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大阪で働く法務パーソンのはなし

内部通報制度認証は必要?

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今年から、内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)が始まり、伊藤忠商事(株)などを皮切りに、現在20社が登録されています。

私も、監査役から導入可否を検討せよと言われたので、審査項目を確認してみました。

内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)とは

現在、唯一の指定登録機関である商事法務研究会のウェブサイトによれば、本制度は以下のように紹介されています。

 

内部通報制度は、事業者のコンプライアンス経営を推進し、安全・安心な製品・サービスを提供することによって企業価値の向上を図るという、企業の内部統制およびコーポレート・ガバナンスの重要な要素です。

この内部通報制度を適切に整備・運用している事業者は、社会的に高く評価され、消費者や取引先から信頼されて、企業ブランドの向上、ひいては金融市場や公共調達からの高い評価、優秀な人材の確保等につなげていくことができます。

内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)とは、事業者が自ら内部通報制度を評価して、認証基準に適合している場合、当該事業者からの申請に基づき指定登録機関がその内容を確認した結果を登録し、所定のWCMSマークの使用を許諾する制度です。

現在は、「当社は、基準に適合しています」と自ら宣言し、その申請内容を第三者がチェックするという方式ですが、将来的には、第三者による基準適合の審査も導入される予定です。

審査項目は必須のものだけで24個

内部通報制度認証の審査項目は全部で38個あり、必須のものと任意のものに分かれます。必須のものをピックアップしてみると、次のとおりです。

  • 内部通報制度の意義・目的の明確化
  • 経営トップによるメッセージの発信
  • 経営トップの責務及び役割の明確化
  • 通報窓口の整備及び利用方法の明確化
  • 通報窓口利用者・通報対象事項の範囲等の設定
  • 内部規程の整備
  • 通報対応における利益相反関係の排除
  • 通報対応に関する質問・相談への対応
  • 内部通報制度の実効的な運用のために必要な事項の周知・研修
  • 通報者等への通知
  • 通報受付や調査・是正等のために必要な体制の確保
  • 調査協力の確保及び調査妨害の防止
  • 調査結果を踏まえた是正措置等の実施
  • 内部通報制度はの運用担当者に対する教育・研修
  • 通報に係る秘密保持の徹底
  • 通報に係る記録・資料の適切な管理の確保
  • 調査実施における秘密保持
  • 通報者等に対する不利益取扱いの禁止
  • 不利益取扱いが判明した場合の救済・回復措置
  • 通報者等に対し不利益取扱いを行ったものに対する措置
  • 被通報者による不利益取扱いの防止
  • 通報者等の保護のためのフォローアップ
  • 是正措置及び再発防止策のフォローアップ
  • 欠格事由:認証制度に関する違反等の状況

これらの項目について、PDCAのうちPlanとDoができていることを宣言できれば認証がもらえるというのが現状の制度です。CheckとActionは任意であり、「より進んだ取組を目指す事業者の場合に審査対象とすることが考えられる」そうです(消費者庁内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」)。

登録ハードルは低そうだが・・・

当社の内部通報制度や規程整備状況に照らすと、この24個の審査項目をクリアすることは容易いように思われます。というか、これらをクリアできていない内部通報制度であれば、速やかな改善が望まれます。

消費者庁が定める民間事業者向けガイドラインコーポレートガバナンス・コードの補充原則2-5①は、次のように独立した受付窓口を設けることを求めており、国がお墨付きを与えようというならば、これくらいは必須項目にしなければならないのでは・・・と考えるのですがいかがでしょうか(本制度では任意項目)。

 

補充原則2-5①

上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。

内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)は、対象事業者が上場会社や大企業に限られるわけではないので、間口を広く、ハードルを低く、という狙いがあるものと推察しますが、この認証を得た企業は信頼に足るといえるのか、疑問です。

ちなみに、申請登録料は、大規模事業者で70万円です。

・・・我が社は見送りですかね。