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大阪で働く法務パーソンのはなし

配属者へのトレーニングのいろは

法務の仕事は基本的にはOJTで覚えてもらいますが、当社では配属直後にいくつか座学講義を始めてからOJTに入ってもらいます。
はじめは頼める仕事も限られるし、教える側もつきっきりというわけにもいかないため、最近は自学自習タイム(ワーク)もかなり増やしています。

まずはオリエンテーション

どの部署でも行われることだと思いますが、まずはオリエンテーションを行います。

ここでは、法務のミッションや業務に取り組む上で重要な心構えを説明し、便利なツールや読んでほしい書籍、推奨資格などを紹介します。ここだけは、他のメンバーには譲らず私自身で実施しています。

心構えとして伝えているのは以下のような基本的なことです。

  • 守秘
  • 誠実
  • 事実が大事
  • 知識やスキルの積極的な吸収とシェア

特に強く説明するのは守秘の話で、本社配属になると、ただ座っているだけでもいろんな話が聞こえてきます。また、業務上「自分には教えてもらえない話」が結構あるので、それで気を悪くしないようにという話もします。

読んでほしい書籍は、配属される人のバックグラウンド(法学の履修経験など)によって変えますが、少なくとも以下の書籍は読んでもらっています。

現役の法務部門のトップがお書きになっている法務パーソン向けの本もありますし、良い本はどんどん出てくるので、キャッチアップが大変。。

その他、若手には嫌がられますが、以下も目を通すように言っています。

身につけてほしいスキルは、経営法友会のスキルマトリクスを参考に我が社なりにアレンジしたものを一覧化して渡しています。
正直なところ、取得してほしい資格は別にないのですが、本人たちの目標目安として、ビジネス法務2級を取るようにと伝えています。

事業の説明と我が社の歴史

オリエンテーションの後は、OJTを始める上で最低限必要と思われる知識を座学で教えるのですが、その中でもとりわけ重要で、書籍や外部セミナーでは学ぶことができないのが自社の沿革や事業の話です。ある程度時間をとって、丁寧に伝えています。

たとえば、当社の事業領域は大きく3つあるので、それぞれについて登場人物や(取引)関係などを説明したり、グループ会社がどんな仕事をしているのか、社内の専門用語といったことも時間をとって説明します。
それでも、一度聞いたくらいでは理解するのは難しいので、事業の説明は一年くらいは繰り返し説明しているような気がしています。私自身、すでに入社してだいぶ経ちますが、いまだに「え?そんなことしているの?」と驚くことがあるほどですので…

次は契約書チェックの仕方

事業や会社の説明が終わったら、いよいよ契約や法律の話。
まずは、若手のメイン業務のひとつである、契約書チェックの仕方について説明をします。依頼があったらどう対応するのか?という話です。

具体的には、まずは事実関係や背景を確認し、一読してみてわからないことがあれば、依頼者に聞いたり、条文などを調べたりし、修正案を作って最後に全体をチェックする、という流れです。
ここでも、事実を確認することを念押しするとともに、修正案を出すときには、複数のオプションを提案できるようにしよう、と言っています。「これしかダメ」では、依頼者の期待に応えきれないからです。

その後は、特によく参照する法律についてもう少し詳しい話をしていきます。当社の場合だと、下請法や商標法など。ほかにも、登記事項証明書の読み方を説明し、法務局まで取りに行ってもらうという経験もしてもらっています。

ワーク&自学自習と外部研修

うちのような小規模法務は、「既存メンバーの仕事量が限界を超えそう(もはや超えた)から、増員しよう」という発想で異動が行われるので、新しいメンバーがある程度独り立ちするまで、既存のメンバーの負担はかなり大きくなります。

そこで、書籍を読むことに加えて、以下のようなワークを用意し、ひとりで学んでもらう時間も多くとっています。

  • Wordの使い方(こちらが用意したものとまったく同じ書面を作る)
  • 登記事項証明書の読み方(当社設立〜現在までの組織再編等を読み解く)

また、経営法友会では、初心者・若手向けの研修を年に2回ほど開いてくださるので、こちらも受けてもらいます。懇親会も開いてもらえるので、他社の方との交流もできてありがたい限り。願わくば、懇親会は対面が復活するとよいのですけどね。