みなさん、契約書チェックや法律相談、M&Aなどのプロジェクトの記録(リサーチ内容含む)をどう残されているでしょうか。
私は記録魔
新しく法務に配属されるスタッフには、最初に「メモ魔」「記録魔」になれと言っています。私が社会人になったときに教えられたことです。
私の勤めた法律事務所では(そしておそらくどこの法律事務所でも)、物理的な管理ファイルとサーバ上のフォルダを案件ごとに用意していました。
物理的なほうは「コレポンファイル」などと読んでいたのですが、まさしくコレポン(やりとり)の記録をプリントアウトしてファイリングしていて、打ち合わせメモ、やりとりしたメール、リサーチ内容、提出した書面(のコピー)、送付したときに使ったカバーレターやクーリエの控えなどを、ありとあらゆるものを綴じていました。
サーバ内のフォルダでは、それらのデータ版が入っており、特に作成書面は、コレポンには綴じないより詳細な記録(上司にレビューしてもらう前の自分のファーストドラフトなど)を保存していました。
企業に勤める現在は、紙で保存することはしていないのですが、メールなども含め、案件ごとにフォルダを作成してすべて保存しています。いちいちダウンロードして保存するので結構大変です。汗
法務は経験の共有が大切
あるとき、部内でフォルダの整理をしよう!となり、まずは現状把握ということで、フォルダ数を数えてみたところ、私のチームは万単位のフォルダがあることが判明しました。それほど、逐一記録をとっているという証です。
なぜそこまでするのか。
それは、法務にとって経験とはもっとも重要な武器のひとつであり、その共有が法務パーソンを飛躍的に育てるからです。
法律事務所時代、文書共有サーバは全員がすべてアクセスすることが許されていました。それは、膨大すぎて探し方がわからないほどの情報量。そこで、レアな案件を担当するときは、まず同僚に「こんな案件の経験はないか?」と尋ね、「こんな案件があったよ」と案件に振られる固有のIDのようなものを教えてもらうことで、膨大な文書共有ファイルから参考になりそうなものを見繕うことができていました。そうして、経験の共有を図っていたのです(他にも色々と工夫していましたが。)。
受付簿+ケースごとのフォルダとプロジェクトフォルダ
では、今(一般事業会社)はどうしているか。
前提として、我が社はまだワークフローを導入しておりません。
まず、契約書チェックや法律相談のような、単発の案件は、受付簿に受付日・案件概要・担当者などを記録し、依頼や回答のメール、検討した資料などは、案件ごとにフォルダを作成して保存します。
ワークフローが導入されれば、この負担はなくなると思うのですが、この方法のよいところを敢えて挙げるとすれば、フォルダに個別にアクセス権限を設定することができることです。会社というところは秘密が大好きで、「この案件は管理職止めにしておきたい」などということが頻繁にあり、私や上司しかみられないフォルダを用意することがあります。ワークフローでも「機密」設定できるはずですが。
なお、受付簿は、今年に入ってkintoneを導入したので、契約アナリティクスがかなり楽になりました。贅沢をいえば、毎月のレポートを自動で出してくれたら助かるんですけれども。。
もうひとつ、息の長いプロジェクトはどうしているかというと、プロジェクトごとにフォルダを作って、そこに何でも入れていきます。たとえば、M&Aであれば、IM、開示資料、DDレポート、契約書、クロージング書類、コレポンといった中分類フォルダを作成し、そこにどんどん保存していきます。
法務の質の安定性を確保する
以上のとおり、私はかなり記録を残すほうだと思います。その最大の目的は、個人の経験をチームの経験にすることで、法務パーソン一人ひとりの経験を強化することです。でも、それだけが目的ではありません。もうひとつには、法務の質の安定性を確保することがあります。VUCAの時代、昨日の回答が今日には当てはまらないということもあるかもしれませんが、前回どう回答したのか、それはなぜだったか、を確認し、前回と違う回答をするならばその理由を示すことで、クライアントの満足度を高めることができます。
稀に、こちらの回答を一部切り取って都合よく解釈してしまう人がいて、「法務がこう言ったじゃないか!」とか言ってきたりするのですが、そのときに「今回は前提条件が違いますよ、ほらこれ前回の回答全文見てください。」と自分たちの防御にも役立ちます。ミスを確認することになることもありますが・・・
最善の記録方法を求めて
今の環境では、現在のやり方がベストだと感じていますが、果たして本当にベストな記録方法とはどんなものなんでしょうか?
試行錯誤は永遠に続くような気がします。