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大阪で働く法務パーソンのはなし

電子契約の導入が遅々として進まぬ

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勤務先で、一部電子契約を導入したのが2019年頃のこと。それから2年たっても電子契約が広がりません…PJがあって、メンバーはみんなやる気満々だというのに進まないとは、ちょっと考えにくい事態ですが色々と理由があります。

電子契約導入の進め方

 

電子契約導入ガイドブック[国内契約編]では、電子契約の導入に当たってすべきこととして、以下のとおり挙げられていました。

電子契約導入ガイドブック[国内契約編]

電子契約導入ガイドブック[国内契約編]

  • 発売日: 2020/08/18
  • メディア: 単行本
 
  1. 社内体制の整備
  2. ベンダーの選定
  3. 対象文書の選定
  4. 社内手続の確立
    ①制度設計トライアル
    ②システムのカスタマイズ
    ③申請方法の確立
    電子帳簿保存法への対応
    ⑤個人情報の取扱い
    ⑥社内ガイドライン・マニュアルの作成
    ⑦モニタリングの仕組みづくり
    ⑧契約ひな形の見直し
    ⑨社内規程の整備
    ⑩社内での周知徹底

 当社、PJ発足から半年ほど経ちますが、まだ1で止まっています…なぜ?

広がらない理由①全体像を見立てられない

致命的なことをいうのですが、全体像が描けていないようです(私はPJメンバーではないので伝聞形式)。メンバーに偏りがあるのも理由のひとつですが、契約業務の関係者が多く、そもそも「今、どうやっているか」「何が必要か」を把握するにも苦労しているようです。途方に暮れているというのが正確かもしれません。

また、社内規程や税務といった視点も後回しになっている模様…つまり、工程表がまったく引けていません。。

では一体何をしているのか?と思うのですが、「今、自社にどんな契約書があるか」「契約締結手順はどうなっているか」「どんな電子契約サービスがあるか」を鋭意調査中とのこと。半年もかけてそこかよ。。
自力でやるのを諦めて、外部に工程表の作成を頼んだという噂も。改めて、半年もかけてそこかよ。。

広がらない理由②本丸を狙いすぎ

遅々として進まない最大の理由は、「本丸を狙いすぎ」なところにあると私は感じています。

当社には、契約締結件数が全社の9割以上を占める部門があって、PJではそこの契約書をどう電子化していくのか?が主題になっています。電子契約のメリットを享受するにはここを移行しなければ意味がないのは間違いありません。しかし、大量の契約を捌いている部署には、それに対応するだけのワザ・ルールがあり、そこに最初にメスを入れるのは敵が大きすぎる…大きな声では言えませんが、「ワザ」の中には、契約締結プロセスとしてどうかと思う部分もありますし。
本丸のことは、もうちょっと電子契約を使い慣れてから考えたらどうかと思うのですが。

広がらない理由③欲張りすぎ

「本丸を狙いすぎ」も欲張りですが、実際契約業務を棚卸ししてみると、無駄というか、効率化が可能なところが色々と目につきます。

たとえば、当社では商談が成立して取引開始の稟議を申請する際、所定のフォーマットに相手方や契約条件を記載するのですが、決裁後に同内容を再び契約書ひな形に入力し、押印に回すことになっています。そこで、入力作業が重複するので、稟議で記入した内容がそのまま契約書に反映されるようなシステムを入れられないか?という話が出るのです。

ほかにも、必要事項を入力したら自動的に契約書が作成されるシステムがほしいとか、稟議が下りれば電子契約にリンクするようにしたいとか、色々と要望が出てきます。

こんな調子で話が大きくなり(というより、ズレて)、堂々巡りに陥っている感があります。電子契約を導入してから考えては…

まずは「やってみる」だが

傍から見ていて「この調子では数年かかるな…」と思い、PJのメンバーに「まずは範囲を決めて使ってみるところから始めてみては?」と打診してみたのですが、よく言えば目標が高く、その気はないようです。セミナーでも「小さく始めましょう」と言われていると思うのだけど…

PJの行く末が見えないので、私は私で手をつけられるところ(議事録の電子化)から始めようかなと思うこの頃です。