべて規程を揃えることは難しいので、「自分で作らないのなら、これに従いなさい」という規程セットを作っています。ただ、親心で作ったはいいものの、どうやら子どもたちはほとんど使っていない模様。

「関係会社管理規程」の怪

多くの企業が、「関係会社管理規程」のような規程を整備し、グループ会社が一定のインパクトのあるアクションをしようとするときは、親会社への事前同意や事後報告を義務付けています。所属先もしかり。

もっとも、「グループ会社にはこうさせよう」と親会社が決めても、グループ会社できちんとルール化されていないと意味がありません。それができているところってどれだけありますかね。。うちも、しっかりした子会社は、職務権限規程に親会社の列を作って、事前同意、事後報告、取締役会の要否を明記していますが、決して全部ではないので、仮に関係会社管理規程を逸脱していた場合、その責任は誰がとるのでしょう…

また、子会社のアクションの最終決定権を親会社に持たせたいという相談もよくあります。職務権限規程上の決裁権を親会社に持たせるイメージですね。私は、「事実上はともかく、それはないだろう」と考えるのですが、この類の相談は後を絶たないし、グループ統制は親会社がしっかりやるべしという風潮なので、「お好きにどうぞ…」と言うべきでしょうか。頭がカタいのは私か。

グループ企業にも適用する「社内規程」の定め方

ほかにも、グループ会社に適用したい社内規程があります。企業理念や行動規範のほか、インサイダー取引防止規程、内部通報規程、リスクマネジメント規程などなど…

こういったものは、「我が社でも従う」と取締役会で確認(決議)すべきでしょうか。私は、子会社とはいえ別人なので、「親の言うことを聞くことにする」という意思決定は必要だという考えなのですが、あまり話題にならないので、誰もそんなことしないのかな…と不安です。

*1:エーザイ株式会社のように定款に企業理念を入れ込んでしまうのは、望ましい姿なのかもしれません。