ビジネス法務2023年4月号の特集その1は「そのまま使える!新入法務部員向けマニュアル」で、「ビジ法ならではのオリジナルマニュアル」を目指したものだそうです。
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初日に渡すマニュアルなど「真似したいな」と感じたものもあるのですが、契約類型別のチェックリストなどは、なかなかハードルが高い。。
あと、新入部員目線で言えば、もう少し手前の部分のマニュアルが欲しいのではないかと思いました。
自社の「新入法務向けマニュアル」
「マニュアルは作った瞬間から陳腐化が始まる」のを言い訳に、自社では極力作らない方針をとってきました。あるのは、以下のようなものくらい。
- NDA・売買基本契約・業務委託基本契約などの雛形(解説付き)
- NDAのチェックリスト
- 一般条項のプレイブック
- 業務フロー(依頼が来たらまずはこうする、といったもの)
- 定期的にある定型業務のリスト
- ID・PWのリスト
- オリエンテーション資料
これですら見直しが追いついていないものもあります。
メンバーのため、ひいては依頼者のために、契約書のチェックリストは充実させたほうがいいかもな…と思うことは何度もあるのですが、標準化してしまうことへの恐怖が勝り、NDAどまりです。
新入メンバーの不安は「知識」
私は約2か月に1回のペースでメンバーと1on1をするのですが、来たばかりや駆け出しのメンバーがまず気にするのは、知識不足です。
「ろくに法律を知らない私に法務が務まるんでしょうか」的なことを、初めて法務に配属されるメンバーはほぼ必ず言います。かくいう私も、契約書なんて総数引受契約くらいしか作ったことのない状態から事業会社に転職したとき*1、私にレビューができるだろうか?と思っていました。
「知識なくても大丈夫だよ!」は嘘ですし、「少しずつ身につけていこう」と言うほかありません。
- 一定の座学研修
- 1年目で予定している経験をまとめたリストを渡す
- OJTトレーナーをつける
などで身につけてもらうことは、過去に記事で書いたとおりです。
早々にぶつかる「起案力」の壁
徐々に仕事に慣れ、手取り足取り教えてもらわなくても、一応自分で形がつくれるようになると、私の経験上は、次は起案力不足が気になる人が多いです。知識に満足する日が来ないことをすぐに悟るのか、先輩たちが知識で勝負していないことに気づくのか…
論点・結論・理由づけがある程度見えても、それを相手に上手く伝えられない自分がもどかしいみたい。私からのアドバイスは次のようなものです。
- 聞かれた質問にちゃんと答える
(研修などの場合は、何を持って帰ってもらうかしっかり決める) - 受け手が納得する論理性を維持する
- その回答がその先、誰にどう伝わっていくか想像する
- 極限まで削る
- 距離を置く(音読する、一晩寝かす、ダブルチェックを受けるなど)
- そのためにも、日頃から一流の文章を読む
法務だからといって特別なものはないと思いますが、基本的に誰かを納得させるための文章を多く書くので、論理的であることは重要です。
基礎的な法律・契約に関する知識と文章起案に関するマニュアルがあれば、新入法務部員はさぞかし心強いでしょうね。どうやって作るんじゃ。。
否定しない、不安にさせない、でも細かくいう
私は自分があまのじゃくで、他人に励ましてもらっても「あんたに私の何がわかる」と思ってしまうタチなので、「知識がなくて心配だ」「文章が上手に書けない」というメンバーに対し、「大丈夫」で片付けたり、「私もそうだったよ」と簡単に同意したりするのはよくない(喜ばれない)と思っています。
なので、その不安はいったんそのまま受け止めるように気をつけています。漠然とした不安なのか、そう感じるきっかけがあったかは探るようにしていますが。
法務の仕事をする限り、自分の仕事ぶりに満足できる日は多分こないので、不安を吐露するメンバーには、「それ、一生続くから」と言いたい気持ちにもなりますが、初めにそれをいうと下手に不安を煽るだけかもしれない…と最近は思っています。
不安を感じる若手には、否定しない・それ以上不安にさせないを心がけています(できているとは言っていません)。
代わりに、私は成果物を細かく直します。若手のつくった回答案にどこまで手を入れるかは色々と考えがありますが、私はかなり細かく赤入れするほうです。その理由は、①何を意識しているのかを伝える、②部門の質的安定性を追求するのが部門全体にとって良いと考える、ためです。
①については、この「こと」はいらない、「です」が続いて読みにくい、接続詞を使いすぎない、といったレベルまで言語化して伝えることで、「ここまで意識するのだな」と早く気づけて上達も早くなると信じています。
②については、メンバーの個性を否定するわけではないのですが、依頼者は「法務の回答」を期待しているので、部門の信頼性を高めるためにも一定の水準は確保すべしというのが私の考えです。