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大阪で働く法務パーソンのはなし

認証を取りに

久しぶりに登記事項証明書へのアポスティーユ認証が必要になり、手順を改めて調べました。
いつの間にか、法務局での押印証明が不要になりましたね…(キャリアがバレる)

原則郵送申請のみになった公文書へのアポスティーユ認証

登記事項証明書のような公文書への認証は、直接外務省へ申請します。私文書認証と比較して公証人の認証が不要な分、もらうスタンプが減るので手間も減るかと思いきや、ワンストップサービスが利用できる今となっては公文書のほうが手間がかかります。申請先は外務省で、国内に2か所(東京・大阪)しか窓口がないし…

以前は、外務省へアポスティーユ認証を申請する際、東京でも大阪でも、持参して翌日に受け取りにいくのが基本でした*1
ところが、コロナ禍の今は原則が郵送申請だそうで、特に東京は、郵送でしか受け付けていないと外務省のサイトに書いてあります。大阪は、受付は持参もOKだけど、受取りは郵送のみで4稼働日ほどかかるとのこと(今回は木曜発送で翌週火曜に到着した)。

書類が1泊2日するだけでも時間のロスがあると感じていたけれど、1週間仕事になりました。

私文書はワンストップで

とはいえ、普段アポスティーユ認証が必要になるのは、決議書や委任状といった私文書で、こちらは公証役場のワンストップサービスが利用できます。

かつて大阪ではワンストップサービスが受けられず、アポスティーユ認証や領事認証が必要な場合は、

公証役場で認証→法務局(本局)で押印証明→外務省でアポスティーユ認証又は公印確認

とスタンプラリーをしたものですが、今では公証役場ですべて完結し、すっかり楽になりました。

財務諸表やパスポートコピーに認証を得るには

  • 決議書や委任状のようなザ・私署証書
  • 登記事項証明書の英訳(と原本)の宣言書
  • 登記事項証明書そのもの

へ認証が欲しいという相談は珍しくありませんが、時に変わった依頼を受けることがあります。

その中でよくあるのは「パスポートのコピー」で、以前は「パスポートは公文書だから認証できない」とおっしゃる公証人も多くいらっしゃいました(現在は法改正によりスムーズに認証いただけます)。なので、昔は「認証してくれる公証人」を探す一手間も必要で、人によって違っていいのか?と思うけれど、何でも認証してくれる公証人はありがたかったです。

最近少し迷ったのは、財務諸表(有価証券報告書の抄本)への認証。財務諸表だけ持っていっても認証してくれないので、「これは当社の連結貸借対照表、…に相違ありません。」と鑑をつけて認証を受けました。Affidavit(宣誓供述書)になりますかね。

こういったイレギュラーな認証を受けるには事前に公証人と相談するのが一般的で、どの公証役場もサンプルを提供してくれると思いますが、京橋公証役場のサイトが豊富にサンプルを載せてくれていて助かります。どの公証人にも通用するかは不明ですが、所属先のかかりつけ公証人は受け入れてくれるので、「これで大丈夫ですか?」「問題なし」の1ラリーで相談が済みます。

署名の自認か署名押印の自認か

会社で私文書認証が必要になるのは、代表者や役員クラスの署名(+押印)についてで、本人が出向くよりも従業員が取得を代行するのが一般的です。

この場合、本人から従業員への実印(代表印)による委任状(登記事項証明書や印鑑証明書も)が必要ですが、所属先で使っているフォーマットでは、本人による「署名の自認」か「署名押印の自認」かを選んだ上で従業員に委任することになっています。経験上、単に「認証を受ける件」でも問題ないはずですが、かかりつけ公証役場にもらったサンプルなのでおとなしく利用しています。

ここで問題がひとつ。所属先の海外事業担当は代表者の署名に社判を添えるのが好きでいつも付けるので、こちらも「ついで」くらいの軽い気持ちで「署名押印の自認」を選んで公証役場に持っていったところ、公証人に「委任状に押してある印影(=代表印の印鑑)と認証する文書に押してある印影が違うのは、本来はけしからん」とご指摘を受けました。

そんなご指摘を受けたのは初めてだったけど、おっしゃっることはごもっともですね…次からは署名の自認のみにいたします。

アポスティーユ認証の意味とは

アポスティーユ認証とは、外務省によればそれが公文書である証明とのことですが、事実上の意味はどこにあるのか。

たとえば、所属先では、こんなやりとりがあります。

依頼者「この子会社の決議書にアポスティーユが欲しいのですが」
法務 「うちのAさんとBさんが署名するんですね。お二人の署名について認証をとってくればいいですね?」
依頼者「???…アポスティーユが欲しいです」

結局、依頼者とその先の海外当局は、「とりあえずアポスティーユがついていればいい」らしい。日本では「この文書の署名は、本人のものである」という公証人の認証から出発しているので、誰の署名かは極めて重要なんですけど。。
私の知る限り、日本の官公署に提出する書類でアポスティーユ認証を求められたことはなく、外国も本当はそれでいいのではないかといぶかしんでいます。

*1:郵送申請は昔もありましたが、遠方の方が利用するイメージで、私自身は郵送申請の経験がありません。