消費財を扱う当社にとって、SNSを通じたPRや情報発信は避けられない時代になりました。SNS活用はだいぶ後発の当社ですが、この数年で徐々に発信量を増やしています。
自社発信もしますが、SNSで影響力があるのは「インフルエンサー」と呼ばれる方々。ステマとの境界線はどこにあるのでしょうか。
ステマは違法か
日本でステマが大きな問題になったのは、2012年のペニーオークション詐欺事件だったように記憶しています。このとき、ステマに関与したとして、複数の芸能人が謝罪するなど大きな騒動になり、「ステマ」「ステルスマーケティング」という用語を学びました。
本当は報酬を受けてする宣伝なのに、あたかも本心から純粋に「いいよ」と触れ回ることが倫理的に受け入れられないのは当然です。騙された気分にもなります。しかし、「違法」であるかは微妙なところで、景品表示法違反(優良誤認・有利誤認)になり得るケースがあるという感じ*1。
景品表示法違反になるかどうかは、表示と実態が著しく離れているかが問題であって、他人に表示(宣伝)をさせることそのものが違法になるわけではありません。
2021年には、ステマで初の措置命令が出たと話題になりましたが、これも表示と実態が違いすぎることが問題でした。
もっとも、ステマが違法かどうかを一概に判断できなくても、イメージ商売の当社で【ステマはNG】に異論を唱える人はいません。相談があるのは、「これってステマ?」というときです。
本人に報酬を払わなければステマではない?
そもそも「ステマ」に確立した定義があるわけでないので、「ステマかどうか」の判断は困難です。
法務に相談があれば、「ステマかどうか」という回答は基本的にせず、「法的にどうか」「倫理的にどうか」、あるいは「消費者がどう思うか」という観点で検討・回答しています。
以前、「本人に報酬を払わなければステマではないか?商品PRであることを明記せずに投稿してもらってもよいか?」という相談がありました。話を聞くと、「本人」には払わないけれど、インフルエンサーを紹介してくれるエージェント的な人物には報酬を払うそうです。なるほど、当社にインフルエンサーの「つて」はないから、エージェントにお願いするんですね。
結論としては、PRであることを伏してインフルエンサーに投稿してもらうのは不適切だ判断しました。理由は以下のとおりです。
- エージェントに報酬を払っている(その先にどんな利益の移転があるか不明)
- 当社は、一般的なサンプルを超える数量の商品を無償でインフルエンサーに提供している
- 「『#PR』をつけないで」と依頼すること自体不適切
特に最近は、PRであればその旨明記するのがマナーになっているようです。そのため、「#PR」がつくと、ユーザーは話半分で見る(か、そもそも見ない)ので、インフルエンサーをもってしてもPRにはなりにくいらしい。まぁ、そうでしょうね。
「お願い」するだけなら構わない?
もうひとつあった相談は、「商品を無償で提供して、『よかったら投稿してください。でも#PRはつけないでね』と依頼することは可能か?」というもの。
上記同様、「#PRはつけないで」と頼むこと自体が不適切ですし、そもそもインフルエンサーにだけ商品を無償で提供している時点で、一般人にはPRを依頼したと受け止められるでしょう。
通行人にサンプリングしていて、たまたま受け取った通りすがりのインフルエンサーが投稿してくれたというような場合でない限り、こちらからお願いして投稿してもらった=ステマと捉えられる可能性が高いように思います。「任意」は通用しなさそうです。
現実にはステマがはびこっている?
相談を受けたとき、「実は、こんな感じでやってしまったことがあるんです」と見せられた投稿がありました。私が知らない若い人から、私が当然に知っているような方まで、数名の方が当社商品の紹介をしてくださっていました。正直「この方たちって、タダで商品をもらっただけで宣伝してくれるのね」と、意外でした。
件の商品は他社さんとのコラボ商品で、そのコラボ先からこの手法を教えてもらったそうなので、世の中にはステマもどきの投稿もまだまだあるんだろうと知りました。
私も、影響力のある方がおすすめされる商品を見ると、「いいものに違いない!」と色眼鏡で見ていそうなので、気をつけないといけません。私が参考にする方々は、本当によいものしか勧めていないと信じていますけれど。