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大阪で働く法務パーソンのはなし

今年も下請調査 2022

今年の下請調査対応も終わりました。

www.shitaukechousa-oya.go.jp

毎度結構負担なのですが、他社はどう対応されているのでしょう。法務で世話しすぎだろうか…

前回からの質問の変更点

当社は製造業だからか、毎年下請調査の対象に選ばれます*1

毎年ほぼ同じ質問ですが、「ほぼ」同じであって微妙に違う。今年の変更点は次のとおりでした。

  • エネルギーコスト等の上昇に伴う下請事業者との価格見直しに関する質問の追加
  • 消費税転嫁に関する質問の削除
  • 下請事業者名簿の資本金の額の欄が具体額からレンジでの記載に

下請事業者の資本金の額をレンジで記載させるのは、あちらの集計の便宜のためなんでしょうが、具体額を書かせたままのほうがよかったんじゃないかな…

事業所(事業部)に回答を依頼→法務でチェックは正解?

ところで、下請調査への対応って各社どうされているんでしょう?当社ではハガキが当然のように法務に回ってくるけど、他社はどうなのだろう。

下請調査は、事業所(事業部)ごとに回答しなければなりません。法務では誰とどんな取引をしたかわからないので、当社では下請取引がありそうな部署に「今年も来たからよろしく」と振り分け、下書きしてもらった内容を法務でチェックしてから法務で提出しています。
うちは、下請事業者も全社で2桁ですし、下請取引のある事業部も多くはないのでこの方法でできるけど、もっと規模の大きな企業はどうしてるんだろう。。

今の当社のやり方の最大の問題は、法務が「下請取引をしてるのは多分ここ」とアタリをつけて依頼しているため、抜け漏れの可能性があることです。
どうアタリをつけているかというと、契約書のチェックや相談対応の際にキャッチしているほか、自社で誰が何をしているか、それを支えるどんな取引があるかを洗い出してみて、ここに下請取引がありそうだと研究?したり。
こんな調子で探索的に把握しているので、抜け漏れがあってもおかしくはない。

もちろん、コンプライアンス研修などで下請取引とは?という説明はしますが、製品の製造委託のようにわかりやすいものでなければ、社員に下請取引に気づかせることなど至難の業です。私たちだって、下請取引に当たるか悩むケースがあります。

5条書面どうしていますか?

各部に依頼した回答の下書きが返ってきたら法務でチェックしますが、みんな「あるべき回答」をわかっているから基本的にそちらに寄せてあります。私たちも個々の取引の検証は難しいし、3条書面は事前にチェックしたものを使ってもらっているので信用して提出するのですが、気になるのは5条書面のこと。

下請法5条は、下請取引に関する以下の事項を2年間書面又は電磁的記録で保存することを求めています(現金払いの場合)。

  • 下請事業者の名称
  • 発注日
  • 取引内容
  • 納期
  • 納入日とその内容
  • 検査完了日、検査結果及び不合格時の取扱い
  • やり直しをさせたときはその内容と理由
  • 代金
  • 支払期日
  • 代金変更があったときは増減額と変更理由
  • 支払額、支払日、支払手段
  • 有償支給があるときは品名、数量、対価、引渡日、決済日及び決済方法
  • 代金や原材料等の対価を控除したときは代金の残額
  • 遅延利息を支払ったときは利息額と支払日

これ、キレイに1箇所に取りまとめているところあるんですかね…?
当社では、記録が点在しているだけで記録自体はあるから*2、本条を遵守していると回答していますが、ある日突然「●●部の●年●月●日から●年間の5条書面を今すぐ出せ」と言われたらできないと思う。

本条の趣旨は、「下請取引に係るトラブルを未然に防止するとともに,行政機関の検査の迅速さ,正確さを確保する」(下請法テキストp.36)ことで、気持ちはわかるけれども理想形を実現するのはコストが合いませんよね。

*1:シェアードサービスをしている子会社も毎年選ばれるのはなんでだろう…

*2:下請法テキストには、「それぞれ別の書類又は電磁的記録に記載又は記録をする場合には,その相互の関係を明らかにしなければならない」とあり(p.37)、「相互の関係を明らかに」するとはどういうことか難しい。当社では各記録に関連性を明示しているわけではありませんが、個々の取引の特定は「●月●日発注分のこれ」と容易にできるからいいかなと都合よく解釈しています。