Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

プロパーかキャリアか

f:id:itotanu:20210523210013j:plain例年ならもっとも落ち着いている時期なのですが、今年は依頼が多い上に頭を悩ませることもいくつか起きています。時代の変化に適応したり、できなかったりというのが徐々に可視化されているのかもしれません。

悩み事のひとつは、法務に新しいメンバーを加えたいのですが、新卒採用のプロパー社員に異動してもらうか、中途採用か、どちらを人事に依頼するかでした。

新卒は育てやすいが時間がかかる

何も制約がない、純粋な増員であれば、私は新卒数年目のプロパーの若手がいいです。理由は簡単で、育てやすいから。好ましい思考ではありませんが、よその文化を知らない人は染めやすい。それに、新卒社員には人事の手厚いフォローアップがあるし、パーソナリティなどの情報も多いので、そのあたりの負担も軽いです。

しかし、「契約書なんて見たことない」という状態から訴訟・M&A・組織再編・PJ推進といった高度かつ大型の案件にそれなりに対応できるようになるには、5年では足りません。私のチームのバランスが悪いだけですが、未経験者ばかりが増えるのも困りものです。

ロースクール卒なら即戦力に近いかも?と思ったこともあったのですが、そうとも限りません。

中途は逸材を見つけるのが難しいしキャリアが限られる可能性

自社に適材がいなければ、外部からお招きするしかないのですが、これもまた難しいです。
1回お会いするだけで「あぁ、当社には合わなそうだな」という方もいるけれど、普通は数回会うだけでは人物を把握しきれないし、スキルや能力はたとえテストをしても完全には理解できないでしょう。

私自身は、前職を続けるのは難しいと思うことがあって退職を決め(気鋭の企業だったので3年足らずで10年分くらいの経験ができた)、今の勤務先が一番最初に声をかけてくれたから入社しましたが、そういう経験・タイミングの方に巡り会うのも簡単ではありません。

それに、もし適性がないとか、職場に悪影響を及ぼしているとかで異動させたいとなっても融通が利きにくい。だからといって採用に及び腰になるのもおかしな話ではありますが。

プロパーから不満が出る可能性も

そして、これは当社の問題ですが、古典的日本企業の当社は、特に若いうちは給与が低く、職位が上がるとドンと給与が上がる体系になっています。また、キャリア採用では、前職の年収をものすごく考慮します。さらにいうと、下げることは(多分)ない。そうすると、年齢が同じくらいでも年収が100万円違うということも起きます。

また、プロパー社員には、「昇進コース」みたいなのがあって、●年めで初めて昇進試験を受け、最低でも●年は同じ職位を続けないと昇進できないという暗黙のルールがあります。
一方で、キャリア採用にはこのコースは必ずしも適用されず、プロパーではあり得ないスピードで昇進していくことも珍しくない。

プロパーから見ると、給与・昇進といった待遇面で大きな差があるように映り、不満の声も聞かれます。

プロパー希望だがキャリアも紹介を頼むべき?ー第三の案

そんなわけで、プロパーもキャリアも一長一短で悩ましいのです。

悪い表現ですが、キャリア採用で博打するより、人事が長いプロセスを経て採用した人材にきてほしいけれど、やはり戦力育成時間がネックです。なにせ、私のチームは片手で足りる小規模法務ですから。。

ひとり考えた結果、キャリア採用は見送りプロパーを優先的に配属してもらえるように頼みました。やはり人物が大事かなと。一方で、事業を深く理解していて、多少手が動かせる人も急募なので、営業部門の将来の幹部候補に1〜2年の短期で来てもらえるように依頼しました(ずっと頼んできましたが、ようやく聞く耳を持ってもらえた…継続は力)。

妄想:出向弁護士+社内インターン+プロパー+キャリア

最後に、何にも制約がないとしたら、どんなチームを作りたいか妄想します。

私の理想は、

  • 出向弁護士(できればGC的ポジションができるジュニアパートナークラス)
    →2〜3年ごとに法律事務所から派遣してもらって、上にも下にも意見を言ってもらう
  • 社内・グループ内インターン(30代くらいの将来の幹部候補)
    →1〜2年修行してもらい、10年後には全社的に法務リテラシーが爆上がりする
  • プロパー
    →若手もベテランも内製で育成できることを目指す
  • キャリア
    →異文化の風を取り込み、自社だけでは鍛えられないスキルを移植する

というチームです。10名くらいのチームができたらとてもうれしい。

私はそこで、各自が能力を発揮できる心理的安全性が確保されることに努め、それが叶ったら法務(か会社)から卒業したいですねぇ。
こういうことができるように、自分が偉くなるか、経営陣を仕向けるか、どちらが先かとひとり争っているのですが、道のりはかなり長い。。