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大阪で働く法務パーソンのはなし

100%電子契約企業、ついに現る

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今年も6月総会のシーズンがほぼ終わりました。
今年も驚くような出来事が起きる企業がいくつもあって、中の方はさぞかし大変だろうと勝手に労をねぎらっています。おつかれさまでした。私は「来年は我が身」といつも肝に銘じています(毎年確率は上がっていると真剣に思っています)。

一方の我が社は、ただいま電子契約で大変です。正確には「大変」の入り口に立ったというところ。

ヤフーが100%電子サイン化を達成ー約3,000円/件の削減

ヤフー(株)さんが、民間取引先との契約において、「100%電子サイン化」を達成されたとリリースされました。

about.yahoo.co.jp

ただし、「法的要件や取引先の事情により対応できないものを除きます」とあります。「取引先事情」除いちゃうのか…という感想を持ちましたが、それでもヤフーさんの規模で電子契約化されるのは素晴らしいです。我が社の何百歩先を行っているか…

協力してくれる取引先名を公表するといった取組みも、後を追う者には心強いです。公表に同意された企業も立派だと思う。 

about.yahoo.co.jp

リリースによれば、以下のとおり、人件費も含めて1件当たり約3,000円の削減効果があるといいます。この数字を事業会社が公表される例は、かなり珍しいのではないでしょうか。色々前提があって算出が難しいのに、本当にご立派…使わせてもらおう*1

 

Yahoo! JAPANでは従来、紙の契約書の場合、印刷・押印・郵送にかかわる人件費や郵送費・収入印紙代など契約1件当たり約4,200円の費用がかかっていました。電子サインの場合は手続きの短縮化や郵送費の削減により1件当たり約1,200円と、契約1件あたりで約3,000円の削減効果があります。

なぜ「電子契約」「電子署名」でなく、一般的にも定義が曖昧な「電子サイン」という表現を使ったのか興味深いところです。

電子契約導入済企業の6割強は過半数の契約を電子契約にしている

また、(株)マネーフォワードさんからは、自社サービスの利用企業に行った電子契約に関する調査結果が公表されています。

今更?時期を逸してないか?と思ったのですが、内容はなかなか興味深かったです。

prtimes.jp

マネーフォーワードさんのサービスを利用する企業は、おそらくITリテラシーも高く、しがらみに負けずに合理的な考えができる企業だろうと想像します。
それでも、電子契約を導入しているのは、回答企業の26.9%だそうです。そんなものでしょうか。

導入しているといったって、相手方の都合などでなかなか電子契約は使えないでしょう?というのが私の見立てだったのですが、意外にも?導入済企業(198社)の6割強は、過半数の電子契約化に成功しているとのこと。リリースでは、導入後も過半数が紙の契約書だという企業が36.4%あるとありますが、むしろ100ある契約の50超を電子契約にできている企業が6割以上あることに驚きました。さらに、9割を電子契約にしている企業が35.9%だったともいいます。我が社で9割を電子契約化できるの、何年先だろう…

未導入の理由2位:どのサービスがよいか分からない

電子契約未導入の理由についても調査が行われており、1位は「紙での締結を求められることが多い」(43.8%)だそうです。これは共感できません。「誰に」求められるのだろう?取引先?社内?どちらにしても、未導入の理由にはならないような。

2位は、「どのサービスがよいか分からない」(32.0%)でした。これは首がもげるくらい納得です。私も、3年くらいこの沼から抜け出せていないかもしれない…

正確にいえば、電子契約サービス事業者を決めることは、それほど難しくないと思います。問題は、どう実装するかです。自社の規模だと、電子契約サービスそれだけを使うのは、契約締結フローや文書管理の観点からハードルが高く、特に後者については締結後のファイルが適切な閲覧権限の下で保管されるよう、なんらかの連携が必要です。
そこで、どんなアドオン・サービス連携が必要か?と考えたり調べたりするのですが、サービス改善が日進月歩で、調べるたびにバージョンアップしている。「もうちょっと待ったら、もっといいのが出るのかも?」とか想像しだしたら一歩も動けません。
本当に必要な機能を決めて、どこかで見切りをつけてやらないといけないのですが、私がはまった沼に、若手たちまではまろうとしています…

でも、やっぱりまだまだ…

いまや、普通の営業マンでも電子契約やサービス事業者を知っています。「使ったことがない」「打診を受けたことがない」という企業もだいぶ減っていると思います。

ですが、先日、顧問弁護士と電子契約・電子署名について話していると、その事務所ではITに明るいほうの弁護士でも、有名どころのサービス・仕組みの違いをご存知なくて、「相談して大丈夫?」と不安になります。地方だからですかね。。

「●●サインで契約すると、誰がどのメールアドレスで電子署名したか、署名パネルではわからないですよね〜。あれ、よしとしてよいんでしょうか」などと話しても、「あ、そうなんですか。相手方の押印がついてないの、大丈夫かな?と思っていたんですよ」と、すれ違ったりすることも。このご理解の弁護士に、本人による意思表示があったか?とか相談して大丈夫かな。。

過渡期とはそういうものかもしれませんが、先ゆく企業(弁護士)とそうでない企業(弁護士)の差が大きい…

*1:会社全体の販売管理費や税金の額からすれば、削減幅は微々たるものだと思いますが、こういう見せ方をするのが上手いですよね。見習わねば。