Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

クラウドサインかDocuSignか

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いよいよDXが身近になってきました。
当社でも、「2025年の壁」を意識してDXを推進すべく、プロジェクトチームが立ち上がっています。他社さんでもDXをミッションとする部署やプロジェクトチームが立ち上がっている話をよく聞くようになっています。ここで出てくるのが電子契約の話。

当社の「2025年の崖」はどれくらい?

「2025年の崖」とは、経済産業省DXレポートでは、2025年以降に生じる最大で年間12兆円もの経済損失と説明されています。老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化した既存システム(=レガシーシステム)が足かせとなり、デジタル競争に勝つことも、限られた人材を有効に使うことも、情報を守ることもできなくなるという警告。

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https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

聞くだけでも恐ろしい話ですが、これがジリジリと迫っているらしく、当社もついに重い腰を上げようとしています。しかし、当社にとって、この「2025年の崖」がどれくらいすごいものなのか、自力ではそれすら試算できなさそう…

法務パーソンでなくても、電子契約の認知度が高い

当社では、まずは「業務改善のDXだ」ということで、現在の業務で抱えている課題を洗い出そうとしています。

どんなDXが必要か?というテーマで、他部門の声も聞かせてもらったのですが、「脱ハンコ」「契約はクラウドサインへ」といった意見がかなりあったことが驚きでした。「クラウドサイン」という固有名詞を、法務の人間以外の口から聞く日がついに来ました…!弁護士ドットコムさんの地道かつ時機を得た活動が着実に実を結んでいます。
紙の契約書を電子契約へ移行させることは、2025年の壁とは関係ないようだけれど。

クラウドサイン一択か?

以前、二段の推定がクラウドサインにも及ぶことが明らかになり、電子契約はクラウドサインが最強になったのでは?ということを書きました。

legalxdesign.hatenablog.com

私たちのチーム(法務)としては、取締役会議事録での利用なども総合的に考えると、クラウドサイン以外の選択はないという結論を出しています。

ところが、先日、知り合いの法務の方々に教えていただいたところによると、その方々の所属企業では、DosuSignの採用率が高いと知りました。というか、クラウドサインお使い/選択予定のところはひとつもありませんでした。教えてくださった企業の方は、いずれも海外との取引が多く、「クロスボーダーの契約を考えるとDocuSign」という選択だったそうです。N=3ですし、海外比率が高い点で当社とは事情が異なるので、DocuSignのほうが優れているとはいえませんが、クラウドサイン一択というのも早計と思い知った次第…
また、Adobeサインも有力な選択肢とされる企業が複数ありました。

法改正がDocuSignも後押しするけど…

私たちが検討したとき、DocuSignは、タイムスタンプがつかない点がネックのひとつだったのですが、こちらは今年の電子帳簿保存法の改正により、必ずしもタイムスタンプでなくとも、ユーザーが自由に改変できないシステムを利用していれば非改竄性の要件をクリアできることになりました*1

ただ、私たちにとって、DocuSignの本当のネックはここではなくて、検索機能の確保でした*2。電子契約に切り替えた場合、その電子契約を日付等で検索できるようにしておかねばなりませんが(電子帳簿保存法施行規則3条5項7号で準用する同条1項5号)、DocuSignのサービスにはこれがない。DocuSignからすると、「契約書台帳は、別のシステムで作成しているはずでしょ?」ということだと思うのですが、そうはいかなかったりするんです。。

当社の場合は、契約書の締結権限が分散されていて、「今日現在有効な契約はどれ?」と言われても、全く不明…この問題の解消も兼ねて電子契約を推進したいので、DocuSignは合わないと判断しました。しかし、稟議システムなどが充実されている企業なら、ここはネックにならないのでしょうね。

電子契約と電子印の混同も健在

電子契約関係のセミナーを受けたり、周囲の話を聞いたりしていると、法務パーソンを含めて、電子契約と電子印を混同している人も結構多いと気づきます。電子契約の第一歩として、電子印の導入を考えるという企業も複数聞いたことがあります。
当社は、電子印はかなり前から使用しており、電子印が電子契約の導入につながっていませんが*3、これから移行される企業にとってはそうなるのか?いや、「押印により書面(指示)に権威を与える」という発想自体、DXじゃないでしょう…

*1:ドキュサインのオウンドメディアでも解説されています。

*2:タイムスタンプの点は、改正前でも社内規定を整備・運用することでクリアできました。

*3:当社の場合、社長から一般社員まで、電子印は固有のものを用意しており、認印として使用していますが、コピペ可能でこれが横行しています。それでもいいくらいのものにしか、使わせていないということでもありますが。