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大阪で働く法務パーソンのはなし

出向者の懲戒処分

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残念ですが、年に数回、懲戒処分が発生します。
人事マターだからか、このあたりの情報で法務が触れられるものって、結構少ないように思いますし、「これどうしてる?」と同業者の話題に上がったこともほとんどない気がします。

法務は呼ばれない不正調査

時々、法務と監査の役割分担で悩ましいというか、悶々とするときがあります。そのひとつが不正調査への対応。

当社だと、不正調査は内部監査部門が担います。事実の調査を内部監査部門がすることには異存ないのですが、評価、当てはめの部分を監査に任せきりにして良いのか?というところですね。ハラスメントの場合は、人事部門が評価していて、こちらも気になる…

法令違反があったとか、社内規定違反があったとかというところの評価を、法的素養を持たない部門限りでやるのは、法務の人間からするとかなり違和感を持ちます。特に、発見の端緒は周囲の人間からの通報・告発だったりすることも多いので、調査が中立公正なものか、裁きを受ける被疑行為者を最低限守れているか、というところが不安。懲罰委員会に法務が呼ばれない不満から来ているだけかもしれませんが…

経営法友会の「ありのままの法務」では、不正調査を法務がしていたけれど、「調査は監査の仕事でしょう」と顧問弁護士に言われたことも。

厄介な案件はお鉢が回ってくる 

前段で不平を垂れておきながら…ですが、厄介なものは法務にもお鉢が回ってきます。ちょっと事が大きかったり、告発者側の対応に苦慮したりする場合です。先日、当社から出向していた者が、出向先で不正をしたということがあり、私も調査に参加することに。

そのために、聴取した録音を書き起こすという作業をしていたのが2週間ほど前のこと。これがめちゃくちゃ時間かかるんです!1時間やっても、10分くらいしか進みません。Windows Media Playerだと、数秒戻すこともなかなかできず、イライライライラ。私は、被疑行為者の仕事や置かれた環境をある程度理解していたと思うのですが、それでこれなら、普段の業務を知らない従業員だった場合が思いやられます。
この作業は、かなりリーズナブルな価格で外注できるようですが、内容が内容だけに外注もできず、法務で分担もできず、ひとりでせっせと合計5時間半にも及ぶ録音データを書き起こした11月でした。しっかり活かしてくれよ…と切に願います。

解雇処分は難しい

自分の部下や、信頼して仕事を任せていた人の不正が発覚した際、近い人ほどショックが大きく、「解雇処分がふさわしい!」とおっしゃることがあります。でも、日本では、よほどの事案でない限り解雇処分は難しく、弁護士に相談しても大概及び腰*1。そうすると、事実上可能な最も重い処分が降格ということになります。
私的流用のような不正の場合、期間を遡れば金額がさらに大きくなる可能性もありますが、解雇処分はなかなか難しいとなると、全部の調査はしないで処分を下すことも珍しくありません。このへんも、近い人ほど「けしからん!」と思われるのですが、いつまでも自宅待機させるわけにもいかず、どんなに掘っても処分が同じなら区切りをつけることも致し方ないかなと感じています。

出向者はどこで処分する?

さて、今回の事案は、当社からの出向者が出向先(グループ会社)で不正をしたというケースでした。いったいどこの会社で懲罰に処せばいいのやら…と一瞬迷うのですが、在籍会社(=当社)で処分するのが適当だろうと考えています。

連帯責任を問うか?

もうひとつ悩ましいことは、連帯責任を問うか?というもの。
当社において、出向者の上司にあたる者、すなわちグループ会社の管理をする部門長の管理責任を問うか?というところです。「みすみす見逃していたのだから、責任取りなさいよ」というのが下からの私の意見ですが、さすがに私から面と向かっては言えず、処分内容を相談する弁護士に「管理責任も問わないとね」と言ってもらえることを期待しています。

今回、調査〜処分に当たって、監査部門・人事部門・法務部門・弁護士と連携して進めてきたのですが、私だけ役職が劣るため、全員が参加する場で正直な意見をいうのは難しいときがあります(みんな真摯に聞いてはくれますが)。こういうとき、全体の外で弁護士と打ち合わせて、弁護士から言わせることができるのが、法務の特権ですね。

*1:当社では、ある行為に関しては、有無を言わさず諭旨解雇とするのですが、それはそういう歴史の積み重ね(それをやれば解雇処分になることをみんな知っている)がその処分を許容しているのかなと理解しています。