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大阪で働く法務パーソンのはなし

レビュー時間を見積もる

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私は、社会人になって以来毎日、どの仕事にどれだけの時間を費やしたかを記録しています。また、1日の始まりや案件に取り掛かるときは、「これはこれくらいの時間でできるはず」と見積もります。

働いた時間がクライアントにチャージされた

法律事務所の弁護士やパラリーガルは、基本的にタイムチャージで働きます。「自分は、1時間●円」というのが決まっています。
今は知らないけれど、私が働いていた頃は、新人でさえパラリーガルは10,000円、弁護士は20,000円くらいだったはず*1

だから、すべての案件にはコードが振られ、いつからいつまでどのコードの仕事をしたのか記録しなければなりません。事務所や先輩からは、「請求額はあとで調整するから、かかった時間をすべてきちんと記録するように」と散々言われるので、もちろんそうするのですが、常々プレッシャーでした。「私が5分働いただけでクライアントに1,000円請求されてしまう」と思ったら、「1分たりともわき目をふらず、その仕事に集中しなければ…」そんな気持ちで仕事をしていました。素直ですね、昔の私。

固定額の仕事でかけられる時間の感覚を掴む

タイムチャージが基本とはいえ、中には定型的な仕事があって固定額で受けているものがありました。大人の事情でその額になっているところもあるのでしょうが、当時の私は、「この仕事はこれくらいですることが求められているのだ」と理解して、その時間に近づけるようにという目標を持っていました。たとえば、請求額が30,000円の仕事であれば、3時間くらいで終わることが期待されている→ならばこの作業は1時間でやり遂げないと、というように。
つくづく素直ですね、昔の私は。

時間を見積もる癖がつく

  • 自分の費やした時間がクライアントに請求される(決して安くない)
  • 仕事にかけてもいい時間がなんとなく見える
  • そこそこ忙しい

社会人生活をそういう環境下でスタートした私は、「この仕事はこれくらいの時間でやる」「今日はこれとこれとこれを●時までにやって帰る」と、逆算思考がすっかり身に付いてしまい、何をするにも所要時間を計算するようになりました。もちろん、そのとおりにいかないことも多いし、途中に別件が入り込んでくることもあるので、それも計算して余白付きで1日の予定を立てます。

事業会社に転職しても、その癖を捨てることができず、今日に至っています。最初のうちは初めてする仕事が多いので、所要時間の感覚を掴むために記録をつけておこうと思って始めたのですが、やめることができず…
今では、ひと月とか1年の単位で、各作業に費やした時間を見て、「法務以外の仕事にかなり手が取られている」「この案件にはやたら時間が取られた」と振り返ったりしています。エクセルに入力したものを眺めながらのアナログ集計ですが。

この作業をしていて一つよかったなと思うのは、グループ会社の法務業務について、人件費を配賦する割合がそれなりの説得力を持って算出できることです。私一人の記録で法務部門の割合を決めてはいけないのですが、まぁ、参考にはなります。

みんなやってないの?

あるとき後輩の社員に、「入れ替わり立ち替わり人が訪ねてきて相談を受けているのに、どうしてあまり残業せずに帰れるのですか?」と質問されました。

私 :だって帰る時間を決めて働いているもの
後輩:でも、相談にくる人も内容も事前にわかりませんよね?
私 :うん。でもそれを見越して1日の予定を立てるから
後輩:!!!

という会話になり、全員が私のように予定を立てているのではないのだとわかりました。

以来、自分のチームのメンバーには、仕事にどれくらい時間がかかったかを把握するように頼み、時々、私から「この仕事には、何時間かかると思う?」と聞くようになりました。
「これ、明日までにできる?」という聞き方だと、時間の感覚は研ぎ澄まされません。残業してやってしまうので。
ほかにも、私の想定時間とギャップの大きい若手には、「1時間チャレンジ」として、1時間でできるところまでやって、強制的に取り上げるというトレーニングをしたこともありました。スピードアップには結構効果があったと思います*2

見積もる精度を上げる→まずは記録から

要領が良いと言われる人は、私と同じような感じで仕事に取り組んでいて、ちょっと要領が掴めていない人は、見積もりが甘い(又はそもそも見積もっていない)→横やりに乱される→全部遅れるという悪循環に陥っているような気がします。
先日、次のような会話がありました。

私 :この契約書チェックに何時間かかると思う?
若手:3〜4時間です
私 :もうひとつのこのチェックは?
若手:8時間くらいと思います
私 :そうすると、両方はいつまでに私に提出できる?
若手:明後日です
私 :(2日で12時間かかる仕事をするのは無理でしょ…横やり入るだろうに)

効率的に仕事をするには、見積もりの精度を上げる必要がありますが、そのためには、自分がどれにどれくらい時間をかけているか、1日をどのように使っているかを知る必要があります。
というわけで、法務パーソンにもどれにどれだけの時間をかけたか記録することをお勧めしたいです。そういうツールはなかなかなく、一度チーム全体で見える化を試みたこともあるのですが断念しました…ひとまず、自分で振り返る分にはエクセルで十分です。

*1:さすがに本当の新人の作業をフルでチャージすることはなかったですし、今もそうだと思う。

*2:「仕事は一度任せたら任せ切る」というマネジメントの基本からは逸脱するようですが、私がコメントをつけた後はちゃんと自分でもう一度見直してもらいます。