春です。異動された方もあるでしょう。
昨春、私は、初めて非法学部卒のスタッフを新たなメンバーに迎え入れました。
法務パーソンは法学部卒でなくてもOK
法律事務所時代でさえ、英文学科など非法学部卒の先輩たちが専門的な仕事をして、弁護士に頼られているのを見てきました。だから、「法学部卒は法務配属の必要条件ではない」という信念が私にはあります。
しかし、法学部を出ていない(憲法の授業も履修していない)スタッフを実際に受け入れるのは初めての経験。どのように慣れていってもらうか、かなり考えました。
1年経った今、オンボーディングがよかったのか、目覚ましい成長を遂げていて、「末恐ろしい」と思うほどです。日常の契約であれば、取引基本契約も、ライセンス契約も、賃貸借契約も、とりあえずチャレンジしてもらっています。
法務の新人に勧める本
では、どんなオンボーディングをしたのか。
私のチームに配属されると、先輩から15コマほどのレクチャーを受けてもらいます。自社の事業構造、グループ全体図、沿革といった会社の話と、NDAの見方、下請法、景品表示法、知財法など、業務でよく出くわす法的知識の基礎を伝えます。
そして、空いた時間には書籍を読んでもらいました。今日は、その書籍を紹介します。
ある程度基礎知識を備えている自信のある方は、あの法律書マンダラ2021版が先週アップされているので、こちらを参考にされるととても良いです。
スキルアップのための企業法務のセオリー
法学部卒のスタッフでも、配属されたら必ず読んでもらう本がこちらです。
先日、久しぶりに読み直したのですが、やはりとても良いことが書いてあり、今自分が読んでも勉強になりました。あまりにわかりみが深すぎて、新人にも「今読んだらまた発見があるはずだから、前半だけで良いので読み直しておいて」と頼んでしまうほど。
特に、法務担当者に必要なスキルセット(P.20)というのが気に入っていて、①インプット、②アウトプット、③外部インターフェース、④CPUとPCに見立てて、法務パーソンに必要なスキルが解説されています。
図表も多いし、まだ活字に慣れていなくてもすんなり読めるはずです。本当にお勧めです。
先生!バナナはおやつに含まれますか?ー法や契約書の読み方がわかるようになる本
2019年に私が読んだ法律系書籍最大のヒットがこちらの書籍。メンバー全員に押し付けて読んでもらった余波で、新人にも読んでもらいました。
「バナナはおやつに含まれるか」という、子どもでも議論に参加できるテーマで、法やルールの解釈方法を学ばせてくれます。こちらも、法学部卒でも大変勉強になりますし、非法学部卒でも拒絶反応を覚えることなく読める書籍です。
この本の何が良いかというと、「バナナはおやつか」という問いの答えを示すのではなく、「バナナはおやつだ」と考えるなら、どんな合理的な理由づけが考えられるか?を説明してくれるところです。ほかにも、ルールに曖昧さが必要な理由(世の中の「おやつ」をすべて列挙することはできない)、解釈が必要な理由(ルールが曖昧だから)、解釈の方法(目的から、文言から…)などが学べます。そして、「ちゃんとルールを決めておくって大事だな」という気持ちにもなれる一冊です。全社員に読んでほしいくらい。
法学部、ロースクール、司法研修所で学ぶ法律知識ー主要10法と法的思考のエッセンス
これまでの2冊は導入編。心構えや姿勢を身につけてもらうための書籍なので、出身学部に関係なく読んでもらっています。
しかし、基本的な法的知識はどうすればよいでしょうか。「悪意」「善意」の意味も知らないような、まっさらな非法学部卒のスタッフには、下手に知識を教えては危険だと考えました。そんなときに浮かんだのがこちらでした。
法務の仕事に関係が深い法令の基礎知識は、経営法友会から出版されていた「企業活動の法律知識」(会員なら現在も無料でダウンロード可能)でも学べて、現在も研修などで参照しますが、超実務的というか、「法務って何?」というところから入るにはハードルが高いです。
この書籍は、法令の優劣(一般法・特別法など)、憲法から要件事実論まで、幅広く「かじる」ことができてお勧めです。私だって、ロースクールにも司法研修所にも行ってないし、そもそもそんなに真面目な学生でなかった上、刑訴や破産法なんて履修していなかったので、良い復習兼勉強になりました。真面目に法学部やロースクールを卒業した方は不要かもしれません。
新法令用語の常識
私より先輩の法務パーソンなら、緑表紙のこちらのほうがしっくりくるかもしれません。よく似た法令用語の違いを教えてくれる書籍。
今は後継本が出ています。
私はできたら読んでほしいと思うのですが、実は、うちのメンバーで通読した人はいないらしい… 「「及び」「並びに」の違いとかは、「スキルアップのための企業法務のセオリー」などにも書いてますよ」などと言われました。。そういうことじゃないのよ…
通読するかはさておき、この本の存在を知っているかどうかは大きいと信じているので、新人にも必ず紹介しています。私が新卒のときに唯一勧めてもらったのが林修三の緑の本3部作だったので、思い入れが強いのかもしれません。
通読した人はいないと言いましたが、関心のあるところはつまみ読みしているみたいです。そういう辞書的使い方でよいのかもしれません。
経営法友会も重宝
以上の書籍を読んでもらった後、経営法友会の国内契約や新人向けの研修を受けてもらいました。経営法友会は本当に助かっています(講師の顔ぶれにあまり変化がないのはどうかな…と思いつつ)。
セミナーを受けて、新人は「本に書いてあったことや教えてもらったことと同じ説明だった」と感想を述べていたので、私のカリキュラムや課題図書は間違ってないんだと胸を撫で下ろしているところです。