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大阪で働く法務パーソンのはなし

若手の創造力と論理的思考力を鍛えたい

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現在、私のチームには、法務経験の浅いメンバーがいます。そのメンバーの成長曲線がどうも私の想像と違うように感じるという話。

モチベーションはあるけれど…

本人は望んで法務に来たので、モチベーションはかなり高いはずで、自費で書籍をたくさん買ったりもして、その姿勢は大変素晴らしいものです。私自身、「自分のお金でどれだけ本を買ったか」は、将来の自分の戦力を左右すると信じてたくさん買ってきましたから。
また、法務で育てたいと願った人材ですから、誠実で人当たりもよい。当然基礎的な社会人力もある。

そんなモチベーションや人間性を備えているにもかかわらず、それを能力・スキルに上手く転換できていないのは私の指導に問題があるのではないか。

相手を想像する

では、何が不満なのかというと、、MECEでなったり、相手の立場に十分に立てていないことです。

相談をしてくれる人の中には、「こういうことをしたいのだけど。××法上問題ないか?」と聞いてくる人がいます。自分のリスクアンテナに引っかかったことを具体的に示してくれて、私たちとしても嬉しい質問です。

ここで、件の若手のメンバーは、××法への抵触可能性を一生懸命検討し、回答案を作って持ってきてくれるのですが、違う法律の適用可能性を検討していないのです。たとえば、健康食品の表示であれば、景品表示法だけでなく、薬機法や健康増進法の観点からも検討すべきでしょう。その存在を知らなければ仕方ないけれど(それでも他に関係する法令がないかは検討すべきですが…)、知っていてもやっていない。指摘すると、「確かに!」という。。

また、「●●なら問題ありません」と回答をする場合、「●●でなければ問題だ」などと説明をしておかないと、「▲▲は?」「◆◆は?」と次の質問がくることが予想されます。質問を受けてから検討していては時間のロスですし、特に、今の私たちはプレゼンス向上が重要な課題ですから、一件一件で「期待を超える」パフォーマンスが必要で、「こんな質問が来そうだから、ここまで検討しておこう」と推測を働かせ、かゆいところに手が届くような回答を目指すことが求められます。しかし、これがなかなか難しいよう。

経験が浅いから仕方ないといえばそうかもしれませんが、「ほかにないかな?」「こんなこと聞かれそうだな」と相手の立場に立って想像力を働かせないと、経験を重ねるだけでは、この力はいつまでもつかない気がします。

私は正しくないし、それはキミの案件だ!

以上のような、一点決め打ちの回答案があがってくると、私は、思いつきで「こういう法律にも抵触するんじゃないかと思うんだけど、確認してみて」「こうなんじゃないの?」と言うことがあります。
私としては、「こういう視点でも検討してね(検討するのはキミだよ)」と言っているつもりなのですが、私に言われると「絶対にそうなんだ」と答えありきになって、根拠を捻り出している節も見られます。

自分はメンバーと対等に議論し、あくまでひとつの意見を述べているだけのつもりなのですが、自分の思っている以上に影響力があるんだなと反省しました。一応、上司ですものね…

とはいえ、メンバーには、アサインした案件には責任を持って担当してもらわねばなりません。私にチャチャを入れられたら、「そういう考えもあるかもしれないが、自分はこの方が正しいと思う」と反論してほしい。それができるくらい、脳みそに汗かいて検討してほしい。
そんなことを思いながら、別件でエース社員にある案件を相談していたら、私の意見を完全に打ち返してきて、私が冷や汗かきそうで頼もしかったです。やはり経験が人を育てるのかしら。

論理的思考力を鍛えるには?

「ほかにないかな?」「ほかは大丈夫かな?」というのは、想像力のほかに、論理的思考力も関係しますが、これはどう鍛えればよいでしょうか。

私は「書く(図解)」がいいと考えています。件の若手メンバーは、それをしていない(できていない)から、整理がMECEでないのだと思う。

法務では、ツリー図とベン図とマトリクスが活躍します。エース社員はこれらを使いこなすわけですが、それは、配属されたときに私が横について手で描いて見せていたからかもしれません。一方で、若手メンバーには十分見せてあげられていない自信があります…これは、在宅勤務の弊害かもしれません。今度、Teamsに自分のiPadをつないでホワイトボードで描いてみようかな。