先日、リーガルテックを積極的に利用している企業のお話が聞けるセミナーに参加してきました。先進的な企業だけあって、導入っぷりに驚きを禁じ得なかったのですが、その効果は?
リーガルテックカオスマップ
セミナーの話の前に、現在の日本のリーガルテック事情を俯瞰すると、こうなるみたいです。クラウドサインが、昨年末にリーガルテックカオスマップ2020なるものをリリースしてくださいました。そんなに大きなマーケットとは思えないのに、群雄割拠状態。
大企業法務部ではリーガルテックは標準装備
今回参加した講座でスピーカーを務められたのは、大手の飲料メーカーと商社の方で、法務部員は数十名〜の規模です。どうやって仕事を分担しているんだろう?
「そりゃ、あんな大企業なんだからリーガルテックも使いこなしているだろう」と想像はしていたものの、想像以上に積極的に活用されていました。とりわけLegalForceやhubbleはかなり使い勝手が良いのか、2社ともお使いでしたし、T-4OOのように、リーガルテックにとどまらないものも含めると、10を超えるテクノロジーをご利用でした。しかも、同じフェーズで複数のリーガルテックをお使いのこともあるそうです。たとえば、電子契約ではクラウドサインもDocuSignも使うというように。
ここまでのお話では、導入がものすごく進んでいることに愕然として「我が社でもいくつか試してみたとはいえ、なんだか置いてけぼりだわ」としゅんとしてしまいました。
「リーガルテック=効率化」ではない ただし、電子契約を除く
ところが、面白いのはここからで、「じゃあ、業務効率化につながったのか?」というと、「それはどうかな…」という感じなのです(これは2社とも!)。大量の書類に埋もれたり、外国語を翻訳したり、条項の抜け漏れを後で発見したり…ということが、リーガルテックによって全て解決!というわけでもないのです。「リーガルテック=効率化」は幻想かもしれません。
たとえば、私もLegalForceを使ったことがありますが、一瞬でレビューしてくれる契約は限られていて、簡単な契約なら自分で見てしまった方が早かったりします。(LegalForceの売りは、AIによるレビューだけではなく、ライブラリ機能にもありますが…)
テクノロジー導入を会社にお願いするとき、その効果を示さないといけませんが、明らかな業務効率化を謳うのは難しいというのが2社の共通のご意見でした。ただし、電子契約に限っては、明らかな効率化が図れるから、これを本丸にして他のリーガルテックも組み合わせ導入をしてはどうか?というご提案もありました。リーガルテックって基本は付加価値をつけるものなんですね。
電子契約は、送料や印紙代といった実費はもちろんのこと、製本したり、押印したり、コピーとったり、契約書を持参したり…という人件費を考えると、かなりのコスト削減効果があるとおっしゃっていました。我が社では、年間数万通の契約を締結していると思われるので、ぜひ導入すべく、これまでも数度提案しているのですが未だ通らず。「取引先へ契約書を持っていく」という仕事を失くしたくないのではないかとすら思っています。。
とにかくトライアルしてみる
今回のセミナーで2社が共通して推奨されていたことは、「とにかく試してみる」ことでした。
会社によって見る契約も違うし、必要なサポートも違う。(会社予算の全体からみれば少額かもしれないけれど)法務部門にとっては安いお金ではない。だから、積極的にトライアルして、自社に合ったサービスを見つけるべきだと。前述のとおり、現在のリーガルテックは、法務業務を劇的に効率化するものではないということも肝に銘じておかねばなりません。
あんなにたくさんのリーガルテックをお使いなのに、それでも「効率化できた!」とはおっしゃらないし、電子契約を除いては導入を強力にプッシュされるわけでもなかったので、私としてはちょっとホッとしました。
情報収集は欠かすな!
今すぐリーガルテックを導入しなければならないということはない、というのが共通したご意見だったわけですが、他方で、「情報収集はしっかりしておくべき」というのも共通のご見解でした。どれくらい「しっかり」かというと、片手間ではなく、ちゃんと担当者を決める程度に。そして、担当者がきちんとウォッチしているならば、適正に評価するべきだともおっしゃっていました。
マーケットが小さい日本では、プレイヤーはあと数名ほどしか出てこないかもしれないけれど、サービス自体は劇的に改善を重ねていくことはほぼ確実です。私もしっかりウォッチしなきゃ!と思うのですが、本当にたくさんあるし、日進月歩の勢い。法務ってこんなにアツい業界でしたっけ。