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大阪で働く法務パーソンのはなし

監査役の存在意義

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当社では、定期的に常勤監査役と法務部門で意見交換をすることにしています。

監査役との意見交換はプレゼンス向上策として始まった

私、そして我ら法務部門の解決すべき課題は、法務部門のプレゼンス向上です。とりわけ、ボードメンバーの認知向上が課題と感じています。なぜなら、重要案件の社長プレゼンや取締役会において、法務が見解を述べる機会を与えられたことは、ただの一度もないからです。

そこで、私と上司は、法務の働き(潜在能力と実績)が広く知られていないことが、プレゼンス向上のネックになると仮説を立て、とりあえずできそうなこととして、常勤監査役に対し、定期的に意見交換をすることを提案しました。

そして、好意的な返答を受けたことを良いことに、内部統制システム基本方針にもちゃっかり「監査役は、法務部門と定期的に意見交換してリスク把握等に努める」という趣旨の定めを組み込み、以来、「しくみ」として、法務部門は常勤監査役と四半期ごとに意見交換をすることになりました。

法務で何かしくみを作るというのは、結構ハードルの高いことですが、この施策はかなり上手くカタチにできたと自画自賛しています。

意見交換の実際は密告?

では、わざわざ定期的に常勤監査役に時間をもらって何を話しているか。それは、例えば以下のような内容です。

  • 直近で対応した重要案件や取組み
  • 直近の相談対応や往査で感じる懸念
  • 感じている課題

要は、お互いに相手が知らなそうな懸念事項を伝えあっています。やっていると、何だか監査役に密告しているような気分になるときもあります。。

結果が出ているか?

この意見交換、自分から提案しておいてなんですが、意味あるのかな?と最近悩んでいます。
というのも、期待した結果が出ていないから。

監査役にお時間をいただいて、話を聞いてもらう目的は、「十分な検討がされないまま取締役会に上程され、承認されている案件がある」「内部統制システムが十分に機能していない」ということを知ってもらい、「十分な検討を尽くしたのか?」「しくみはワークしているのか?」「法的な見解を法務部門から直接説明させよ」と取締役会に働きかけてもらうことでしたが、今のところ結果が出ているとは感じません。

「これ知ってる?」「あれご存知ですか?」みたいな、何も生まれない時間。そんな時間は耐えかねるので、取締役会に働きかけてもらえるようそれとなくお願いするのですが、「監査役は業務執行しないから」とはぐらかされること度々。(「じゃあ、何のためにいるんですか?」と口をついて出そう…)

監査役の職務は、取締役の職務執行の監査だから、取締役が経営判断の原則に従い、事実認識を正しく行い、合理的な判断をしているかをモニタリングする役割があるはずです。だから、重要プロジェクトで法務の見解がなければ違和感持ってよ!と思うのですが、これは法務部門のワガママでしょうか。。

監査役の存在意義はどこに

2014年の会社法改正で監査等委員会制度が創設され、昨年の6月末時点で上場企業の1,000社超、3割弱が導入しているそうです(日経2019年7月13日夕刊)。
社外取締役について1/3以上、社外監査役について過半数というバーをクリアするのが大変なので、社外役員の確保の負担を減らしたいために監査等委員会設置会社へ移行される会社さんが多くあった、というのが私の認識ですが、監査役会設置会社よりもこちらのほうが優れていると感じています。なぜなら、取締役会で決議に参加できるから。あと、おそらく外国人への説明も容易になると思う。

監査役には、取締役会への出席義務や報告要求・調査権、取締役の違法行為の阻止権などがありますが、実際には諫言はできても業務執行を修正させたり、止めたりすることはできないんですよね。

「地雷原を目隠しで走る」みたいなことはあっても、結果地雷を踏まなければ「著しい」不当とか損害が生じることはないから、監査役の存在意義って、どこにあるんだろうか?と監査役とお話するたび思います。監査役のお立場も理解できますが、会社(ひいては従業員)のために、どんな貢献ができるのだろう?
意見交換では、一応監査役にお時間をいただくので資料も準備して臨むのですが、正直、嫌いな仕事になりつつあります。変えていかないと。