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大阪で働く法務パーソンのはなし

政治家にお祝い・差入れしたい

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法務たるもの、「来る者拒まず」で、困っているならどんな相談にも応ずるべし

という精神で仕事をしていますが、苦手はもちろんあって、そのひとつが政治資金関連です。私(法務)に聞かないでくれ…!といつも思う。今回も困りました。。

意外に付き合いが

政治家との関係を一切持たない企業もありますが、歴史があったり地方・地域の密着度が高い事業をしたりしていると、国会議員・地方議員ともお付き合いがあったりします。当社もしかり。

しかし、つながりがあるからといって、便宜供与があるわけでは当然ありません。何かしてくれるわけでもないし、風土的にも特定の政党・誰かを積極的に支援することはありませんが、たまにパーティに参加したり、面会(挨拶)したりしている模様です。

原則は簡単

政治家との付き合い方は、政治資金規正法公職選挙法を見ればよくて、企業のルールは、政治資金規正法21条1項で、わりと明快に書いてあります。

 
(会社等の寄附の制限)
第二十一条 会社…その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない。
政治活動には寄附には、金銭のみならず物品も含まれ(同法4条3項)、「政治活動に関する寄附」とは選挙活動を含む政治活動に関する寄附をいいます(同条4項)。
したがって、まず、企業は、政治家個人へ金銭等を提供することはできません。選挙の当選祝いや、要職・大臣への就任祝いも、政治家個人へ直接はできないということになります。
一方で政党や政治資金団体には寄附できるのですが、これにも上限があります(政治資金規正法21条の3第1項2号、2項)。なぜか資本金ベースで決まるという…
  • 資本金の額が10億円未満→750万円/年
  • 資本金の額が10億円〜50億円未満→1,500万円/年
  • 資本金の額が50億円超→3,000万円/年
  • 以降、資本金の額が50億円増えるごとにさらに+500万円/年

政治資金の支出は一元管理が必要

法律で寄附できる額が決まっているので、どこにいくら提供したのかは、きちんと記録しておかなければなりません。
財務経理*1や総務あたりで管理している企業が多いのではないかと思います。結果、当社の場合、少額でも稟議が必要という手間が増えています…

現実は判断が難しい

と、ルールは明確に思えるのですが、実際の運用は結構難しいようです。

  • 要職就任祝いを贈りたい
  • 選挙スタッフに差入れしたい

このひと月足らずの間にも、このような相談が寄せられたのですが(今日からもきそう…)、提供先が明確にわからず、法務としても踏み込んだ回答が難しかったです。先方も、「送付先」は教えてくれても「提供先」は明確に教えてくれないんですよねぇ。「送付先」だけで判断すると、どうかな…と思うものもあったりなかったり。

お祝いなんかは、先方から指定(希望)があったりもしますよね。「花(胡蝶蘭)は処分が大変だからやめてくれ。●●がいい」みたいな。代議士ご本人はなんでもいい、むしろ不要だと思っていらっしゃるでしょうけども。

クリアなルールとギフトコンプライアンス

どこまでが政治家個人で、どこからが政党・政治資金団体、あるいはサポーターなのか、素人にはよくわかりません。お付き合いを始めたときにはまだ影響力が小さかった方々も、月日がたてば影響力や注目度が上がって、こちらの粗相でご迷惑をかけるのでは?と心配にもなります。

いっそ、議員事務所・選挙事務所に金品を送付するときは、

  • 総務省や選管事務所のサイトから事前登録必須にして、
  • 寄附に当たるかをAIで判定してもらい、
  • 登録がないものは政党・議員側は受け取れないようにして、
  • 寄附にあたるものは集計・公開する

とかにしてくれたらいいのに。。さらに言えば、企業からの提供なんて断ってもらったほうが、お互いにとってハッピーだと思うんですけども。

ギフトコンプライアンスというのは、公務員、とりわけ海外公務員との付き合い方を意識していたのですが、当社の場合はほかにも気を配るところがあるな…とつくづく感じた私の今回の衆議院議員選挙でした。

*1:ここでもややこしい話があって、同じパーティ券やお祝いでも、交際費か寄付金か…という判断が入るみたいですね。