あるプロジェクトで、他社の法務部門やアドバイザーと長い時間一緒に仕事をする機会に恵まれました(もちろん利害が相反する立場で…)。
他社法務とご一緒すると、一緒に参加するメンバーが「あっちの会社のほうが成長できそう」と感じないか不安にもなります。なので、良いところは真似すべく、その仕事ぶりをよく観察させてもらいます。
他社法務の仕事ぶりが見られるのはレア
京阪神の法務パーソンが他社の法務部門の方と知り合える場所には、
などがあります。コロナ前は、車座になって話したり、お食事を一緒にしたりすることもありました(特に経営法友会)。これらの場で知り合った方々とは、今でも「おたくではどうされてますか?」とご相談させていただくことがあります。最近だと、「電子契約を導入しましたか?」とか。
とはいえ、実際の仕事ぶりをみることはなかなかできません。話を聞いて想像し、「あぁ、うち(私)と違って立派だなー」と悶々とすることも少なくないです。
- 契約書も広告も全件チェックする
- 月間の処理件数は100件以上
- 取締役会や経営会議にも参加する
- 稟議には全部入る
- 社長と直接議論できる
- 海外子会社の契約管理状況をチェックしている
- 有料データベースやリーガルテックを複数利用している
などなど、自分の力不足が悲しくなる。私はしっかりした法務部門にいたことがないので、コンプレックスもあります。
よそと違うところは?
今回ご一緒したところは、所属先よりずっと大きな企業で、どれほどの差を見せつけられるのだろうと戦々恐々としておりました。つくアドバイザーも、この世界で知らない人はいない超有名事務所です*1。
プロジェクト専従の法務スタッフがいるとか、会議に参加するアドバイザーのアソシエイト弁護士といった財力の違いはおいて、仕事ぶりを観察して気づいた自社との違いは次のようなものでした。各項目の2行目が自社(=私)のやり方です。
- 圧が強い(会議の進め方などで自分たちの提案を押し切る)
↔︎重要でなければすぐ妥協する - 会議のための資料を毎回作る
↔︎イメージの共有が必要なものだけ作る - 議事録が細かい(ほぼ逐語録)
↔︎箇条書き(結論とその前提事実や理由のみ) - とりあえず作ってみて、何回も修正する
↔︎「今やる」価値が低いものは後回し - 法務が納得すれば前に進む
↔︎ワークする内容か社内に確認する - 外部への連絡は、役職が上の者がする
↔︎若手メンバーにおまかせ(本当のお願い・お礼・クレームは上位者で)
決してディスってはいません。自分の要求を通すことは大切だし、毎回資料を作るということは、それだけ準備をしている証です。うちが省エネすぎるだけで、細かい議事録を作ることも、とりあえず手を動かすことも、時間がとれるならそうしたほうがいいのかもしれない。法務がOKならOK、というくらい力がある法務部門は羨ましいし、上の方が連絡をするのも、関係者への敬意の表し方のひとつだと思います。
このプロジェクトには、自社も相手方も、若手メンバーが参加していました。うちの若手メンバーが相手方の仕事ぶりや上司・部下の関係をどう見たのか、とても関心がありました。
結論としては、「あちらから見習うべき点はあるけれど、うちのやり方がいい」と感じたようです。よそはよそ、うちはうち。私が自分のやり方を教え込んできたので、洗脳されているだけかもしれませんが。。
「優秀な人」には巡り会えても「招聘したい!」人は…
件の企業は、自社とは仕事の仕方が違いましたが、さすが大企業、法務の方々はとても優秀でしたし、加えて感じの良い方々でもありました(アドバイザーはそうでもなかったけど…)。
しかし、「自社に引き抜きたいか?」と言われると・・・※もちろんそんなことはしません。
他社法務とお話させていただくと、経験年数問わず「優秀な方だな」と思うことはしょっちゅうです。楽しくお話もさせてもらいます。
でも、「ぜひ、当社で働きませんか」と声をかけたくなったことはありません。
キャリア採用の選考をしても感じるのですが、「自社のカルチャーに合いそうな法務パーソン」を他社から見出すのはとても難しい。
おそらく、職務上の使命のため他社色にしっかり染まっている(もしくは自分色が強すぎる)からで、転職すれば色を合わせにいける人が多いのだろうけど、人事が見ると「なんか違う」感が強いよう。
特にキャリアを重ねると、自分が正しいと信じるやり方がわりと確立していて(でないと困る)、硬直的な印象を与えることもありますね。
*1:私には、そこの新卒採用の説明会に参加して、その雰囲気に「お呼びでない」と悟り受験すらしなかった苦い思い出があります。就職後は、不穏な噂を聞いて、お呼びでなかったことに安堵したけど。