取り寄せになっていた話題の本が届きました。
やはり、中村先生や中村先生のところの事務所ってすごいんだな、お仕事お願いしてみたいな…というのが素直な感想。
弁護士でなくても学ぶことが多いので、法務パーソンや法律事務所にお勤めの方にもお勧めです。
弁護士として活躍し続けるために最初に読む本、登場
本書の帯にはこのように書いてあるのですが、コピー倒れしていません。
一番最初の講義テーマは、「何時に出社するか?」ですし、「電話の仕方」まで書いてあります。弁護士向けの本に電話のかけ方を指南したものって他にあるんでしょうか。
相手の立場に立つ
先日も書きましたが、中村先生が「相手の立場に立つ」ということをとても重視していらっしゃるのが本書からもひしひし伝わります。それは、裁判官やクライアントに限りません。
たとえば秘書さん。
「自分の日々の活動の予定は、きちんと分かるようにしておき、休むとき、予定にない行動をとるとき、などは秘書・事務所に連絡を入れる。出張の時は、到着時、帰途につくときなど、折々で秘書に連絡などする。」(P.11)「分かんないことを秘書に押しつけるなということ」(P.17)
たとえば裁判所の(代表)受付。
(電話をするとき)「いちいち弁護士のナントカとか要らないので、まず受付が出たら「地裁、民事、◯部、◯係」というふうに、切りながら言うと、受付の人がパッパッパってメモして、そこから回せるんですね。」(P.21)
たとえば書記官。
(こちらも電話をするとき)「で係属部に回ったら、弁護士のナントカって言ってもいいんですけど、僕の場合が「事件番号申し上げます」って最初に言うんですね。そうすると書記官の人が、ちゃんとメモ持ってるので、すぐ書く態勢になるんですよ。で、「平成◯年(ワ)◯号◯係、ご担当の◯◯書記官お願いします」、ていうふうに言うと、ちゃんと書き取って、ハイって書記官に渡すんですね。ですから書記官が出たら「昨日期日のありました◯◯と××の件ですが」とか「明日期日の予定がある◯◯と××の件ですが」って、言うと一発で書記官は分かるんですよ、ああ、あの件ねと。」(P.21)
そりゃ、みんな中村先生と仕事したいだろうな…と思ってしまいます(秘書さんは大変でしょうけど)。
浮き上がる法務部門像
相手の立場を慮る中村先生は、会社の中での法務部門の実情も。
「会社の法務の人たちって、自分たちで法律事件を作ったわけでなくて、営業部門とか製造部門とか財務部門とかいろんな部署から質問されたり相談されたりして、分かんなくなると弁護士のところに来るんだけども、相談元の部署から「お前早く回答しろよな」とかって言われるんですね。ここで、早く回答してあげないと、「お前ら能無しだ」とか、「役に立たない」とか、「何でもかんでもダメだって言いやがって」みたいに他部署から評価されてしまって、法務部が会社の中での信頼を失うんですよ。そうすると彼らは動きづらくなって、その会社の中での法務の地位がどんどん低くなる。」(P.59-60)
いや、もう本当に。さすがに「お前ら能無し」と面と向かって言われることはないけれど、お腹の中で言ってることは伝わります。
一方で、こんなお話も。
「法務部門の人たちって、朝8時半とか9時に会社に来て、法務部長さんと「今日どうしましょう」とか「あの件どうしましょう」とか、どうもそうやって相談する人が多いらしい。」
「どうも1日の予定を朝の時間に調整する法務部は多いらしいということを考えると、朝の時間帯に弁護士が事務所に来てて連絡が取れるっていうのは、結構ありがたいと思ってもらえるだろうという話です。」(P.4)
大きな会社の法務部門ってそうなんでしょうか。当社はやらないので、朝連絡が取れることが、とりわけありがたいということもないのですが…
出し惜しまない
本書を読んでいて改めて気づいたのですが、中村先生の本を読むとスッキリ気持ちがいいのは、結論や理由があるからなんですね。一番肝心なところは「弁護士へ相談を」みたいなぼかしがない。中村先生は、そこも強く意識されていることがよくわかりました。「多くの弁護士は、ノウハウは内緒にしておいて、外部には出さないというところが多いんですが、それではだめです」(P.113)と。
「僕ら弁護士が書いた原稿とかレジュメとか対談、講演会とかってどういう存在理由があるかって言うと、あれは生鮮食品なんですね。生鮮食料品なんです。研究者が書いた文章は、あれはオブジェですね。永遠に残るオブジェです。」(P.113-114)
ともありました。弁護士のおっしゃることが時間とともに価値を失うとは思いませんけれども…しかし中村先生、アナロジーも秀逸ですね。
あまり長くない、しかも軟らかいテーマであるけれども、見るべきものや学ぶべきことなどすごい(過酷な?)ことも淡々と書いてあって、中村先生の偉大さがわかる本でした。
多くの弁護士がお読みになっただろうから、これから楽しみです。