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大阪で働く法務パーソンのはなし

契約書チェックに時間がかかる問題

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ただいま、少し困ったことが起きています。

それは、私の契約書チェックにかかる時間が数倍に膨れ上がっていること。労働時間の半分以上が契約書チェックに当てられている気がします。

原因は、そう、在宅勤務です。

在宅勤務前の契約書チェックの流れ

古い体質なのですが、契約書をチェックするとき、私はいつも紙に印刷していました。

若手がファーストレビュー
 ↓
レビューしたものを印刷して私に提出
 ↓
私がチェックして、修正や質問などがあれば手書き
 ↓
隣に座って口頭でフィードバック
(+ファーストレビューを担当した人がせっせと直す)

というのが、コロナ前の当たり前でした。これだと、その場でいかようにもフォローできるので、殴り書きやひとこと書くだけでも差し支えなく、簡単な契約であれば30分もかからないし、大抵の契約は1時間程度あればバックできていました。

それが…

現在の契約書チェックの流れ

現在、週に数回出社するとはいえ、必ずメンバーに会えるとは限りません。また、在宅勤務中にチェック依頼が飛んでいることも多々あります。そこで、今は次のような流れでチェックしています。

若手がファーストレビュー
 ↓

レビューしたものを私にメール
 ↓
私が画面上で(出社していれば印刷して)チェックして、
修正+コメント(依頼者向け+担当者向けフィードバック)
 ↓
修正+コメントをメールでバック
(ファーストレビュー担当は、修正・コメントをチェック+自分宛コメントを削除)

この太字部分の作業のせいで、私の負荷が従前の2〜3倍、体力・気力的には5倍くらいに増えているのです。

負荷が増すポイントは5つ

書くよりタイプする方が速くてラクなはずなのに、どうしてこんなに大変なのか。その理由は5つくらいあるのではないかと分析しています。

  1. 画面上でチェックしなければならない
  2. 修正履歴の工夫をしなければならない
  3. その場で話して済んだようなコメントまで、きちんと文章にしなければならない
  4. その場でフォローできないため、受け手の気持ちに配慮しなければならない
  5. メンバーのファーストレビューの精度が明らかに落ちている

①画面上でチェックしなければならない

まず、紙派だった私は、「画面上だけで契約書や資料を読む」という作業に慣れていないので、時間がかかりますし、目が疲れます。。さらに、画面だとチェックする契約書、関連する契約書、背景の資料などを、カチカチ切り替えたりスクロールしたりする作業のせいか、なかなか頭に定着しなくて時間がかかり気味です。紙のほうが頭にしっかり残っていたので、脳への残像効果は紙のほうが高いのだろうか。

ただし、ここは、進んだ企業や弁護士事務所だと既にペーパーレスがスタンダードだそうなので、もう少ししたら多少は慣れるのかもしれません。15.6インチのノートPCで作業するのは辛いけれど。

②修正履歴の工夫をしなければならない

これは、予算に余裕のある企業なら、HubbleかLAWGUEを使えば即刻解決ですが、我が社は財布が厳しくてとても使えない…

当社では、法務は共通のユーザー名で作業することにしています。したがって、メンバーの修正やコメントの上に私が修正やコメントをすると、私がどこを触ったのか一見ではわかりません。そこで、私が修正やコメントをするときには、「私がいじったところはハイライトを付ける」という本来的には不要な作業をしています。

バックされた若手は、そのハイライトをいちいち消さないといけないから、若手にも負担をかけていますね。

③きちんと文章にしなければならない

今までなら、書くのは「?」だけで、バックするときに「ここはこうじゃないの? だよね、じゃあ、そうしておいてね」と口頭で済ませていたことも、メールベースのやりとりになると、「ここはこうではないですか?だったらこうすべきではないですか?」と、すべてテキスト化する必要があります。そこまでやると、ついでに修正案も考えるか…と自分で起案することも増え(もう一回チェックするのが億劫ということも…)、益々時間がかかってしまいます。このウンウン考える時間が大切なのに、その機会を奪っているのでは?と自己嫌悪に陥ることも。

④受け手の気持ちに配慮しなければならない

受け手への配慮は、口頭でだってもちろん必要ですが、テキストにしようとすると時間が数倍かかってしまいます。

「『〜だから修正案は不適切』という表現では、トゲがあるのではないか?」とか「『〜だから〜の方が望ましいよね』という書き方なら素直に受け取ってもらえるか?」など、今までは口頭でフォローできたから、深く考えなくて済んだフィードバックの表現方法まで考え、対応しなければならなくなりました。この③④が私の精神的エネルギーをかなり消費させています。

フィードバックの方法に改善の余地はないか

今は、チェックしたものを返すときは、メール一本で済ませています。
ファイルの中では慇懃にコメントしているものの、「メールだけ」は味気ないから、毎回口頭でもフィードバックした方がいいかな?と思ったりもするのですが、その方法でどれくらい自分の負荷が下がるか読めないこと、電話やウェブでの1on1は、若手にはかなり負担に思われることから、気が引ける自分がいます。ここは、今度の1on1のタイミングで各自に希望や意見を聞いてみるつもりです。みなさん、どうされているんだろう?

最後の⑤ファーストレビューの精度が落ちている問題については、次回に。