「パートナーシップ構築宣言」をご存知でしょうか。
私は不勉強で最近までよく知らなかったのですが、これに参加するといいことがあるそうで、当社も出すのだそうです。
発端は人事施策
当社で「パートナーシップ構築宣言」を出そうと言い出したのは、人事でした。
世間の企業よろしく当社も健康経営に力を入れており、「めざせホワイト500」で頑張っているのですが、パートナーシップ構築宣言を出すことが加点につながるらしい。
パートナーシップ構築宣言とは
「パートナーシップ構築宣言」とは、「サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者の皆様と連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、「発注者」側の立場から企業の代表者の名前で宣言するもの」だそう(「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト)。具体的な宣言内容は、以下の3点。
- サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を越えた新たな連携
- 親事業者と下請事業者の望ましい取引慣行(振興基準)の遵守
- その他独自の取組み
2020年に導入が決定され、2022年9月には13,000社を超える企業が登録しています。
参加するメリットは、ロゴが使えることのほかに、補助金の加点措置措置が受けられること。健康経営優良法人のポイント稼ぎにも貢献するらしい。
法務的に気になるのは、「振興基準」の遵守を高らかに宣言することです。
振興基準は遵守できる?
振興基準は、下請中小企業振興法に基づいて定められたものです。下請中小企業振興法は、下請事業者との取引の適正化という大義は下請法(下請代金支払遅延等防止法)と共通するものの、下請法と違って下請中小企業の育成・振興を支援することが目的。
規制法規ではないので、遵守する必要もないから、よく知らないまま過ごしている法務パーソンも多いに違いありません。私はその一人で、今年の改正も「ああ、ご苦労さまです」くらいにしか見ていませんでした…
でも、パートナーシップ構築宣言では、これを遵守すると宣言するというので、改めてしっかり勉強することに。振興基準、22ページもあるのですね。注文が多い。
パートナーシップ構築宣言では、このうち以下の5項目を特に重視しており、これらに関しては、下請事業者でなくても優劣がある企業間の取引では遵守することが求められます。
- 価格決定方法
- 型管理などのコスト負担
- 手形などの支払条件
- 知的財産・ノウハウ
- 働き方改革等に伴うしわ寄せ
年に最低1回は価格交渉する、秘密情報をフリーハンドで開示させない(親事業者が秘密保持義務を負う)、知的財産を無償で譲り受けない…など、文字にすると「それくらい当然では?」とも思えるのですが、実際のところはどうでしょうか。
13,000社の中には、タフな要求で有名な企業や、うちと同じことをしているはずの同業他社も名前を連ねていて、おやおやと思う私は生真面目すぎるのかしら。
テンプレ宣言はありやなしや
経済産業省やその周辺が色々頑張るのはいいことだとは思うのですが、たいていの指針には「Tone at the topが大事」というようなことが書いてあって、トップの名前でメッセージを出すことを推奨し、おかげで当社も宣言だらけ。正直、迷惑に感じています。
しかも、パートナーシップ構築宣言にいたっては若干のカスタマイズができるものの、基本的には雛形が決まっています。実際、人事も「宣言はテンプレートなんで、出すのは簡単です」と社長に説明していたし・・・
国が用意したテンプレートを「宣言」するというのは躊躇を覚えるのですが、パートナーシップ構築宣言は事実上枠組みへの参加表明なので、雛形がないとおかしいのでしょう。だったら、いっそカスタム不可にしてくれたらよかったのに。