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大阪で働く法務パーソンのはなし

倉庫業ってなんだ

「自社が占有する建物に他人の所有物を保管する場合、外形的には倉庫業にあたり、営業倉庫の登録が必要になるのでは?」
という話が、数年に1回ほどの割合で社内で話題に上がります。

倉庫業とは

倉庫業法3条は、

 

倉庫業を営もうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない。

と定めています。
では「倉庫業」とはなんぞやというと、同法2条2項で次のように定義されています。

 

この法律で「倉庫業」とは、寄託を受けた物品の倉庫における保管(略)を行う営業をいう。

倉庫業法には「倉庫」にも定義があり(2条1項)、

 

物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物又は物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作を施した土地若しくは水面であつて、物品の保管の用に供するもの

とされます。通常、事業所には物品の滅失や損傷を防止するための何らかの工作が施されているでしょうから、これだけを読むと、他人の所有物を自社の事業所に置くのは倉庫業にあたるのでは?という気持ちになります。

販売委託の場合

具体例を挙げてみましょう。

販売業務を受託した場合、商品の所有権自体は委託者にとどまります。そうすると、その商品を自社(受託者)が占有する建物に保管した場合、「寄託を受けた物品」を保管しているということにならないでしょうか?

倉庫業法では、法律に基づく保護預かりやクリーニング店のように他人の物を預かって営業することが必要なケースなど、一時的・短期間の預かりのうち一定のものは登録不要とされていますが、販売委託の場合はすべて除外かというとそうでもありません。

引取物流の場合

もうひとつの例は、引取物流です。

売買や製造委託などでは、完成品を指定場所まで納品してもらうことが一般的ですが、自社に相当の物流ノウハウやネットワークがあれば、自前の物流に載せるほうが効率的な場合があります。これを「引取物流」といったりします。

この場合、引渡時期は引取時とするのが自然ですが、諸般の事情でもう少し手前で所有権を移すことがあります。たとえば、製造委託の場合に製造報告した時点で委託者に移すとか。

そうすると、ごく短時間ですが、引き取りがあるまでは、もはや他人の所有物となった物品を受注者が自社内で保管することになり、これまた「寄託を受けた物品」を保管していることにならないか。
それはサービスの範囲で「倉庫業」だなんて大袈裟な…と言いたいところですが、製造委託だと下請いじめにならないよう、引取りに行くまでの保管料を払っていたりするので、外形的には倉庫業にも見えます(このパターンは、倉庫業法施行令1条2号で適用除外になると理解していますが)。

ポイントは「誰が保管責任を負うか」

この問題に真正面から取り組むことになり、倉庫業の専門家(行政書士)に話を伺ったところ、

  • ポイントは誰が保管責任を負うか、である
  • 預かった物品の保管責任を自ら負うのであれば、預かり品を取り扱っている者にとって営業倉庫の登録が必要
  • 誰がその建物を所有・賃借しているかは、それほど重要ではない

というお話でした。条文からはそこまで読み解けません…

具体例にあてはめれば、A社が賃借している物件で、B社の管理下でA社の商品を保管する場合、私の理解では「営業倉庫登録は不要」だったのですが、B社が保管責任を負うかどうかで要否がわかれるということです。
B社が賃借している物件で、B社の管理下でA社の商品を保管する場合でも、B社が保管責任を負わないのであれば、営業倉庫は不要という判断もとりえるのでは?ということでした。もっとも、国土交通省に照会したわけではないので、ひっくり返される可能性はありますが。

とはいえ、

  • 自社が所有・賃借等して占有する建物に
  • 自社所有の商品を保管し
  • その管理業務を他人に委託する場合であっても保管リスクは自社が負う

というのが、もっともキレイなあり方ではあります。

営業倉庫の登録は簡単ではない

数年おきとはいえ、何度も話題に上がるので、「だったら倉庫業の登録をすればいいじゃないか」と思ったこともあるのですが、倉庫業の登録は事業者単位ではなく営業倉庫単位で行われるので、全国規模の企業にはハードルが高いです。

さらに、営業倉庫として登録できる倉庫には要件があり、専門家によれば、「古い時代の建物は、今から倉庫業をとるのは無理。ある会社では半分が要件を満たさなかった」と教えてもらいました。
私たちも昭和の時代から使っている建物が複数あり、登録は現実的ではありません。。

そうすると、倉庫業がいらないロジックを組み立てるか、とらなくて済むようにビジネスを組むかのどちらかを選ぶ必要があります。
これから着手するものなら堂々と照会するという選択肢もありますが、もうやってしまっているものはできませんからね。。